残り火よ 在りし日を燃やして 十四
もえるなら、モヤってしまおう、イチャとギス
ヨバル: 門のとこにいるから声かけてくれ
準備は万端。天気は快晴。あとは助っ人の2人を待つだけ。
最後の追い込みをかけた結果俺のステータスはこうなった。
プレイヤー名: ヨバル
Lv: 53
JOB: 花火師Lv.15
状態: 喪者
HP: 820
MP: 308
STR: 10
DEX: 50
AGI: 30
INT: 50
VIT: 10
ステータスポイント: 14
スキル
・花火の心得
・灼華繚乱Lv.3
魔法
・イグニスプロードLv.10
・エアスライドLv.6
・魔崩天Lv.3
・エアリアルLv.8
相手を考えれば心許ないがレベルよりも魔法の扱い……特にエアリアル状態の感覚に慣れられたのがデカい。
思い描いた通りに動けるようになったし、おまけで付いてくる風刃を飛ばすのも出来るようになった。
体感だがイグニスプロードがレベルを上げた事で火力上昇した事もあり、出来ればエアリアルも恐らくMAXである10レベまで上げたかったが、マナポーションガブ飲みして使いまくってもこれが限界だった。
「こう見るとちょっと寂しいか?いやでもなぁ……」
スキルは花火師関連のものだけ、魔法も4つしか持っておらず、絵面としては少し寂しいものがある。
とはいえ何に困っているワケでもない、火力はイグニスプロードを連打するのが1番出そうだし機動力もエアスライドとエアリアルで十分確保できている。魔崩天に至っては腐り気味だ。
暇つぶしのつもりで開いたステータスに頭を悩ませられていると不意に耳に悪寒が走った。
──お待たせヨバル君。
「うわぁ気持ち悪っ!」
唐突な個人チャット攻撃で全身に鳥肌が立つ。
これがデートの類の待ち合わせだったならまだよかったのかもしれない。
しかし生憎現れたのは爽やか野郎、お待たせという言葉1つで俺の耳が一瞬にして薔薇薔薇してくる。
なんてことだ。俺は耳を抑えながらDie助の姿を探す。
「ここだよヨバル君」
「おわぁっ!?」
耳は封鎖したはずなのに聞こえてくる声はまたしても至近距離。
振り返ってみればDie助は守護霊もビックリな距離感で俺の背後に立っていた。
「……後ろに立つなよ」
相変わらずニッコニコな顔を殴りたい衝動に駆られるがなんとか我慢する。
ここは街の中、殴っても痛くも痒くもないからだ。
ヴェルフリートならまず間違いなく命拾いしたなって言っていたに違いない。
「いやーごめんごめん、何度か話かけたんだけど気付いてなかったっぽかったからさ。つい、ね」
ついじゃねえよ!
ごめんと言いながら楽しそうに笑うDie助に思わず腹から声が出そうになる。
肩を叩くとか色々あるだろ?なんでよりによって耳に攻撃仕掛けてくるのだ、愉快犯だろ。
「それで?ヨバル君は何をそんなに悩んでいたのかな?」
「ああ、それはなステータ──」
「……なにいちゃついてるの?」
不名誉な言葉と共に2人目の助っ人が登場。
キルナはいつの間にか俺たちのすぐ隣まで来ていた。
一体いつからそこに?気になる事はあるがそれよりも一つ今すぐに言わなければいけない事がある。
「いちゃついてねえよ!」
「……言い訳はいいから、それより早く」
ダメだ、まるで聞く耳を持っていない。
俺の弁明は届く事なく、キルナは先を促す。早く案内しろと顔が語っている。
俺は「本当に違うからな!?」と念を押してヴェルフリートのもとへの案内を始めた。
途中何度か言ってみるもキルナには全然通じてなさそうだった。解せぬ。
「……それでヴェルフリートってやつが仕えていたお嬢様を助け出そうぜってクエストらしい」
空き時間を使って2人にクエスト概要を話す。
詳しい部分は俺もよく分かっていないので伏せておいた。
「推奨88とはまたすごいね……」
「……問題ない、ステータス的には多分誤差」
「誤差?」
いやいや誤差って俺でも30レベ以上開いてるのに?
「……私60レベだけどSTRはカンストさせてるからダメージは入るはず、つまり倒せる」
「まじ?」
当たり前のようにカミングアウトされる60レベという言葉に耳を疑う。
俺もまあまあやってると思っていたけど……やりすぎじゃないか?このゲームを。
「あはは、ちょっと極論じみてるけどキルナちゃんの言う通りだよ。装備こそ始めたてだから追いついてないけどそれでもダメージが通るなら倒せる」
Die助は自信満々にそう答えた。
なんて頼もしいのだろううちの助っ人達は。
しかし今の話に俺はついていけなかった。
というのも……
「俺のステータス高くて50なんだけど大丈夫か?」
「……微妙」
「あ〜もしかしなくても均等に振った感じだねヨバル君」
「え?まずかったか?」
……53レベにして俺のステータスはキルナの半分、話ぶりからしてワンチャンダメージが通らない可能性が出てきたからだ。
2人の反応を見るにかなり怪しい。これでもまあまあ尖らせたつもりだったのだが尖りが足りなかったらしい。
「……攻撃は最大の防御、アタッカーなら2つカンストさせる方が強い」
「まあまあこのゲームはスキルによって対応するステータスが必要だからカンストさせるのは1つにしてあまりでスキルを取って自分の色を出していくのがいいと思うよ僕は」
「……ステ振りしてまでスキル取る必要ある?取れるスキルでやり繰りすればいい」
「そういう意見もあるね、でも僕はせっかくこういうゲーム性なんだからそこまでガチガチに縛る必要はないと思うよ」
「……Die助はタンクだからそう思うだけ、アタッカーはダメージが出た方が楽しい」
「いやいや、それこそ極論だよ。アタッカーだって色々なタイプがいるし自分で考えて工夫する事を楽しみにしているプレイヤーがほとんどだと思うよ」
「……別に2極振りでも工夫するのは当たり前、だったら火力がいっぱい出た方が気持ちいい。違う?」
「その考えはわかるよ、でもそれを絶対のように語るのは違うと思う。そうだよねヨバル君」
空気のロールプレイをしていたところ突然飛び火してくる。
おい嘘だろ?このタイミングで俺に振るの?ちょっと気まずくなってきたこのタイミングで?キラーパスがすぎるだろ。
あたふたする俺に2人は詰め寄ってくる。
「……ヨバルならわかってくれるはず」
斯くして俺は舞台の真ん中に引っ張り出されたワケだが……
正直どっちの言い分もわかる。
Die助の緩く自由に楽しもうというスタンスもわかるし、キルナの火力こそ正義というスタンスも超わかる。俺だって男の子だし。
2人に個別に聞かれる分には首を全力で縦に振るが今は話が違う。
どっちに賛同してもどっちもに賛同しても角が立ってしまいそう……所謂詰みの状況ってやつだ。
俺にどうしろって言うのか。十字架背負う趣味は俺にはねえよ。
うるせー!とでも叫んで更地を作ってみるか?でもテンション上げてキレられるほど体あったまってないからなぁ……
「ヨバル君!」
「……ヨバル」
なに白熱してんだよ、仲良しか?
しかしそれを言うのは火に油。
悩みに悩んだ末、俺は第3の選択肢を取ることにした。
「ぁ、あの……つきました」
何も聞かなかった事にしよう。
俺たちはクエストをやりに来たのだ、持論をパナしに来たワケじゃない。
いいタイミングで現れたヴェルフリートに心の中で土下座する。
クソ犬とか言ってごめんな。俺の味方はお前だけだ。
「来たか、それではゆくぞ」
行く、超行く。すごい行きたかった今。
愛してるぜヴェルフリート。




