14 ヴィランパトナム
ヴィランパトナムでピエールと高文を出迎えたのは、見知らぬ司祭だった。アユタヤの通信連絡館から派遣されてきた宣教会の主任司祭だと紹介された。
「おかえり」
と司祭は微笑んだ。ひどい恰好で、見知らぬ子どもを抱えているピエールを見ても眉一つ動かさなかった。
同僚たちや信徒の顔を見るのは随分久しぶりな気がした。彼らは皆呑気で、異郷での平和を存分に謳歌しているように思えた。
「君を待っていたのだよ。ピニョー司祭」
連絡館の司祭は、彼を教会代わりの家に招き入れながら言った。外で待つように言われた高文に、信徒の子どもたちが近づいていった。しばらくすると、高文を交えて彼らは遊びに出かけていった。
ピエールを椅子に座らせ、司祭もその正面に腰を下ろした。
「ホンダットは、どうだった?」
ピエールは、苦々しい思いを噛み締めながら答えた。
「何もかもが駄目でした」
司祭は眉を上げる。
「それは、二人で抜け出したはずの君たちが一人になってしまったことと関係があるのだね」
話してごらん。そう優しく促され、ピエールは見聞きしたことを全て話した。処罰があるだろうとはちらりと考えたが、今更何か隠しだてする気は起こらなかった。
「私が思っていたより、ひどい事態でした」
コーチシナ代牧区で行われていたことをすっかり話してしまってから、ピエールはうなだれた。一番ひどいのは自分だ。ジョルジュをそのままにして、逃げ出した。
「でも、ホンダットにはできるだけ早く戻らねばなりません。はびこっている間違いを正し、今度こそ……」
ジョルジュのような犠牲者が出ないように。
司祭はうなずいた。
「私も同意見だ」
ところで、ピエールには気になっていることがある。
「次の代牧は、誰になったのです?」
「ああ、」