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†月天殺戮女神†

おかげさまで日間6位に入りました!ありがとうございます泣

面白い気がしてきた人はいいねや評価なんかも付けてもらえるとニッコニコです!



「よ、ヨバルくーーーん!」


「……はっ、殺される」


 目の前にはPKキルナ。

 どうする?先に仕掛けるか?いや無理だワンパン出来る気がしないし絶対ワンパンされる。

 というかキルナって何?キルするなってこと?アナタバリバリキルシテマスヤン。


 宿ってもいない西の血が暴れ出した。

 本当にPK?大丈夫?普通に共闘しちゃったけど共闘罪で俺の名前も赤くなるとかない?


「まあまあ落ち着いてヨバル君。不慮の事故かもしれない、実際いまこうして2人とも生きてるじゃないか」


 そうだ、名前が赤いからって悪いわけじゃない。イチノセだって1キルしてる、たまたま3キルぐらいしちゃって赤いだけだ。

 俺がキルナの物騒な名前に怯えすぎているだけに違いない。


「……大丈夫、まだ8人しか殺してない」


 がっつり殺戮してるじゃねえか!

 8人っていうとあれだぞ?1パーティの人数だぞ?

 たまたまで死ぬ人数じゃねえよ、今まだ2日目だよ。

 俺は後退り警戒態勢に入る。


「あっ、ヨバル君それ以上下がったら──」


「ひぃっ……」


 俺のすぐ横に凶刃が振り下ろされる。

 こいつやっぱ殺す気だ!

 次の一撃は絶対に避けなければDie助と違って紙装甲な俺は即お陀仏だ、フィールドボスだって2体倒した。確認してないけどドロップ品を手放すにはまだ早い。

 一挙手一投足に注意して見ていると、キルナはこてんと首を傾げた。


「……大丈夫?」


 あ、あれ?

 思っていた展開と違い困惑する。

 もっとこう、スパッといかれるやつじゃないのか?

 

「危ないよヨバル君、もうちょっとでキリングコートに美味しいとこ持っていかれるところだったよ?」


 紙装甲なんだからと笑う呑気なDie助の声で我に帰る。

 何1人だけ助かってるのだDie助……というかいま俺は助けられたってことか?キルナに。

 もしかして……


「良い奴?」


「……?」


 よくよく考えれば何も変なことはしていない。

 金キリコ討伐の時も普通だったし、ありがとうも言える、聞いたらちゃんと教えてくれる。

 至って普通の……どっちかっていうといいプレイヤーだ。

 ちょっと持ってる武器が変で感情が顔に出なくて名前の癖が強くて8人殺してるだけ。


 ……8人殺してるじゃん、やっぱ変なやつだ。


「助けてくれてありがとな、なんか色々勘違いしてた」


「……別に、よくあること」


「さて!みんなの仲が深まったところで、自己紹介をしようか。僕はDie助、普段は野良パーティでタンクをやっているよ、よろしくね」


 さも突然とばかりにDie助は自己紹介を始めた。

 さっきまで1番固まってたじゃねえか、何がどうなった?それにこのくだりは2回目だ。


「あーさっきも言ったと思うけど俺はヨバル。MMOは初心者だが戦闘には自信がある、殴るタイプの魔法使いだ、よろしく頼む」


「……私は†月天殺戮女神†。斧と魔法が好き。よろしく」


「げ、げっ……つきてん?」


 そのくだりもさっきやった!全部やるじゃん、再放送か?

 しかもつきてんはないだろつきてんは、最初げってんって言いかけてたじゃねえか。


「キルナって呼べばいいらしい」


「おぉ!キルナちゃんだね!いい名前だと思うよ!」


 Die助ーそのカバーは無理があるぞー。

 数分前の自分を見ているようで頭が痛くなる。

 まあ地雷を踏まなかっただけ俺よりかなり優秀か。


「俺たちはレベリングしに来たわけだけど、キルナはここに何しに来たんだ?」


「それ!僕も気になっていたんだよね!どうして1人で戦ってたんだい?」


「……私もレベリング。いつのまにかみんないなくなってた」

 

 十中八九金キリコかキルナに怖気付いたってところだろう。

 さっきまでの俺やDie助だって共闘前にPKだってわかっていたら逃げていたかもしれない。

 

「……金キリコ期待はずれ。薔薇豚の方が強かった」


「キルナも薔薇豚と戦ったのか?俺も30人ぐらいでやっ──」


「……ソロで」


「えぇっ!?キルナちゃん1人でフィールドボス倒しちゃったの!?」


 まじかよ。

 あれを1人で?いや実際金キリコを赤子の手を捻るように屠って弱かったとまで言うんだ。嘘だと言うには倒す姿を想像出来すぎる。

 確かに金キリコは薔薇豚に比べるとだいぶ弱かったが。

 

「……1対1が好きだから、薔薇豚も慣れれば隙だらけ。私の敵じゃない」


「ははは、敵じゃない……か。本来フィールドボスって8人以上で戦う相手だよ?面白い事言うねキルナちゃんは!」


 タイマン好きか。

 話し始めてというもの段々とキルナの事がわかって来た。

 タイマンが好きで戦闘には圧倒的な自信がある。

 聞いている限りどこにでもいる対人ゲーマーだ、出身が何のゲームかは知らないし聞くつもりもないが。


 何が言いたいかというと腫れ物扱いするには少々普通すぎるという話で。

 名前が赤いからといって関わりを避けるというのはなんというかこう、あれだ。少し寂しいものがある。

 キルナは生粋のソロ戦士だ。きっと気にすることではないのだろう。

 だからこれは俺個人の興味でしかない。


「キルナもレベリング目的なら一緒にやらないか?3人の方が早いだろ」


「それもそうだね!僕とヨバル君の連携は自分で言うのもアレだけど効率がいい!そこにキルナちゃんが加われば30レベだって夢じゃない」


「……やる」


 俺たちのパーティにキルナが加わった。

 何度見ても†月天殺戮女神†のインパクトすごいな。

 実は名前がいかつすぎるのが原因だったりしないか?

 

 斯くして貸し切り状態の跋討百鬼の森でキリコ殲滅部隊が結成された。









 貸し切りの狩場とはすごいものでキリコを倒す数が倍近くに跳ね上がった。

 加えてキルナが全方位から飛び出てくるキリコを千切っては投げ、千切っては投げて俺とDie助以上の効率を叩き出す。

 夕方までには30レベに到達出来そう。そんな確信をした時、辺りの様子が一変した。


「ん!?なんか……多くね?」


「あー……これは確か」


「……記憶の奔流(メモリーバースト)


「なにそのカッコ良さそうな名前!?」


 メモリーバーストと呼ばれたそれは跋討百鬼の森を文字通り百のキリコで埋め尽くした。


「稼ぎ時だよ!ヨバル君!」


「お、オーケーまかせろ!」


「……ロストレヴァリエ」


 正直1対多は慣れてない、背中に目があるわけでもなし自信もそんなに無い。

 ゴーレムやタマザナイを間近で見てしまったのもあるだろう、数の暴力に多少の苦手意識すらある。

 ……だからこそ対策は考えたつもりだ。


 キリコはいつものように1匹ずつ行儀良く突っ込んで来る事なく、闇雲に俺を目掛けて飛び掛かって来る。

 無数の手斧が首へと振り下ろされようとした時、俺は少しだけ膝を曲げて身を屈めた。


魔崩天(インパクト)!」


 俺を中心に円形状に放出された魔力はキリコたちを吹き飛ばし、周囲のキリコを巻き込む形で地に転がす。

 全方位への対応、そして金キリコ戦でも決めた鮮やかなキリコボウリングで確実にダメージを与える。


「あと3発ってところか?」


「ヨバル君!?またこっちに飛んできたけど!」


「悪い!あと3回はそっち行く!」


「3回も!?」


 許してくれ、無差別攻撃なんだ。

 謝罪を兼ねた警告をしながら次に備えて2発目の準備をする。

 

魔崩天(インパクト)!」



 キリコの断末魔とDie助の悲鳴にも似た声が森中に響き渡った。



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