マト
==== パサッ ====
帯に続いて、着物も村娘の足下に落ちたのだった。
==== カサカサ ====
ガサツな音が、密かに動いている。
それとは対照的に、柔らかい風が吹いている。
静かになった・・・・。
彼女の立ち姿は・・・。
その村娘は鎖帷子・忍びの服をまとっていた。
彼女は着物姿から、忍びの装備に切り替えたのだった。
村娘の顔は、とても凛々しかった。
そう、彼女は、少女からクノイチになったのだ。
「相変わらず、お前は騒がしいのう。」
彼女の背中から、年老いた声が聞こえた。
「もう、行くから・・・。」
後ろを振り返りもせずに、少女は言った。
「もう少し待て、マト。」
老人の声がした。
どうやら少女の名は、マトと言うらしい。
「もう、我慢できないよ。」
彼女の決心は、固い様である。
それはマトが、拳を握り小刻みに震えている事から、読み取れるモノであった。
「今は、別の任務に人数が割かれているのじゃ。
待てばマト、応援が入るのだぞ。」
老人の声は、彼女を窘めている様子であった。
「でも、兄さが・・・。」
マトは納得がいかないという、態度を取っていた。
==== 話は遡る ====
マトの兄は、凄腕の忍びであった。
「今回は特殊任務、ある者の殺害じゃ・・・。」
声の主は、この忍びの里の長老である。
「その者は何処に・・・?
そして警護は、どの様になっておるので・・・。」
彼は具体的な内容を掘り下げる質問を、長老に投げかけたのだった。
「その者に、警護はついておらん・・。」
何故か長老は、言葉に滑らかさが無かった。
「では、どの様な相手なので・・・・?」
マトの兄である忍は、具体的に任務の対象人物を知りたがっていた。
「その者は、人ではないのじゃ・・・。」
「人ではない・・・。」
長老の台詞を、彼は重ねて述べた。
「かといって、獣でもない・・・。」
「・・・・それは・・・。」
「何かとは、判別出来ぬのじゃ・・・。」
そこで忍びは、この任務の難易度を感じたのであった。
長老は目を瞑り、これ以上は説明のしようのないことを、暗に態度で示していたのである。
「それでは、言って参ります。」
改めて準備をする必要も無いのか、彼はすぐに出立した。
「頼んだぞ・・・、エンサイ。」
忍びの里の長老である、老人は凄腕の忍を案じながらも見送っていた。




