こんな設定のラノベはどうでしょう (4)
私の前に立った女は、ヘーラーと名のり、ゼウスの淫行を咎める道具として自分に仕えよ、と告げた。私にはヤーヴェー級のチートな能力を授けるとも。
すべてに絶望していた私が、「なにもかも消えてしまへ」と言うと、無だけが残った。私自身もなくなったので「光あれと言給ひければ光あり」のシナリオで、新たな世界を創ろうとする企ても潰えてしまった。
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ラムダ教会の聖なる書の一つ『チャーチの福音書』の始まりはこうである: 「はじめに nil があった。nil は LISP を創った。」
聖ラスカルは、自分自身を要素として含まない集合全体の集合 R = {x | x ∉ x} をでっちあげて、チャーチの教えを否認し、後に破門された。
聖ノーマンは、自分で髭を剃らない人の髭を剃り、自分で髭を剃る人の髭は剃らない床屋について考えこんでいるうちに棄教してしまった。
無に祈りを捧げることに疲れた平信徒が、格好ばっかりつけてんぢゃないよ、と反乱を起こし、ジャヴァ派、モカ派... が乱立し、教会は分裂した。
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主人公は SD の将校とする。国防軍の敗北主義グループが MI6 から資金その他の援助を受けて、総統の暗殺を謀っている。敵は私心のないユンカー出身の生粋の軍人、一筋縄ではいかない英国の諜報員。祖国と夫を裏切って親衛隊に協力するポーランドの伯爵夫人が絡む。舞台は万全だ。
最後は主人公が南米のどこかで柏葉付騎士鉄十字章を手に結局は救いえなかった祖国と総統に思いをはせるところで終わる。