第十七話 変化
次話を大幅カットして残った分を今話に追加しました。
タイトルも変更しています。(共同生活→変化)
次回から主人公視点に戻します。
彼女は本当に淡々と話してくれました。語られる内容は簡単に受け入れられるようなものではありませんでしたが、そこに私が持っているような絶望や憎悪、暗い感情はなく、ただ事実を述べているだけでした。
戸惑ってしまいます、何故彼女はこんなに明るくいられるのでしょう。これが正しい事なんでしょうか。ほんの数日前まで酷い目にあっていたというのに…何年も引きずっている私は一体……。
…自分のことを考えている場合ではありません。彼女が今どう思っていようと、これまでの辛い経験は確かにあったのです、これから辛い思いをきっとすることでしょう。なら私は彼女のために出来るだけの事をしましょう。
その気持ちを手を握って言えば、握り返しながら、頼りたいと言って頂けました。声を震わせながら、
考えを改める必要がありますね。彼女が淡々と話したのは感情が出ないようにするためだったのかもしれません。少しずつでもそんな感情を表現できるぐらい頼ってもらえるように頑張らなくてはですね。
彼女のためにできる事は何でしょうか。身の回りのお世話をすることはもちろん、家にずっと一人で何もしないでいるというのもつまらないでしょうから、片手でもできる仕事なども持ってきましょうか。手足ができれば一番ですね…しかし義肢を作れるお店があるという話は聞いたことがありますが確か私が払えるような額ではなったはずです。
彼女に何故ここまでしてくれるのか聞かれました。何故と言われると…私もメルトメリアの方達に同じように救われ、私がアスパリを憎んでいるから…なのですが、前を向こうとしている彼女には言えないですよね。
彼女はリサーナと言う名前らしいです。これから彼女、リサーナさんとの生活が本格的に始まります。
日は変わって朝になりました
「おはようございます、リサーナさん」
「んーにゃぁ、おふぁよ…」
「ふふっ」
生きているか確認する為ですし、ただの寝言ですがこんな朝の迎え方がこれからの日常になると思うと朝が待ち遠しくなりますね。
リサーナさんは私に興味があるのか色々と質問してきました、リサーナさんは話していた魔力操作の件であれこれ考えを巡らせているとのことです。
リサーナさんは昼間も魔力操作に集中しているようなのでお仕事はまだ探す必要はないでしょう。
始まって数日ですがこれまでの少女とは全く違う生活になりそうです。
リサーナさんとの生活で私の新しい一面が出てきました。
いってらっしゃいと見送られて、帰ればおかえりと迎えてもらえて、これまで薄かったこの家が私の家であるという意識が芽生えたり、
一度椅子に落ち着けば会話が止まることなく、気づけばもう寝なければいけない時間になっていることが多くなりました。名残惜しくとも明日もあるのだからと思って夜更かしをすることもなくなり、そこで始めて明日を楽しみに待っている自分の存在に気付きました。
一人で過ごす夜は長く、それでも朝になれば森に行かなければいけないという憂鬱さで遅くまで起きてしまう日々がリサーナさんのおかげで変わったのです。
家に早く帰りたいと思う気持ちが仕事中にも出てしまっているのかテルーさんに「リサーナちゃんのこと心配なんだろう、しばらくは遅くまでいなくて良いから早く帰ってやんな」と言わせてしまい、私もそれを否定せずに甘えさせて貰っています。リサーナさんのことを心配してるわけではなくただ………? いえ、心配だから気になってしまったのでしょう
彼女のためにできることをと考えていたのにむしろ私がリサーナさんの存在に救われているのではないでしょうか。
明日を楽しいものに変えてくれた彼女にこれ以上のものを返せるでしょうか。
「マリアナさーーん!!」
遠くからの呼び声で現実に引き戻されて彼女の方に目を向ければ、夕日をバックに先ほどまで片腕だった少女が両手を振ってこちらに駆けてきます。
と思ったら途中で転んでしまいました。
悩んでも仕方ありません。それに生活の中で彼女が支えが必要ないほど出来た人ではないと気付きました。必要な時に支えられるようにそばにいようと思います。
「考えに耽るのはもう十分ですね。」
私は1ページも進んでいない本を閉じて彼女を起き上がらせるべく彼女の元に小走りに向かうのでした。
支えとはこの話では身体的補助のことではありません。
【小話】
魔力量≒耐久力
耐久力は魔力量に比例します
拷問官は殺さないプロです。殺すなと言われてる限りは死なないギリギリを責めてます。
お読みいただきありがとうございます。




