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怖い日の布団

僕は寝るのが怖かった。

最近、不思議な現象に襲われるのだ。

恐怖の音楽が聞こえてきて

世界の見え方がおかしくなる。

自分で抜け出すことはできず、

気がついたら元通りになっている。

原因不明の現象。

それを恐ろしく感じていた。


だから今日はその現象に襲われませんようにと

祈りながらベッドに入った。


やけに静かな夜である。

静寂の中で微かな物音だけが聞こえる。


なんだか無気味な感じがするので

あんまり周りの音を気にしないようにしていた。


しかし、やはり気になる。

あの現象が起きそうな感じがする。


あの現象が起きる予兆としては

耳から人の叫び声のようなものが

徐々に近づいてきたときである。


「ブーン、ブーン」

外でバイクが走っている。


「カチッ カチッ」

時計の針が動いている。


だから、些細な音にも敏感になってしまう。

あの現象の予兆に思えてくるから。

なるべく周りの音が聞こえないように耳を塞いでいた。


あの現象が起きる時の予兆としてはもう一つある。


それは目を閉じた状態で見えるものが

シマシマになって吸い込まれていくような感じになるのだ。


目の中で1つギアが変わったような感じがする。

だからそうならないように目を開けたり、

閉じたりを繰り返して

なるべく集中しないようにしていた。


しかしこれでは眠ることができない。

そのため、しかたなく目を閉じるしかない。

あの現象が起きる前に眠ってしまうのを待つ。


今日も目を閉じてはやく眠りたいと思っていた。

しかし眠れない。


「あ〜あ、あ〜あ」


なんだか声が聞こえる気がする。

きっと気のせい。


なんだか目の中がシマシマになっていく気がする。

これもきっと気のせい。


そう思っていても怖いという恐怖心が

さらに心を不安定にさせる。

心が不安定になるといろんな幻聴が

聞こえてくる気がする。


なんだか騒がしい。

部屋の中は静かだけど。

僕の頭の中ではいろんな音や演出を消すために

走りまわっていた。


「叫び声はいらない!」

「シマシマの演出もいらない!」


僕は必死で説得する。

しかし、止まらない。


気づけばあの現象が起きるまでの

カウントダウンという感じである。


「あ〜あ、あ〜あ、あ〜あ」

声が近づいてくる。

シマシマに吸い込まれていく。

もうどうしようもなさそうである。


「もう知らない!」


「あーーーー」


そして、

今日も恐怖の時間がやってきた。


また始まった、、


目を開けるとパソコンがウイルスにかかったように

平穏な世界はここにはなかった。


部屋中のもののサイズ感がぐちゃぐちゃになり、

耳の中では恐怖の音楽が鳴り響く。


自分の手のひらを見てみると

500円玉のコインサイズくらいに見える。


置いてある目覚まし時計を手に取る。

これもコインのサイズ。


部屋の上をみると照明もコインのサイズ。


部屋は普通に存在しているのに焦点を合わせたものは

ものすごく小さくなってしまっていた。


それだけならどうにかなりそうだが

無気味な音楽がずっと鳴っていて

この後にもっと恐ろしいことが起きるのではないか

という恐怖心を仰ぐ。


誰かはやくこの音楽を止めてほしい。


ふと、ドアの向こうを見ると

今日は下の階の明かりがついている。

家族がまだ起きているようである。


家族の元へ行けばこの恐怖の音楽は止むかもしれない。

テレビの音などでかき消されるかもしれない。

それに一人では怖いので家族のところに行くことにした。


気をつけて階段を降りる。

後ろは振り向かない。


なんとか1階にたどり着いた。

そこには家族がいた。

僕は少し安心して今の状況を伝える。


「目に見えるものの大きさがおかしいんだ・・」


お母さんはその言葉に反応して振り向いた。

僕の声はちゃんと届いている。

僕自体に異常はないみたいである。


しかし、その瞬間、さらに恐ろしくなってしまった。

振り返ったお母さんの顔も

コインのサイズになってしまっていた。


「こんなの無理だよ。」 


僕は「なんでもない」と呟いて階段を駆け上った。


自分の部屋に戻る。

「どうなっているんだ!」と

恐怖の音楽が鳴り止むまで目をパチパチさせたり

部屋の電気をつけたり、消したりしていた。

それでも元に戻らない。


そうして恐怖に耐えながらも

諦めて疲れて泣きそうになった頃に

いつもの世界に戻っていた。


何事もなかったような静かな部屋である。

あの恐怖の音楽はもう聞こえない。


これが心霊現象ではないことはなんとなく分かっている。

きっと僕の何かがおかしいんだ。

原因はわからない。

次、いつ起きるのかも分からない。

また布団に入ったら起きるかもしれない。


そんなことに怯えながら布団に入る。

なんだか落ち着かない。

怖さを感じたまま布団を握りしめていたら

いつ間にか眠りについていた。


起きた時の世界はいつも通りでありますように。

読んでくださってありがとうございます!

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