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イギョウ  作者: らすく
8/33

とにかく彼女は、強い女だった。

 結局、由太郎は自分の家に帰ることにした。

 自分が居なかった間に、母はどうしていたことだろうか。

 そのような重いが、彼の脳裏を駆けめぐった。

 そう考えると、自然と由太朗の脚を運ぶ速度は速くなった。

 そして彼は、自分の家の前に立っていた。

 ・・・気配がない・・・。

 そのまま由太朗は、家の中に入った。

 やはり、予想通りであった。

 そこに母は、いなかったのである。

 まだ今の時刻は、昼間なのである。

 おそらく母は、まだ農作業をしているのだろう。

 このように考えると、親を残して村を出ていた自分自身に罪悪感を感じるのであった。

 そして自分は余り村を、歩き回るらない方が良いと思った。

 (うーん・・・・。)

 なにげに由太朗は、ゴロンと寝っ転がった。

 山中の生活で、彼は十分に休養と睡眠をとれていないのだ。

 あんまり無理するのは、自分の身体にとって得策とは言えない。

 だから母が戻るまで、しばらく家で待つことにした。

 疲労が蓄積していた彼は、間もなく意識が薄れていったのであった。

 

 ======== 彼の意識は過去に遡っていた ========

 どうも由太郎は、この村の生まれではないらしい。

 しかし出生地は、知らなかった。

 そして母からも、そのことについては聞いていない。

 そして由太郎からも、積極的に知ろうとはしなかった。

 実は母がただならぬ理由があり、この村に流れ着いた事は、彼はヒシヒシと感じていたのだった。

 由太郎が物心がついた頃には、すでに今の村で生活していた。

 流れ着いた村で、母子は他の人達と同じく、農業で生計を立てていた。

 幼い由太朗も、それなりに母を手伝っていた。

 よそから来たとはいえ、まじめに母子は働いていた。

 よその家にも、迷惑を掛けるような事は、していないつもりだった。

 しかし周囲の雰囲気は、普通とは違っていた。

 何やら母に対して、他の村人たちは特別な態度を取っていたのである。

 かと言って、嫌がらせをされている、と言うわけでもなかった。

 どちらかどう言うと、恐れを抱かれている、という方が正しかったのあった。

 幼い由太郎を連れて村に流れ着いたときは、まだ母は若い娘だった。

 何故か余所者の母子を、問題なく村は受け入れた。

 それには違和感があるのであった。

 何か外圧的なものが・・・・。

 疎外感はあるものの、村八分・いわゆる嫌がらせをされた覚えはない。

 そして村長は母子の世話を、親切にしてくれた。

 それに由太郎の母は、村の中では堂々とした態度であった。

 当時の母は、まだ若い娘であったが、悲壮感というか、弱音を吐いたりはしなかった。

 とにかく彼女は、強い女だった。

 それを考えると、また一つの興味が湧く。

 由太郎の父親は、どの様な人物だったのだろうか。

 母子が、この村に辿り着いたのも、恐らく彼が原因では無かろうか。

 余りに幼かったので、由太郎は村に移り住むまでの記憶はない。

 ・・・由太郎は危機感を覚えた。


 (はっ・・・)

 明らかな殺気を覚えた。

 それに反応した由太郎は、即座に起き上がった。

 (ああ・・・)

 彼の側には、恐ろしい雰囲気の女が立っていた。

 彼女に対しては、たとえ屈強な男でも、怖気づくのではないだろうか。

 しかし由太郎は、よく知っていた。

 その彼女が、その様な女性であることを・・・。

 「おっかあ・・・。」

 呟くように由太郎は、彼女の事を呼んだ。

 「由太郎・・・。」

 この女性は、由太郎の母である。

 今まで消息を断っていた彼を、まるで全く心配していなかったかの様な口振りである。

 「いつ帰ったんだい?」

 まるで尋問の如くの口調で、彼女は由太郎に発言した。

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