表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

草葉日向

「ちょ、ちょっ。あの、先ほどは助けてくれてありがとうございました! そんな方にあれなんだが、少し離れてくれないか? いや、良いにおいするし胸の感触とかもごちそうさまなんだけど!」


『ま、さ、な、り、さん!』


 おれの女神様がご立腹なのである。

 正直女神様の機嫌を損なわないか、気が気ではない。


「だってこんなところで正成くんに会えると思ってなかったから! 一生会えないと思ってたんだからね!」


「えっと」


「あれ? ピンと来てないかな。そうだよね、あっちでは黒髪だけど、こっちではなぜか青髪になってるし」


「あっちとこっち。もしかしてあんたも地球から来てる……なんていうんだ。そう異世界人なのか?」


「そうだよ。それどころか中学校と高校同じクラス。ほら、高校の頃、ウチ、正成くんに、こ、告白したの。覚えてる」



 顔を確かめるため、肩をつかんで引きはがす。

 しなやかな身体である。

 きょとんと、利発そうな眉が上がっていた。

 愛嬌のあるくりっとした目を瞬かせている。


 この表情がころころ変わる感じが、あの日サツマイモを泣きながら美味しそうに頬張っていた姿と重なる。


「もしかして、元図書委員長か」

「そうそう、ってウチの名前覚えてる??」

「あーうん。ね」

「忘れられてる!」


 とほほと図書委員長は落ち込んだ。

 しばらく見つめていると、気がついた図書委員長が目をつむって唇をつきだしてきた。

 ごくり。


『ダメです!! 正成さん! そういうのはもっと段階を踏んで! 踏んでもダメですが! 一時の感情が大きな間違いを生みますよ! なんならほら、私と今キスしましょう!」


 アマネがわーわーと間に入って、血迷って必死にキスをしようとしてくる。


 全て透過したわけだが、少し冷静になれた。


 とりあえず、目の前の図書委員長をデコピンしておく。


「あー」


 額に手を当てて、残念そうな、なんとも言えない顔を図書委員長は浮かべた。


「無防備にそんなことするなよな。勘違いするだろ」


「なんでよ。そのつもりだったんだからしてもいいんだよ! これでも勇気出したのに! 女の子から誘われてしないなんて正成くんそれはもはや罪だよ! 死刑判決と同じだよ!」


 よろっと倒れ、ずーんと地面に手をついて図書委員長は落ち込んだ。

 相変わらずオーバーな。

 なんだか思い出してきた。


 こういうやつなのだ。


 表情がコロコロ変わって、オーバーリアクションで、でも真面目で、話しやすくて。


 そんな性格だから周りに頼られていたし、男子からもよく告白されていたな……。


 と。


 ぷつんと電気がきれたように、身体が硬直する。


「あっと、正成くんどうしたの? 大丈夫?」


 倒れそうになったところを、ヒールブレスが発動。


 また体力がゼロになりやがった。


 いい加減、これなんとかしないとな。


「あ、今の治癒魔法? 無詠唱で。それが正成くんのチート能力なの? すごいね!」

「あーところで。今は何時だい草葉日向さん……」

「今? そうそうウチ時計持っているんだ。アーティファクト、ってやつだよ。この鞄の中に……うん、朝の5時だね!って、あれ今正成くんウチの名前言ってなかった?」


「こんな時間になんなんですがつもる話もあることだ、今後の打ち合わせもかねて……日向さんごはんとか持ってる?」


「まって! またウチの名前言ったよね! あらあらなんだか嬉しいんだけどもー! 覚えてるなんて嬉しいんだけども!!」


 ぐーぎゅるぎゅると鳴る腹の音に開きかけた口を閉じた。

 それから「腹が減って死にそう」というおれの情けない表情をまじまじと見て、日向は朗らかに笑った。


「そうだね。朝食食べながら、何でこっちに来たのかも含め正成くんの今後の事聞かせてよ!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ