表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/31

第28回 決戦 (シスル視点)

「……悪いけど、やっぱりここは譲れない! 退いてはくれなさそうだし、兄さん達を無力化して、物置に向かう!」


「ほう、私達とやりあう気ですか!」


 そう言うと、アコナイト義兄さんは、片方の手でバトルアックスを持ち、もう片方の手を掲げた。手には陽炎状だった魔力が集まり、渦を巻いているのがこちらからも確認できる。


 さらに、ピンギキュラさんは刺突短剣(スティレット)を、ドロセラさんはメイスを持って、すでに交戦体勢になっている。


 戦うしかないか……。いや、戦ったとして勝てるだろうか。この目の前の『紺碧薔薇の魔女』の生まれ変わりに。背筋に冷たい物が走る。


「……ま、貴方達が私に負けても、あの優柔不断なクロード様の事です。最悪、ちゃっちゃと2人で既成事実作ってしまえば、結婚を認めざるをえないと思いますよ」


 片方の指で輪を作り、もう片方の人差し指をそこに突っ込むという卑猥なジェスチャーをしたアコナイト義兄さん。そんな煽りに、クローバーは顔を怒りと恥じらいで真っ赤にした。


「ば、馬鹿兄貴!何言い出すのよ!そんな事言われなくても、私とシスルは、こう……もう後戻り出来ない所まで来ちゃってるの!」


「あっ、そうでしたか」


 微笑ましい顔をしながら何かを察した義兄さん。ヘリオトロープさんも、何かを察したのか、ニヤニヤしている。


「あー、あの夜会の後……道理で翌日の雰囲気が甘いはずです。いやー、10ヶ月後辺りが楽しみですね!今度は私が乳母やりたいです!」


「二人とも、変な想像しない! 」


 頬を染めて怒るクローバー。……ごめんなさい、アレは流石に調子に乗った。


「とにかく、もうこっちは色々と後戻り出来ないの!ここを通してもらうわ!」


「だとしても、我々も下がる訳にはいきません。我々には、我々の目的があるのです」


 アコナイト義兄さんは、ゆっくりと、自身の乳姉妹に命じた。


「ピンギ、ドロセラ。妹達を排除します。身内が傷つくのは見たくありません。怪我はさせない様に。私の魔法で無力化します!」


「「了解!アコ(ちゃん)(兄様)!」」


 得物を片手に突進してくるピンギキュラさんとドロセラさん。まさか、顔見知りの身内同士で争う事になるとは……。


「仕方ない……。やるしか無いか!」


 僕は、戦闘態勢に入る。名乗りはお互い省略し、僕達は一斉に動いた。




 * * *




「馬鹿兄貴はこの世で生み出されている魔法はほぼ全部使えるわよ!でも、一番気を付けるべきは、面制圧の散弾レーザー。それだけは発動させてはいけないわ。あれを撃たれたら避ける術がない!」


 クローバーはそう言って、僕とヘリオトロープさんへ警告する。


「分かった!」


「りょーかい!」


 僕とヘリオトロープさんは返事をすると、アコナイト義兄さん一行と対峙する。


「……乳母姉同士でも、手加減しないよ!」


「身内同士、手加減して欲しいんですがね……」


 赤髪をツインテールにした、眼鏡をかけた女性、ピンギキュラさんは、ヘリオトロープさんと。


「妹様。アコ兄様の妹は、私だけで良いんだよ!」


「私の相手は、ドロセラちゃんか! 意外と独占欲が強い!」


 白髪を右サイドテールにした、小柄な女性、ドロセラさんは、クローバーと。それぞれ、交戦した。


 そして、僕は、魔法攻撃の詠唱中のアコナイト義兄さんに、『ストライクタートル』を手に、攻撃をしかける。


「……詠唱中に攻撃を仕掛けるのは、野暮じゃないですかね?」


 アコナイト義兄さんは、右手に魔力を集めながら、戦斧でそれを受け止めながら言う。


「すみません。勝利や目的の為に、迅速に、狡猾に、獰猛に手段を選ばない。と教わったもので」


「ソードフィッシュ家のモットーに忠実で大変結構!」


 アコナイト義兄さんが発動させようとした魔法は、僕も知っていた。『ヒュプノス・バックショット』。強烈な睡眠効果を持つレーザー光線を散弾としてばら撒き、面制圧をする恐ろしい魔法だ。僕が、邪魔をしなければ、今の一撃で、僕達は全滅していただろう。しかし、この魔法を使うには、複雑な詠唱が必要だ。その隙を見逃すわけにはいかない。


「しかし、貴方は、私が近接戦闘も出来るという事を忘れている」


 アコナイト義兄さんは、バトルアックスで重い一撃を放ってくる。この細い体のどこに、一体どんな力が入っているのかとツッコミたくなる。だが、僕だって、ソードフィッシュ家の戦士の1人。武芸には自信がある。バトルアックスの猛攻を凌ぎつつ、隙をみて、反撃する。


 何合か打ち合ったが、そのうち、『ストライクタートル』は、義兄さんの身体を捉える。アコナイト義兄さんは咄嗟に体を逸らし、直撃を防ぐ。僕の愛剣は、義兄さんの広がった長い髪を切り裂いた。切断された美しい長い紺髪が宙を舞う。


「お見事! しかし、これで終わりでは無い!ピンギ、ドロセラ、目を閉じなさい!『閃光』!」


 義兄さんは、今度は短い詠唱を即座に終えた。片手から、強烈な光と轟音が放たれる。


「なっ?!」


「目くらましです。」


 そう言うと、義兄さんは、素早く僕の懐に入り込み、腹に拳を放つ。


「ぐふぅ!」


 息を吐き出しながら、後方に吹き飛ばされる。橋の欄干にひっかかり、池には落ちなかった。僕は体勢を立て直すと、再びアコナイト義兄さんに斬りかかる。しかし、義兄さんは、素早い動きで、僕の斬撃を軽々と避けてしまう。


「貴方は確かに強い。剣術の才もある。ですが、まだまだ経験不足ですね。さて、どうしますか?」


 流石は、辺境伯様(父上)の右腕、ジークフリート様の養子。恐らく彼仕込みであろう武術の腕は大したものだ。余裕の笑みを浮かべるアコナイト義兄さん。このままでは、いずれ押し切られ、負ける。


「シスル。貴方は、良くも悪くも真っ直ぐ過ぎる。挙動が読み易いんですよ……決着をつける。」


 そうアコナイト義兄さんは言うと、再び、『ヒュプノス・バックショット』の発射態勢に入った。


「まずい!」


 僕はそう呟いて、彼に斬りかかるも、あっさりと避けられ、逆にカウンターの蹴りを受け、吹っ飛ぶ。


「がぁああ!」


 地面に倒れ伏して、意識が飛びそうになるが必死に耐える。今、気絶したら負けだ。なんとか立ち上がり、アコナイト義兄さんの方を見ると、妙な事に気付いた。彼が立っている場所の奥。ちょうど、物置の扉が開き、中から人が出てきた。背格好は中肉中背。男の様だった。


「ジーン・アリク?!」


敵にして分かるなろう系主人公の倒し辛さ。アコ兄さんは、ほぼ全ての魔法を使えます。が、防御魔法もろくに張ってないあたり、明らかに舐めプしてます。こうしないと脳死散弾レーザー攻撃連打で即終了してしまう……。この子、散弾レーザー大好きだし。


ファイアブランド姉妹は、恋愛感情と同時に、アコちゃんへの家族愛と情欲と同情と崇拝と友情と忠誠を持っています。なので、一言で彼女らの精神構造を解説するのは非常に難しい……。


コメント、評価、ブックマーク、誤字脱字報告もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ