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初心者魔法使い、弾を買う



「ご主人!どこに向かってるんですか?」


 肩に乗せたアルボのふわっふわの尻尾に指を沈ませながら目当ての店を探す。


「魔法使いになったから武器を買おうと思ってな」


「ご主人?武器屋ならさっき通り過ぎましたよ?」


「あー、杖とかには興味ないからな」


 アルボはこてんと首を傾げるとそれ以上思いつかなかったのか、俺の腕を叩き抗議してくる。


「どうしたアルボ。アルボ?」


 スルスルと腕を降り始めるアルボに慌てて腕で網を作るようにして支えると、腕の中で丸まりくつろぎ始めた。

 茶釜のないアルボは仕立てたての布団のようにふかふかで心地良い。

 ヤケクソアルボはかわいい、こころのノートにメモしておこう。


 魔法使い(ウィザード)を選んだものの、杖を使う気は毛頭ない。理由は主に2つ。

 1つ目は杖の扱い辛さだ。重くて壊れたら困る棒、そんなものを手に持ちながら肉弾戦が出来るほど俺は器用じゃない。

 2つ目は距離が離れる事だ。1つ目が原因なのだが、固定砲台のように遠距離から魔法連発する場合、敵に着弾するまでに時間がかかる。

 時間がかかるということは見てから対処されやすいという事だ。対人脳すぎるきらいはあるが、命中しない回数が増えると回転率が高い意味が薄れてしまう。

 当たるアサルトライフルと当たらないガトリングなら俺はアサルトライフルが好きだ、イチノセあたりはガトリングの方が好きそうではあるが。


「アルボ、着いたぞ」


 杖のネガキャンをしていれば目当ての店が見つかった。

 魔法使いが使う武器、それは杖などと言う触媒ではなくもっと根本的なモノ。


「あぁ〜っ!魔法を買いに来たんですね!」


「そういうこと」


 弾もないのに銃を買っても意味がない、まずは弾を買うところからだ。

 弾があっても銃がなければ意味がない?それなら恐らく問題がない。

 万人が使えるステータスという中にINTという項目がある以上、恐らく武器に制限は無く魔法は使えるのだと思う。

 強いて言うならあれだ、俺が銃だ。

 俺はキメ顔で少し古びた扉を開けた。


「……いらっしゃい」


「あのー、魔法を探しに来たんですけど……」


「……種類は」


 内装といい店主といいすごい本格的な感じだ。

 腰も曲がりしわくちゃなお婆さんが鋭い眼光を向けてくる。

 何かを試すような……邪魔者を見るかのような視線に、自然に身震いしていた。

 どうしたものか、種類なんて聞かれても知らない。ここはどうに──


「初心者でも使える魔法探してますっ!」


「……そうかい」


 ナイス!ナイスだアルボ!

 爆速で進んでくる助け舟に乗り、俺はなんとか此岸に戻ってくる。

 心なしかお婆さんが放つ剣呑な雰囲気も和らいだ気がする。


「サンキューアルボ、助かった」


「いえいえ、これで買えますねっ魔法」


 小声で感謝を伝えれば小声で返ってくる……しかもサムズアップ付きだ。

 神か何かなのか?今ならアルボの足だって余裕で舐められるぜ。

 

「……そこの一角なら使えるよ」


「あっ、ありがとうございます」


 お婆さんが指を一振りすると店中から本が独りでに集まってきて初心者用コーナーを作り上げた。

 魔法すげえ……




「うーん、これとこれとこれ?」


 たくさんある魔導書の中から選び抜き3冊まで絞った。

 せっかくなので諸事情で手が伸びなかったものでも紹介しようと思う。


・魔法陣・転

 興味はあるが手を伸ばさなかった魔導書。

 魔法陣を発動すると敵を転倒させる事が出来る。

 セールスポイントは魔法陣というものはあらかじめ書いておくことでMP消費も詠唱もなしで使える点だ。

 非常に強そうだがインベントリを圧迫してしまうという欠点が気になり断念。


・危血騰昇

 真っ黒な表紙に真っ赤な字。多分禁書だ。

 なんで初心者コーナーにあるのかわからないが中身は本物だ、HPを1まで削ってSTRとAGIを1.5倍するバカみたいな魔法だ。

 しかし自傷ダメージが宗教上というか格ゲーマー特有のアレルギーというべきか兎に角無理なので断念。


 あとは魔法全書などという全ての魔法を書き記したバカみたいな鈍器があったが、桁が4、5桁違うレベルで高価だった。

 なんで初心者コーナーにそんなもの置いてるのか。

 危血騰昇は改宗……アレルギーを克服したら、魔法陣に関してはいつかは使ってみたいと思っている。

 極論、タイミングよく魔法陣・転を発動させ続けたらボスだろうとハメ殺せる可能性を秘めているからだ。


「ご主人、ほんとにそれだけでいいんですか……?」


「十分だ、魔法にもまだ慣れてないしな」


 実は詠唱が短い好みの魔法を探していたら3冊しか残らなかっただけだ。

 不思議そうな顔をしたアルボと共に3冊の魔導書を並び見る。


・イグニスプロード

属性: 火

効果: 発動から15秒以内にもう一度発動するとヒット数とダメージが増加する。最大5回まで増加する。

詠唱: 破裂しろ、反発せよ、燃え盛れ、心せよ、塵と成れ。

消費MP: 25

CD:5秒

必要ステータス: INT28

説明: 我が魔道を阻む者は龍であろうと焼き尽くさん。

散り散りとなった連星はその身を燃やし、立ち塞がる者の悉くを塵へと変えるだろう。


・エアスライド

属性: 風

効果: 風と共に瞬間的に移動する。

詠唱: なし。

消費MP: 15

CD: 8秒

必要ステータス: INT17、AGI12

説明: どこからともなく現れる一陣の風が今日も誰かを助けるだろう。


魔崩天(インパクト)

属性: 無

効果: 体中から魔力を放出する。ヒット時に敵を怯ませる。

詠唱: インパクト。

消費MP: 50

CD: 10秒

必要ステータス: INT10

説明: 体内の魔力を一斉に放出する事で攻防一体の円を展開する。老練の魔法使いが使えば天をも崩すだろう。


 必要ステータス。これが急ぎ足で魔法を買いに来た理由であり少々厄介なものだ。

 どうやらスキルや魔法を使用する度に対応するステータスが足りているか検問されるらしい、実際INTに全部注ぎ込もうとしていたから危なかった。

 装備などの外付けで盛ることも出来るらしいが、今は魔法(こっち)にお金を回したい。

 3冊の魔導書を持ってお婆さんのいるカウンターに向かう。


「……悪くないのを選んだね」


「ありがとうござ──」


「1500エンカが3冊で4500エンカだよ」


 お婆さんはデレたと思ったら誤魔化すように勘定を始めた。

 どうやらお眼鏡には適ったらしい、これで俺も立派な魔法使いということか。

 4500エンカを対価に俺は3冊の魔導書を手に入れた。


「……魔法の使いすぎには気をつけな」


 お婆さんはいつのまにか心配までしてくれていた。

 多分MP切れの事を言っているのだろうとアタリを付け、俺は店を後にした。

 あれ?もしかしてすごい親切?




プレイヤー名: ヨバル

Lv: 12

JOB: 魔法使い(ウィザード)Lv.1

状態: 喪者

HP: 410

MP: 644

STR: 10

DEX: 10

AGI: 12

INT: 40

VIT: 10

ステータスポイント: 0

スキル

・魔心紅炉

魔法

・イグニスプロードLv.1

・エアスライドLv.1

魔崩天(インパクト)Lv.1




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