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落ちる日の布団

クラスメイトは泣いていた。

僕もあの子を傷つけた1人かもしれない。


いや、僕のせいじゃない。

いじめっ子のせいだ。


そう心に言い聞かせて

ベッドに入った。


この間、部屋を掃除した時に棚を整理したので

いつもと布団から見える景色が違う。


それだけでもなんだか雰囲気が変わって

おもしろい感じがする。


布団の中の秘密基地から

新しい景色を眺めていた。


そういえば、あのずっと長い間、置いてある

ダンボールの中からは見たことがない写真が出てきた。


きっと僕が生まれる前のものだろう。

僕が見てもどこで撮ったものか分からなかった。

とても古さを感じたから

お父さんなら分かるのかもしれない。


そんな風に家の中には所々に宝物が埋まっている。


そういえば、思い出した。

この部屋が僕の部屋じゃなく

もの置きのようになっていた頃、

ティッシュ箱にいろいろと詰めて

タイムカプセルみたいにして置いていた。

あれはどこへいったのだろう?


分からない。

けど、たぶんベッドを置く時にゴミと一緒に捨てたんだ。


まぁ そんなに残す価値がありそうなものでは

なかったけれど

今、大切にしているものも

いつかはなくなっちゃうのかな?


僕はそんなことを考えていた。


-----

過去の自分が生み出したものが

未来の自分の宝物に。


過去の自分が知らなかった考え方を

未来の自分は知っている。

-----


僕は眠りについていた。


すると、突然、不思議な力に体を

押されるような気がした。

牧草のロールになったように

勢いをつけて転がされて抵抗ができない。


「なにこれ?」


バタン!


そのまま、ベッドから落ちた。


「イタタ、、」


ベッドから落ちることなんて

ほとんどないのに珍しく落ちた。

硬い床の上。


ベッドから落ちるなんて

自分が恥ずかしくてなってしまう。

寝相が悪すぎる。


気を取り直してベッドの中に入った。

今度は落ちないようにと奥の方で眠りについた。


すると、少し経ったと思われる頃に

また誰かに押されるような感じがした。

体はやはり動かせない。


「押さないでよ。」


僕は夢なのか、現実なのか分からないところで叫んだ。

しかし、その想いも虚しく笑われるように

誰かに押された。


コロコロと転がる。


「やめて!」


バタン!


またベッドから落ちた。

同じ日に2回も。


何か悪いことでもしたのだろうか?


・・クラスメイトは泣いていた。

どんな気持ちだっただろう?

先生は慰めていた。


いや、、それは僕のせいじゃない!


僕は気を取り直して

もう一度ベッドに入った。


本当に僕は悪くないのだろうか?

僕はベッドから落ちるよりも痛いことを知っている。


クラスメイトにつねられてアザになった時は

家族には見せないように隠していたし

友だちがいなくて

ひとりぼっちで寂しく過ごす悲しさを知っている。


そんな風に痛みを知っているのに

僕はあの子の涙の原因に関わった。


最初はおもしろそうだと思って驚かせようとしただけ。

そしたら、いじめっ子が考えられないような

ひどいことをしたんだ。


予想外だった。

あんなことをするなんて。

僕は悪くない。

僕だって大変なんだ。

それは分かってほしい。


それに自分じゃなくて良かった。


これ以上、暗い話は考えたくないので

今度こそベッドから落ちないように

注意して眠りについた。


落ちる痛みはもう感じたくない。


本当にあの子の痛みをわかっている?


--------

分かったような気がしたところで

何もできないのかもしれないけど。


あの人が今、

幸せに過ごせていることを願って。

読んでくださってありがとうございます!

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