残り火よ、在りし日を燃やして 四
足りない足を追い求めて
「大変申し訳ございませんでした」
ものの見事に街送りにされた俺は戻ってくるなり土下座した。
あったまっていたのは俺も同じ、ここは一つ残機1つで水に流してはくれないだろうか。
「ふん、明日もここに来い」
「え?」
「明日も鍛えてやると言っている、あの程度で勝ち誇っているようでは先は長いぞ」
態度こそツンケンしているが、確かにこれはデレである。
クソみたいな煽り合いは水に流れ、クソ犬……じゃなかった、ヴェルフリートは次の話を始めた。
都合がいい。俺もモフれないままでは終われないと思っていたところだ。
「そいつはありがたい、なんだったら今からでも俺はいいぜ」
「そう急かすな、封印が解けたと言っても力の一部。ワタシとて休息が必要だ」
熱烈なラブコールをしてみるも普通に断られる。
俺としてはこのまま50先に突入しようが一向に構わないのだが、ヴェルフリートはそうでもないようだ。
なんでもヴェルフリートは完全体ではなく、力を使えばインターバルが必要らしい。おじいちゃんかな?
疲れた顔をしたヴェルフリートは俺を見てゆっくりと口を開けた。
「しかしいきなりワタシが動かされるとはな。お主の腕は確かのようだ……存外2日もあればワタシに届くやもしれぬな」
節穴かと思われたヴェルフリートの目は、手を合わせてなお俺の事を高く買っているらしい。
初心者に初心者界の世界王者とでも持て囃すアレと同じノリだろうか。
それともなんだ?このクエスト実はレベルが大事なワケじゃないのか?いやしかし88レベってしっかり書かれていたしなぁ…
「まあ見とけ、2日と言わず明日にはギャフンと言わせてやるよヴェルフリート」
考えてもわからないものはわからない。
素直に俺に88レベ相当の何かがあるという褒め言葉として受け取っておこう。
「お主は口が減らないな」
疲れからか封印を解いた時から幾分か柔和になった表情を見せるヴェルフリートに手を振り、今日のところは退散する。
「…………お主であれば或いは……あの狂気の産物を……」
後ろで呟かれた物騒な言葉は聞かなかった事にしてこの場を後にした。
狂気の産物?ナニソレコワイ。
頭の中でプチ反省会を開いた俺は街の魔法店に向かっていた。
というのも今回の敗因を振り返ってみたのが発端。
色々考えてはみたがヤツとの距離が近く、暗闇だったこともあり奥の手……4枚下ろし攻撃がどういう攻撃なのかまるでわからなかった。
白い歯を見せるのが早かったなど精神的な問題もあるが、正直今回に限っては関係はなかったと思う。ヤツの反応が間に合ったというだけの話だ。
本当ならあの4枚下ろし攻撃がどういった攻撃なのか検証したいところだが、生憎バトルは1日1回という制限付き、あれやこれやと試している暇はない。
発動されたら即負けの即死攻撃と仮定して割り切るしかない。
幸いヤツの口ぶりから進んで使いたい技ではないと思われる。
なら発動される状況を作らなければいい。
あと数フレームで届くという状況下で咄嗟に反応して繰り出されたワケで。
つまり4枚下ろしにされたのは俺がヤツの前方から行ったこと……正確には追跡する目を振り切って死角を取れなかった事が原因だ。
以上の事を踏まえて考えれば俺の敗因は速さが足りなかった事だと思う。
そうは言ってもステータスをAGIに振っているワケでもなし俺の機動力はDEXとセンスに頼りっきりだ。
それも狭い空間を広く使うタイプの機動力。
ヤツの死角を取るなら使える空間を広げるような機動力……シンプルに距離を稼げる第二のエアスライドのようなスキルが欲しい。
というわけで。
「失礼しまーす……」
魔法の出番だ。
お婆さんに軽く会釈して早速魔法を探す。
バフ系の魔法かエアスライドのように風属性の魔法を重点的に探せば見つかるだろう。
「詠唱長いのはちょっとなぁ……効果時間が短いのも困るなぁ……」
詠唱が長いものや効果時間が短いもの、果ては消費MPが多いものばかりが並んでいた。
確かに魔法に求めるものといえばかっこいい詠唱にド派手なエフェクト、すごいダメージ辺りなのだろう。
コンパクトで使いやすいものを求める俺が異端なのは重々承知ではある、あるが……
「全っ然見当たらねえ」
俺の要望はかなりワガママなもので、手に取るものはだいたいどこかしらに欠陥を抱えている。
俺は早くも自分で探す事に見切りをつけた。
「あのー多少難しくてもいいんで使い勝手のいい、俺……術者を加速させるような魔法とかって置いてないですか?」
「……あいよ」
困った時は店員さんに聞けば全解決。
俺のワガママな頼みを聞いたお婆さんが指を一振りすると、奥の方から1冊の魔導書が独りでに俺の方へと向かってきた。
やっぱりすごいなこれ。
「これでいいかい」
「あーもう最高です!」
えらく神秘的なソート機能に感謝しながらワガママから弾き出された魔法を確認する。
・エアリアル
属性: 風
効果: 風を纏い30秒間AGIが上昇する。纏った風を勢いよく振えば風の刃が発生する。
詠唱: 空を纏いて我が想いを為せ、飛翔せよ。
消費MP: 100
CD: 60秒
必要ステータス: INT49、AGI30
説明: かつて空飛ぶ事を夢見た魔法使いは己が体に翼を生やした。
しかし風の翼は空を切るばかりだった。
消費MPはギリ許容範囲、効果時間はいい感じ、詠唱はそれなりに短い、バフをかけながら攻撃にも転じられる。俺好みって感じだ。
ネックなのは要求ステータスぐらいだがどうせこの後レベリングに行くのだ、この際気にしない。
「10000エンカだよ」
「じゃあこれで」
相変わらず少し剣呑な雰囲気を感じさせる顔をするお婆さんに礼を言って店を後にする。
「……魔法の使いすぎには気をつけな」
恐らく定型文である事が今ならわかるが、何故だかお婆さんの言葉は俺の心に深く突き刺さった。
魔法の使いすぎ、MP切れ、恥ずか死……うっ。
さて欲しい魔法は手に入った。
次はレベリング。
正直あまり気は進まないがクエストに比べて低すぎるこのレベルを上げるために向き合わざるを得ない。
とはいえキリコ狩りをする気はない、俺に1つ考えがある。うまくいけばすごい効率が叩き出せる……はず。
今すぐ向かってもいいが、それより先にやるべき事がある。
「連絡は早めにってな」
ギルドチャットなるギルド内専用の掲示板機能を開く。
やるべき事それは……
ヨバル: なあ、助けてくれないか?
救難信号を出すことだ。
スキルの豆知識
現状2つのステータスをカンストさせられますが、逆に言えば2つしかカンスト出来ないので複数のステータスを要求してくるスキルはそれだけで扱いづらいと言えます。
基本は装備で盛りますが数字が大きくなるとそうも言っていられないので強力なスキルである事が多いです。




