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第16回 決着

 

 僕は、更に畳み掛ける。


「さて、どうしますか?今ここで狂言を認めて謝罪すれば、不問にしてあげなくもないですけど」


「……くっ!」


 悔しげに僕を睨みつけるエイプリル嬢。義姉さんを悪竜だのなんだの言っていたが、この表情だけ見れば、彼女も悪鬼の様だ。


 そんな彼女に、僕は小声で話を続ける。


「実は、貴女の私生活も、少々嗅ぎ回らせていただきました。随分派手に火遊びをしているらしいですね……随分多くの男を弄んでいるとか」


「!?」


 愕然とした表情になるエイプリル嬢。それを聞いたジーンも唖然としている。彼女の表情がこの話の正誤を物語っていた。


「貴女と関係のある男の名、全員、ここで読み上げましょうか? 中には、結構なお偉いさんもいますし、既婚の方もいらっしゃいます。表になったら色々と、まずいかと……」


 僕は、彼女に「早く降参しろ」と、無言の圧力を加えた。


「ごめんなさい。無条件降伏します。だからそれは勘弁してください」


 エイプリル嬢は即座に項垂れた。案外、聞き分けは良いらしい。これで、この茶番劇を終わらせる事が出来るだろう。


「では、皆さんの前で義姉の無実を宣言してください」


「はい。私は、ジーン様の婚約者であるクローバー様に対して、嫉妬していました!狂言で陥れれば、自分がジーン様の婚約者になれると、彼にそそのかされました!私も悪いですが、全てジーン様が仕組んだ事なので、私は許してください!ジーン様に!!この男にやれって言われて、仕方なくやったんです!!」


「はあああああああ!?お前もノリノリで計画に乗っただろうがああああ!」


 彼氏に全責任を被せようとするエイプリル嬢と、唖然とするジーン。中々良い性格をしている。恥も外聞もなく、土下座しながらジーンを指差して責任回避に徹する姿は芸術的ですらある。


「成る程。つまり、義姉さんへの嫉妬心と、公爵家の息子の妻になれるかもしれないという欲が、今回の騒動の原因ですね」


「元凶は全部こいつよ!私は命令されて仕方なく!」


「うおおおおい!ふざけんな! 」


「アイツ!アイツ!主犯はアイツ!私はただの実行犯!哀れな操り人形!」


「適当こくな!断罪セリフの台本まで作ってただろうが!!」


「この卑怯者!男なら女を守りなさいよ!」


 周囲の目も気にせずギャアギャア騒ぐ二人。まだ、抵抗するなら、彼女と関係ある男のリストを読み上げて破滅させる事も考えたが、もう必要無さそうだ。


 リストは一応取っておこう。今後、不義密通をしていたお偉いさん達への弱みになる。一夫多妻が容認された国で、正式に側室に迎えないという事は、まあ、それ相応の事情があるのだろうし。


 ***


「これは……楽しい事になったね」


「ええ……」


 少し離れた所で様子を伺うのは第4王女ファントムとアコナイトの乳母妹(めのとまい)ドロセラである。


「アコの思惑通りになったね」


「はい。ここまで上手くいくとは思いませんでした。我が乳母兄(めのとけい)もお喜びになるでしょう」


 3日前にアリク家の屋敷で、アコナイトが蒔いた『悪意の種』。それはジーンがクローバーとの婚約を破棄する様に仕向ける事だった。


 さすがに、ここまで思惑通り、鮮やかにいくとは、ドロセラはおろか、煽った張本人であるアコナイトですら、思わなかっただろうが。


「どうする?そろそろ」


「行こうか」


 脇にいた、護衛の女エルフの騎士スペクターと、阿吽の呼吸で意思を伝えあったファントムは、それまで変装の為にかけていた伊達メガネを外す。


「じゃ、お待ちかねの王族の介入タイムといこうか。ドロセラちゃん、アコには、よろしく伝えといてくれ」


 ドロセラにそう言うと、ファントムは渦中の4人の元へと歩み寄った。


「君達、随分楽しそうな事をしているね。ボクも混ぜてくれるかい?」


 突然現れた王族に、場が凍りついた。


「えっ……貴方様は?」


 呆然とするシスルの言葉に、ファントムはにっこりと微笑みつつ、カーテシーをしながら名乗った。


「ふむ。自己紹介がまだだったね。ボクは、第4王女のファントム・フォース・コール。しがない王族だ。この一件は、先程から見せてもらっていたよ。……シスル君だったよね?お見事!よくぞ、あの突発的事態に対応出来たね。ソードフィッシュ伯は良い養子を持ったものだ」


 シスルは褒められた事で、緊張が解けたのか、少し柔らかい顔になる。


「あ、ありがとうございます。」


「聞く所によると、君は元捨て子というじゃないか。にもかかわらず、礼儀作法や知識教養も完璧だ。それに今の様に勇気もある。血筋の良さに胡坐をかいている他の貴族令息令嬢も見習わなければならないぞ!……まぁ前置きはこの辺にして、本題に入ろう。この婚約破棄騒動、王家が介入しようと思う。ソードフィッシュ家の奥方様も、皆も、それで良いな?」


「は、はい!」


「よろしい。ジーン・アリク。宣言通り婚約破棄を認めよう。そして、ソードフィッシュ家令嬢クローバー嬢には、今後、接触を禁じる。また、当面の間、アリク家の屋敷にてエイプリル嬢と共に謹慎処分を言い渡す。戦勝を祝うめでたき場で、無実の婚約者を貶めようとするとは言語道断。ソードフィッシュ家に対しては、アリク家、ブラインダー家、共に正式な謝罪と共に、慰謝料を支払う事。額については、当人同士で話し合っても決着はつかないだろう。法 に 則 っ た 裁 判 で決定する事!以上!」


 一気にまくしたてられ、ジーンもエイプリルも反論する暇もなかった。法に則ったという所を嫌味っぽく強調しているのは、シスルからすると痛快だった。


「クローバー嬢、シスル殿に関しては、特にお沙汰は無しだよ。このまま、両家の人間が顔を合わせていても、険悪になるだけだろう。アリク家、ブラインダー家の面々は、会場からご退場願いたい!」


「はい。畏まりました」


「かしこまりました」


「はい」


「承知しました」


 ファントムの指示に、アリク家、ブラインダー家の面々はすごすごと退散していった。この場にいても気まずいだけであるし、下手すると、喧嘩っ早いソードフィッシュ家の面々と乱闘騒ぎになりかねない。ちなみに、ジーンとエイプリル嬢は、ファントムの言葉が終わると、中断していた口論を再開したが、アリク家の家人に引きずられる様に退場させられた。


「ふぅ。めでたい席で大声を出して失礼したね。では、残った面々は引き続き、パーティーを楽しみたまえ」


 全てが終わった事を確認したファントムは、そう言って、スペクターを連れて退場する。こうして、断罪劇という名の茶番劇は幕を下ろした。


もうちっとだけ続くんじゃ

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