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第16話:烏丸茶人のブラコン06


「で、紅蓮さん」


「はいはい?」


「いつ頃烏丸先生に会わせてくれるんでしょう?」


「今日で良いんじゃないですか?」


 サックリ答える紅蓮。


「兄さん……」


 抗議するような久遠の声だったが、状況を拒否するほど強行にもなれない。これは別段不思議なことでもないが。


「烏丸って誰だよ?」


 とは八聖の言葉。一人ついていけてない。さもあらんが。


「教師か?」


「人生のね」


 是空の言に憂慮は含まれていない。


「それでいいのか」


 とは紅蓮と久遠の共通認識だが、是空には当然の摂理だ。


「ソイツが好きなのか?」


 八聖の問い。


「それはもう」


 是空は誤解を承知で快く肯定。


「誰だよソイツ……」


 睨むような視線。トゲのある言葉。紅蓮にしてみれば興奮してしまう声質だった。


「にゃふ……」


 悦に入る吐息。


 ともあれ、


「小説家さんだよ」


 と是空が答える。


「小説家……」


 ぼんやりと八聖が呟く。


「刹那は本なんて読まないしね」


「漫画は読むぞ?」


「はいはい」


 サクッと流す是空。


「オン・ソチリシュタ・ソワカ」


 心中で印を切る紅蓮だった。八聖の、


「面白くない」


 という気持ちは十二分に受け取っている。妙見。ソによる物だ。基本的にビブリオマニアである紅蓮や久遠……並びに是空とは立っているステージが違う。別に小説を読むことを文化と称するつもりもないが、紅蓮は、


「御苦労様ですね」


 と思ってもしまう。やはり紙媒体のサブカルチャーであるならば小説より漫画を選ぶのが常道ではあるのだろう。


「神通さんも小説読むのか?」


「はい」


「ええ」


 兄妹揃って頷いた。


「面白いか?」


 本音だろう。コレは特に責められることでも無い。


「面白くなければ読みませんよ」


「以下同文」


 やはり気後れ無く肯定する。


「むぅ」


 呻く八聖。紅蓮ははにかむように表情を崩す。慕情の視線で悩む八聖を見やる。その声を聞くだけで幸せになり、報われる。


 紅蓮を、


「本当に何とも思っていない」


 が故の、


「押して駄目なら引いてみろ」


 だ。


「現代文の授業で習うのとは違うのか?」


 こういうトンチンカンも小説を楽しめない弊害だろう。


「ま、刹那には一生わかんないよ」


 切り裂く是空。ラノベの発言力も社会的に高くは為っているが……それでもニッチなジャンルから抜け出せないのもまた事実。どちらかと云えば紅蓮と久遠と是空の方が弱小勢力と呼べるだろう。


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