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さよなら線  作者: 森川めだか
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幽霊線路

幽霊線路


 暑くなりそうな曇り空だ。

マヌエットは黒のバックパックを背負って幽霊線路に入った。

マヌエットはただの旅行客だが、噂を聞き付けて人の目を盗んで来た。

入り口からしばらくは真っ暗だったが、向こうにはランタンが所々に置いてあるのが見えた。

何でも、この線路は途中まで敷設されて放り出されたものらしい。

誰が名付けたか、幽霊線路。

マヌエットは真っ暗な中を手探りで通って、一つのランタンを持った。

照らしてみると壁面が全てガラスになっている。精製されたガラスではなく気泡だらけの濁ったガラスだが、底がない。果てまで底なしガラスだ。

マヌエットはランタンを持って先に進んだ。

底なしガラスはどこまでも続いていた。

マヌエットはまだ気付かなかったが、後ろから誰かの足音が迫ってきていた。

途中まで来たところでマヌエットの身体から書類がバサバサと飛び出してきた。それは自分の中の言葉がリライトされた物で、出てくる度にそれの意味を忘れていく。

急いでマヌエットはその次々と出てくる書類を自分の中に戻そうと悪戦苦闘していた。

向こうでランタンの光で引き延ばされた不気味な人影が見えた気がする。

マヌエットは怖くて声も出せなかった。こうなったら幽霊線路の出口まで走るしかない。

マヌエットは書類も忘れて向こう側へ走り出した。

青春は過ぎ行く魔法だ。

このガラスは私の青春を映し出したものかも知れない。

なら、追ってくるのは私が最後に殺した人?

自分が追ってくる!

マヌエットは闇雲に走り出した。もう手に持っていたランタンも放り出してしまっていた。

向こう側はまだ見えない。もしかしたら、途中でこのトンネルも終わってるんじゃないか。

影はまだ追ってくる。

「私を殺さないで! やっと・・」

マヌエットはその姿を見た。そして気を失った。

何の変哲もない線路で倒れているのをマヌエットは発見された。

声をかけられても最初、返事もしなかったが、やっと目を覚ましたマヌエットは「幸せな宇宙人・・」と一言言ってまた気を失った。

そこが一夜の国であったのか。

夏の夢だったのか。

ただそこに見えるのはバター色の海だった。


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