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第6話:あなたを知りたい①

 

 今日の今日とて、わたしはまた表向きの「陛下との夜のいとなみ」のために、スケスケ(以下略)を侍女さんたちに用意されて、広い回廊をしずしずとガウン姿で歩いて陛下の部屋と向かう。


 もう慣れたもの。

 前より心臓もバクバクしてない。

 城内の侍女さんたちも毎晩呼ばれるわたしに対してだんだん慣れてきて、「ああ……陛下は本当に皇后様がお気に入りなのね」という目線だ。


 ご想像されてるようなことは、なぁーんにもしてませんけどね!!!



 シュリちゃんに、色々と聞いたからかな。

 正直、わたしはエンジュ陛下がますます怖くなくなっていた。

 あんなに無表情で、低い声で、大きくてがっしりした体で――それに、冷酷帝だし。

 初対面はほんと怖い!ってなってたのに。

 

 今ではちょっと、いやけっこう、慣れてきたかもしれない。

 むしろ、安心するまである……のは、それはどうなのわたし、と思うけれど。



 ■



 暇な日中は辛いです!

 仕事、仕事を、何かさせてください!!!

 あまりにも仕事がないのが嫌で、そんな感じで情けなくあれこれを頼み込みまくった結果、そして――おそらくシュリちゃんが色々と口添えしてくれたのか、わたしに徐々に仕事が来るようになった。

 

 やったー!

 と、いっても慈善事業の布を畳んだり(騎士さんたちの営舎のシーツになるんだそう)、ちくちく縫物をしたり(文官さんたちが実地調査するときに使う袋なんだって!)、とうてい「皇后の仕事」とはいいがたいけど……でも、何かしていた方が気が紛れていい!


 さすがに日数も過ぎて、だんだん侍女さんたちとも打ち解けてきた。

 大体、全員で十人程度。一日交代で五人ずつ、わたしについてくれている。

 みんなとっても優しい。相変わらず「皇后さま、おいたわしや……」モードではあるんだけどね。

 もちろん寂しさはある。でも、帝国での毎日がだんだん楽しくなってきた。 


 陛下の呪いを無事に解けば、陛下も嬉しい、シュリちゃんも嬉しい、わたしも国に帰れて嬉しい!

 三方ニコニコ。あっ、帝国民さんたちも喜ぶだろうから、よし、頑張ろう!


 こうしてわたしはひっそりとまた気合を入れたのだった。




 ■




 コンコンコン、とノックをして扉を開けると、そこにはいつものようにベッドの端で静かに本を読んでいるエンジュ陛下がいた。

 最初はガウンを羽織っていたけれど、結局治療中に脱がなきゃいけなくなるってわかったのか、陛下は最近ずっと上半身裸で私を待っている。

 鍛えられているその体躯は筋肉バッキバキで、まぁいわゆるいい身体、なんだけど正直呪いの文様がおどろおどろしいので全然イヤラシイ雰囲気にはならない。

 

「早く来い」

「はい、失礼しまーす」


 淡々とした声に、わたしものんびりと言葉を返す。

 最近わかってきたんだよ。この「来い」の一言にも、ちょびっとだけど「お疲れ」とか「おいで」って意味、含まれてる……気がするの。

 わたしもどうせ暑くなるのわかってるから、ガウンを脱いで椅子に掛けて――指先にそっと魔力を灯して、エンジュ陛下と向かい合って座る。


「陛下……。あの、ちょっと、お聞きしたいことがあります」


 わたしをじっと見つめていた陛下が少し首を傾げた。


「なんだ」

「……呪いの原因についてです。原因がはっきりしなければ、解呪しても再び、ということもあり得ます。おわかりではないのですか? ちょっとしたきっかけなどでも結構です。いつ頃から、だとか前兆、だとか……」


 ビクッと、目に見えてエンジュ陛下の大きな肩が揺れた。

(隠し事、あんまり得意じゃないんだなぁ)

 思わず、心の中でほほ笑んじゃう。

 実直な人だもんなぁ、なんて思う。だってもう何日も……っていうか毎晩一緒だからね、わかっちゃうよ。

 でもここで「実は、シュリちゃんから聞いたんですよー!」なんて言えない。

 シュリちゃんが怒られちゃうかもしれないし、自分の知らないところで勝手に話されていい話じゃないもんね。

 そこは、ぐっと我慢だ。


「……知らんな」

「そうですか……あの、ちょっとしたことでもいいんですけど?」

「……わからん」


 このやりとり、何度目だろう。

 だいたいわたしが何かを聞くと、「知らんな」か「わからん」、この二択で返される。

 でも、今日はちょっとだけ違った。

 陛下の整った彫りの深い顔、その空色の透き通る瞳の奥に、ほんの少しだけど「何か言いかけた」色が載っている。


(やっぱり、お兄さんたちのこと……かばってるのかな)


 だって廃した理由が理由だもんね……。


 でも、それを無理やり引き出すような真似はしたくない。わたしはあくまで、陛下の呪いを解くためだけにここに来てるんだから。


「じゃあ、今日もいつも通り魔力を流します。……苦しくなったら言ってくださいね」

「……ああ」


 寝台の上に座って向かい合っている陛下が目を閉じる。そっと向かい合ったままにじり寄って、わたしはその額に手を当てて、魔力をそっと流した。そして右手を胸に移して、わたしも目を閉じる。

 魔力増幅の術式を、囁くように紡ぐ。陛下の体の奥にこびりついた呪詛の痕跡が、じわりと浮かんでいくのが感覚でわかった。


(続)







読んでくださってありがとうございます。

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