真実
由太郎は山の中で、眠りに就いていた。
どうやら先ほどまで、彼は自分にとって非常に都合の良い夢を見ていたのだった。
そして由太郎は、頭の中を整理した。
これは真実の結末の話である。
===== 長老 =====
自身の過去の回想から元に戻った老人はマトの身を案じていた。
彼は分かっていたのだ。
マトの様な少女が、あの生き物を処理できるわけがない事を・・・。
(無理にでも、止めるべきだったか。)
実際に、この忍びの頭目である長老が思っている様に、取り返しのない事態へと動きているのであった。
=== 由太郎 ===
(はっ・・・。)
由太郎は、その異変に気が付いた。
グルルルル
(うっ・・・・。)
由太朗は野犬に囲まれていた。
野犬は襲いかかってきた。
カラダを鋭い牙が引き裂く。
あたりは血しぶきで真っ赤に染まっていた。
由太朗は一人たたずんできた。
彼も周りには、野犬の死体が転がっていた。
由太朗は食事を取っていた。
生肉だ。
由太朗は、山で食する方が肌に合っているのだ。
(ふう・・・。)
空腹を満たした由太朗は、落ち着きを取り戻した。
それとともに、怒りがこみ上げてきた。
(なんで・・・、菜々子が・・・!)
どうして菜々子は殺害されたのだろうか。
・・・、いつもまにやら、眠りについていた。
しかしそのことが、真実に近づく事と成るのであった。
===== 菜々子 =====
奈々子は、男と二人でいた
由太朗はその光景を眺めていた。
しかし異変に気がついた。
その男は、人ではなかった。
いわゆる獣だ。
正確に言うと、獣でも人でもない、異形の生き物だ。
(な、なんだ・・・!この生き物は・・。)
そして、恐れていた事が起こった。
異形の生き物は、菜々子のカラダを引き裂いた。
(いうああああ!!!)
由太朗は目が覚めた。
(ま、間違いない・・・。)
あの生き物が、菜々子を殺したのだ。
しかもそれを由太朗は目撃していたのだ。
かといって、あのような化け物に自分が勝てるとは思えない。
由太朗は、思った。
実は村人が探しているのは、あの化け物なのであろうか。
だとしたら急に戻ってきた由太朗に、警戒するのは納得がいく。
自分自身も何故村を離れたのか、よく分かっていないのだ。
「うっ!うう!!」
由太郎は急激な頭痛に襲われた。
そしてさらに思い出したのだ。
再び由太朗は、自分の建てた墓の前でいた。
親切だった旅人。
彼は当てのない由太朗に親切だった。
数日、二人で行動をともにした。
彼は杖を持っていた。
それは足下を探るためだ。
旅人は盲目だった。
しかし、彼はとても動作が俊敏だった。
それに知能も高いと察することが出来た。
しかし・・・、旅人は殺された。
思い出したのだ。
それは異形の者だった・・・。
そしてまた一つ、真実にたどり着いた。
異形の者は、菜々子のみならず旅人も殺していたのだった。
(許せん・・・。)
由太朗は、怒りにうちふるえていた。
異形を成敗する。
彼は、そう心に誓ったのだった。
かといって、自信はなかった。
人間を素手で引きちぎるような化け物に、自分一人で勝てるとは思えなかった。
しかしそれは杞憂であることが、のちに分かるのであるが。
「!!!」
ふと見ると隣に先ほどの娘が、何食わぬ顔でたっていた。
その伊手達は、くノ一のそれであった。
気配を消して接近されていたことに、由太郎は驚愕した。
「お兄さん、償ってもらうよ。」
彼女の口調は、もはや少女では無かった。
由太郎は身構えた。
しかし・・・・。
====== バシャ =======
広範囲の攻撃を由太郎は回避することができなかった。
「ふぐ、ふぐうう!!」
由太郎はのたうち回った。
マトの攻撃は、液体によるものだった。
あらかじめ彼女が用意した道具で、広範囲に飛び散るように細工してたのだ。
それにしてもマト自身が、液体を浴びていないのは流石に忍びである。
由太郎の身体の表面はただれていた。
「ふっ、ぐううう!!!」
そして容赦なくマトは短刀で由太郎に切りつけた。
「ぐへっ!」
切り裂かれ血しぶきがでる。
そして由太郎は崖から真っ逆さまに落ちた。
マトは表情を全く変えない。
それは由太郎の命が、まだ終わっていないことを暗示していた。
マトに液体をかけられ、瀕死の由太郎に身体に変化が起こる。
川で自分の姿をみた由太郎は、奈々子とエンサイを殺害したものの正体を知ってしまう。
液体の効果で、由太郎は正気を保ったまま、イギョウとして覚醒する。
由太郎は涙した。
全ての真相は、自分が知っていたのだから。
そしてその事実から、由太郎自身が目を背けていたのだから。
由太郎は背後に気配を感じた。
マトだ。
彼女は由太郎が崖から落ちた後、傍から見張っていたのだ。
そしてあえてマトは、由太郎が回復するのを待っていた。
彼女の目論見通りに事は運んだ。
由太郎は真相を知った。
そして瀕死の状態から回復したことにより、人間の心を持ったイギョウとなったのだ。
マトは由太郎に襲い掛かった。
由太郎は彼女を殺したくなかった。
しかしそうはいかない。
マトの必死の攻撃に、やむを得ず、由太郎は彼女を殺害した。
どうやらマトは、自分が死ぬのを覚悟して由太郎に戦いを挑んだのだった。
「・・・・全部アンタがやったんだ・・・・。」
由太郎に抱きかかえられたマトは、言葉を終えて行きを引き取った。
そして由太郎は再び村に戻ることにした。
全ての真相を知った自分には、現場に戻る以外に選択肢は無いのだ。
自分の家にもどった。
そこに母はいた。
母は異形の姿に驚かなかった。
「由太郎・・・・。」
「おっかあ、教えてくれ。」
母は全てを話した
===== 母の話 そして由太郎の記憶 ======
忍びの里で生まれた。
そして由太郎の母は、サワラというくノ一だった。
サワラは頭領から、薬品を投与された。
その結果、超人的な身体能力を手に入れたが、その副作用で体は崩壊に向かっていった。
共に薬を投与されていた、エンサイという少年も視力を失った。
そんな中、サワラは子供を身ごもった。
そうして生まれたのが、由太郎であった。
由太郎は、醜い姿だった。
醜いだけでなく、驚異的な戦闘能力を持っていた。
頭領は由太郎を殺害しようとした、
たとえ由太郎が自分の息子だとしても・・・・。
自分自身の命の終焉を予期していたサワラは、由太郎を自分の妹に託した。
その妹が、今の由太郎の母、サメであった。
サメは由太郎をつれて、村に落ち延びた。
異形ながらも幼い由太朗は、村人に優しくされた。
由太朗は村になじめたのだ。
友達も出来た、村の庄屋の一人娘・菜々子だ。
やがて二人は年頃になった。
ある時、二人きりの時、由太朗は菜々子に思いを伝える。
しかし、由太朗はショックを受ける。
「それは、叶えへんわ・・。」
菜々子は、困った表情をして去っていった。
その夜中、由太朗は目覚める。
由太朗は菜々子の家の寝床に行く。
目覚めて驚く菜々子。
幼いときに、自分を虐めてきた子を、由太郎が誰にも見られないときに身体を引き裂いて殺害したことを、奈々子は見ていたことを、由太郎に告白する。
「お、俺は、奈々子を助けようとして・・・。」
狼狽する由太郎。
そして彼女は、由太朗にとって絶望的な言葉を吐いた。
「バ、バケモノ・・・・・。」
その瞬間、由太朗の爪が菜々子の喉を切り裂いた。
血しぶきが飛び散る。
由太朗を制御する何かがはじけた。
由太朗は自分の怪力で、菜々子のカラダを引きちぎった。
(いうああああ!!!)
物音を聞き駆けつけた、菜々子の母が、驚愕の悲鳴を挙げていた。
由太朗は村を飛び出した。
その後旅人にでった。
盲目であったが、彼は忍びであった。
しばらく由太朗と行動を共にするも、由太朗が異形のもので有ることに気がつく。
由太朗が寝ているときに、旅人は由太朗を亡き者にしようとする。
由太朗に返り討ちにあった旅人は、カラダを引き裂かれた。
由太朗がみた異形は、自分自身だったのだ!!
「・・・・・・・!!」
目が覚めると、由太朗は拘束されていた。
周りには忍びがいた。
その中には、あの娘がいた。
「由太郎、観念してもらうよ。」
「な、なんだ・・、おっ母・・・。」
由太郎は驚愕した。
何故なら彼の母は、忍び{くノ一}の伊手達であったからだ。
やはり彼女も、くノ一 サワラの妹である。
「もうお前は、いちゃいけないんだよ。」
今の由太郎の母・サメは、彼を忍びの里に売ったのだ。
彼女は、忍び刀を舌でなめて、由太朗をまっすぐに見つめていた。
「ほう、大きくなったのだな。」
そこには頭領がいた。
由太郎は本能的に気がついた。
その老人が、自分の遺伝子上の父親であることを・・・・。
「よし。」
かつての由太郎の母・サメは忍び刀を、足元にある壺に突っ込んだ。
それは不気味な液体が忍び刀にまとわりついた。
どうやらそれは、イギョウ・由太郎を害する目的の薬品であろう。
==== ズブ =====
(!!!!!!!)
何のためらいもなくサメは忍び刀を、かつての息子である由太郎の身体を切りつけたのだ。
「おっ、かあ・・・・。」
たちまち薬品に侵された由太郎は、その醜い顔が崩れていくのを自身で感じていた。
「ぐ、ぐぶ・・・・。」
由太郎は、白目をむく。
「お、おお・・・・・。」
忍びの頭領である老人は、感嘆の声を漏らす。
何故なら・・・。
醜い姿の由太郎に、変化が起こった。
それは美しい変化であった。
彼の表面の肌は、正に可逆的に修復されているかの如くであった。
「お、おおおお・・・・。」
頭領は、その老いた顔に満面の笑みを浮かべた。
彼の研究の結果が出る瞬間だったのだ。
そして驚異的な筋力が芽生えた。
鎖が引きちぎられる音が、辺りに響いた。
拘束を解いた由太郎は、真っ先に頭領の喉笛を描ききった。
大きく血しぶきが飛び散る。
しかし忍びの頭領である老人の顔は、恍惚の表情を浮かべていた。
それは、まさに自分の願望がかなった事を、物語っていた。
そして由太郎は頭領の喉笛を引き裂きさいた。
自分の父を殺害したからか、由太郎の顔が一瞬、歪んだように見えた。
「ひ、ひい・・・。」
周りを取り囲む忍び達が、後ずさりする。
それから本当に一瞬の出来事であった。
さらに由太朗は、引きちぎり忍者達を皆殺しにした。
おっ母、のカラダも引き裂いた。
「ゆ、た、ろ・・・・。」
もう絶命したかと思った、サメから最後の声が聞こえた。
「お、かあ・・・。」
育ての母を手にかけた由太郎の眼に、流れるものがあった・・・。
そして、村に戻った。
しかし由太郎は異変に気が付いた。
村には誰もいなかった。
よくよく見ると・・・。
所々に肉片らしきものが、転がっていた。
(そうか・・・。)
由太朗は、全てを察した。
もう自分には帰るべきところが無いことを・・・・。
考えてみたら、村人は皆、由太郎自身が殺害したことを、彼は思いだしたのだった。
そして由太郎は、当てもなく歩き始めた。
今の彼の放浪は、それほど困難ではないと思われる。
何故なら彼には、美しい容姿と、獣を超える力があるのだから。
さらに由太朗は、もはや人ではない。
故に、今まで食したヒトの人数は正確に把握していない。
醜い行いを心に内に秘めて、彼は彷徨い続けるのであろう。
「う、ううう・・・・。」
少女は意識を取り戻した。
「・・・・。」
彼女は信じられないといった表情をしていた。
全身痛みはあったものの、それが致命傷でない事は少女自身に判別が付いた。
あの激しい戦闘の後で、自分は生き延びた・・・・。
(まさか、アイツはアタシを・・・・・・。)
それは奇跡だったのか、彼の故意によるものだったのか・・・・。
その真相は彼女には分からない。
しかし少女には分かっていることが一つある。
それはもう彼女には帰る場所が無い、という事なのだ。
「兄さ・・・、敵取れなくてゴメン・・・。」
悲しくも少女にはもう、流す涙は残ってはいなかった。
身も心も枯れ果てた彼女だが、しかし、その脚で立ち上がった。
そして少女はゆっくりと歩き始めた。
もう彼女の衣服は引き裂かれ、もはや裸体に近い状態であった。
それでも少女は顔を上げて、脚を前に出す。
彼女が歩む、その先は、希望への道なのか、はたまた修羅への道なのか・・・、それは恐らく神さえも分からない。
〈完〉
まだまだ稚拙な内容でしたが、今後に繋げたいです。




