第十一話 知りたい事と言えない事
「目下のやるべきことは決まったようなので今日はここまでにしましょう。先日お休みさせてもらったばかりなので次の休みは少し先です。それまでリサーナさんはゆっくり体を休めてください。」
「はーい」
そこで会話は止まって、後片付けなど諸々のことして就寝した。
その日から二週間ほど経った。
それまで私はマリアナさんがお仕事に行って家にいない間は魔力を動かしたり練ったりして暇を潰していた。その結果自己回復や身体強化は1秒もかけずに発動できるようになった。
試しにフォークで太ももの部分を刺しながら治癒を発動したら抜いた瞬間に傷が塞がった。刺す瞬間に身体強化を行ったらフォークの先端の三箇所が全て曲がった。
フォークが曲がったことについてマリアナさんに謝ったけど黙ってしまった。もう一度心の底から謝って、家に戻り次第フォークを送ろうと決めた。
マリアナさんがいる時は色々とお話ししたり、お互い質問しあった。
会話で得られた情報は。
孤児院がある街はメルトメリアという街で、私が捕まっていた国アスパリとアスパリの東南に位置する国メルトの国境にあるってこと。ちなみに私の国ガシィナはアスパリの西側にある。
マリアナさんの家は一戸建てで、メルトメリアとは少し離れていること。
私を拾ったのは仕事前に趣味の散歩も兼ねて森の中に生えるような食用の草を取りに行った時のことだったこと。
たまにしかいかないらしいので見つけてもらった私は運がいい。
マリアナさんは数年前にここに来て困ってるところを孤児院の子供達に助けられ、それから働いてるってこと。
孤児院には24人の子供がいて、10歳以下が18人。後の6人が普段他の子を纏めてくれている
マリアナさんみたいに困っていたところを救われた人や孤児院で育った子が他の仕事と兼業しながらローテーションで孤児院の手伝いをしていること。
近隣住民の人との仲がとても良いこと。
街の美味しい料理のこと。孤児院の子のこと。一緒に働いている人のこと。近隣住民の人のこと。
などなど、
だけど、孤児院に来る前はどこにいたのか、何をしていたのかと聞いてもはぐらかされてしまった。
マリアナさんのことをもっとよく知りたい、話してほしいと願うのは我儘だろうか。
と欲張れる立場にはないんだけども。
話を聞いた分、自分の事も話した。
自分の国のこと。家族のこと。
意外にもアスパリの国のことも聞かれた。話せるだけ話したけど一般的に知られていることしかいえなかった。
他にも自分の趣味の話、家族との思い出。
色々な話をした。
だけど、復讐しようと思っていることはいえなかった。
私は一人で復讐しようと思っている。家族にも自国にも帰らずに。
これは戦争になりえる事なのだ。機密情報を持っている可能性があった私が他国に捕まり拷問されて殺されそうになった。この事が分かればガシィナも黙っているわけにはいかないだろう。現在は証拠がないために動かないだけで、私が実家に戻って今までのことを話せば確実に戦争になる。
それ事態を疎んでるわけではない。私以外にも被害者がいるかもしれないのだ。黙って見ているつもりはない。
だけど、その戦争で傷つくのがガシィナとアスパリだけではない。
メルトリアに被害が及ぶかもしれない。ここは国境の街だからアスパリの人間が食糧や戦力を求めて襲いに来るかもしれない。ここの人たちのことは話を聞いただけだけど良い人ばかりだと思った。私を救ってくれたマリアナさんはもちろんのこと、メルトメリアの人たちに私のせいで苦しんで欲しくない。
だから私は一人で復讐する。誰にもバレないように、戦争にならないように。この事を言ったら心配させてしまうと思うから、マリアナさんには言えなかった。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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