第13話:作戦決行!
まるで子供時代に戻ったみたいな高揚感。
わたしも――すごくワクワクしていた。
「見回りの時間は……だいたい一時間に一回。塔の鐘が鳴ったあとに兵士が回ってくるから、その直後は誰もいないらしいですよ」
治療終了後、わたしたちはいつも通り寝台に座りながら話していた。。
わたしが厨房で聞いてきた情報を小声で囁くと、エンジュ陛下は頷きながら手元の紙にさらさらとペンで何かを書き込んだ。あっ、陛下って左利きなんだ。なんだか作戦会議みたいで、ちょっと楽しい。
「ならば、二刻の鐘が鳴った直後に出る」
「了解です!」
思わず勢い込んで両手こぶしを握り締める。
陛下の眉がぴくりと動いた。無表情なのに、なんとなく笑ってる気がする。たぶん、わたしの勘違いじゃない。
それからわたしたちは、帝国の警備の隙をつく細かいルートとタイミングを綿密に話し合った。多分こんなに真剣な顔で「裏庭に行く計画」を立てている人、たぶん皇帝として初めてだ。
計画がほぼ固まったところで、わたしはふと思いついて、夜空に目を向けた。
「陛下。決行するの、月が綺麗な夜にしませんか? せっかくのお外なんですし」
夜空には、ちょうど半月が雲の切れ間から顔をのぞかせていた。まだ満月じゃないけれど、やわらかな銀色の光は、どこか優しい。
「……そうだな」
エンジュ陛下も窓から空を見上げた。
この小さな冒険が、彼にとって少しでも救いになりますように。
そんな祈りを胸に、わたしはそっと笑った。
――そして。決行の時はやってきた。
二刻の鐘が深々と響いた直後、わたしたちは頷いてそっと部屋を抜け出した。
目標は裏庭。そして陛下の願いは――誰にも、出会わないこと。
白いガウンを羽織ったわたしの手を、エンジュ陛下はそっと引く。
彼の手はいつもよりぬくもりがあって、でも汗ばんでもいなくて、たぶん少しだけ緊張しているのはわたしのほうだった。
裏庭へと続く回廊を、そして庭から石畳の道を、音を立てないように歩いていく。
遠くで衛兵の足音が消えていくのを確認して、わたしたちは、目的の場所へと向かった。
(続)




