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イギョウ  作者: らすく
28/33

エンサイの最後

 サワラとの別れの後、少年エンサイは何者も恨まずに強く生きた。

 彼女が亡くなる原因を作り、自分を視力を奪った忍びの里の長老も恨まなかった。

 それどころかエンサイは長老の下に着き、自身の能力の向上に精進した。

 少年はサワラの事を、自分の胸の内にしまう事に決めていたのだ。

 もう彼は、悲しんでばかりではいられない。

 このまま立ち止まることは、今は亡きサワラも望むはずもない。

 人が変わったかのように、黙々とエンサイは与えらえた任務をこなし続けた。

 それは時が流れてゆく事を、少年に忘れさせるほど夢中にさせた。

 そして気がつけば、その少年は若者となっていた。

 これまでに彼が積み重ねてきた事は、成果として表れていた。

 成長したエンサイは盲目であるにも関わらず、忍びの里でもトップクラスの実力者となっていたのだ。

 しかしその彼の努力が、彼自身を不幸にするとは、その時は知る由もなかった・・・・。

 最後の転機が訪れる・・・・。

 

 その日にエンサイは、長老から任務を任された。

 任務は、エンサイにとって只ならぬモノであることは、すぐに分かった。

 それは、ある男の殺害である・・・・。

 だがエンサイは覚悟を決めていた。

 速やかに支度を済ませ、エンサイは里を出立した。

 彼は盲目ながら、その研ぎ澄まされた感覚をもって、それほど迷いもなく山道を進んだ。

 今回の暗殺の対象者が存在すると思われる場所へと、エンサイは順調に近づいていた。

 しかし事態は目的地に到着する前に、急展開を見せた。

 道中にて、エンサイの感覚が異変を察知したのだった。

 その気配は彼にとって、とてつもなく大きなものであった。


 視覚は無いのだが、エンサイにはわかった。

 彼の前には、屈強な若者がいた。

 二人は道の傍らに、一緒に腰を落とした。

 それは彼らが、そのままお互いに通り過ぎずに、何らかの事を起こす予告なのであった。

 しかしエンサイと若者の間には、悪意は感じられなかった。

 むしろ好感に近いのではなかろうか・・・。

 言葉を交わさずとも、この二人は共鳴したのである。

 それはある同じ運命を旅する仲間である、という事に対してである・・・・。

 恐らく彼らは心中で、軽い会釈位しているのだろう・・・。

 しばらくすると、ほぼ同時に二人は立ち上がった。

 そして互いに素性を明かすこともなく、二人は共に歩みだしたのである。


 数日間エンサイと若者は、行動を共にした。

 エンサイの方が、若者の歩みについて行く形である。

 わずかに若者の歩みに迷いが生じている事を、このエンサイは気が付いていた。

 さらにエンサイの疑念は、確信に変わった。

 その男にエンサイは感じた。

 かつての自分の姉貴分と、同じ匂いがするという事を・・・・。

 そんなエンサイに対して、この若者は何も思わないのであろうか。

 だが若者は、エンサイを避けるようなことはしなかった。

 若者もまた、エンサイに対して同質の臭いを感じていたのだった。

 それ故、お互いに相手に憎悪を抱くことには達する事はなかった。

 そんな彼らに、視線を送る者たちがいた。

 

 (!!)

 その只ならぬ気配に、エンサイと若者は気が付いた。

 気配に対象者たちは、自分らの存在が判明しているのを悟り、その姿を現した。

 ===== ザザ =====

 彼らに発する言葉はない。

 だがその容姿から、彼らの正体は明白なのであった。

 いわゆる山賊である。

 この山賊達は、非常に腕の立つ輩であった。

 しかし相手が悪かった。

 エンサイと若者に、山賊達は蹴散らされた。

 実力の差を見せつけられた山賊達は、その脚を引きづりながら辛うじて逃亡した。

 このことにより二人は改めて、お互いの戦闘力を確認したのである。

 そしてエンサイの悲劇の引き金となったのである。

 戦いの姿勢に入っていた二人は、次の段階に進んだ。

 エンサイは実行に移したのである。

 この若者が自分の使命の対象であり、今がその時であるという事を・・・。


 ・・・・・若者は満身創痍で座り込んでいた。

 そして彼の傍らには、無残に引き裂かれた男の死骸が転がっていた・・・・。

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