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イギョウ  作者: らすく
20/33

サワラの変調(過去7)

 サワラの厳しさによって、自身の能力に活路を見出した少年忍者。

 エンサイは、その敏感な反応を生かし、忍びとして再び任務に就くことが叶ったである。

 手柄を欲しいままにした以前の面影は、今の少年には無かった。

 それでも彼は、堂々とした面持ちで立っている。

 現在の少年忍者は、一味も二味も違うのだ。

 姉貴分のサワラの高い戦闘力に、積極的に頼ったのだ。

 その事によりエンサイは、その年に似つかわしくない老獪さを思わせる動きをみせていたのだ。

 それは少年にあるにも関わらず、限りなく悟りに近い振る舞いであると言えた。

 正に己を水のごとく、関節を外したのかと思えるぐらいに、自在に動いたのだ。

 エンサイは己の存在を、回りに溶け込ましている・・・・。

 それはま年端もいかぬ少年にとって、それだけ過酷な事であるのか・・・・。

 到底、我々には、想像がつかないのではなかろうか。


 彼はあくまで、サワラの能力を活かす事のみに集中していた。

 今までとはうってかわって、少年は献身的に姉貴分のサワラを補佐し続けた。

 そして結果的に、二人は以前以上に任務の成果を発揮するのであった。

 そんな少年忍者に対して、これまで嫌悪感を持っていた里の人間も見方を変えていった。

 皮肉な事にエンサイは薬物の副作用で視力を失うことによって、自分の居場所を確保することに至ったのであった。

 勿論その状況に、少年忍者は安心感を覚えていたのだった。

 エンサイのみならず忍びの里の住人も、この状態がずっと続くのではないか、という希望を持っていた。

 だが再度に得られた、その安心の形も永くは継続しないのであった。

 そして実際に間もなく、その異変の兆候は現れた。

 それはそれは、非常に残酷な運命なのであった。

 

 いつもの様に任務を終えた後に、すぐさまエンサイはサワラの異変に気がついた。

 「・・・・・・。」

 「姉御?」

 少年は、彼女を見下ろす形となった。

 くノ一は膝を地に落とし、かろうじて肩で息をしていた。

 そして、その様子が決して一時的な体調不良ではないことは、少年忍者の感覚をもってしたら明らかなのであった。

 敵地において体調不良になることは、非常に危険である事は言うまでもない。

 それは死を招きい入れる事となると言っても、決して過言ではないのではないだろうか。

 しかし幸いなことに、エンサイは周囲に何者の気配は感じていなかった。

 「あ、姉御・・・・。」

 少年エンサイは、その小さな体でサワラの肩を担いだ。

 かろうじて彼女は、少年の助けを借りながら移動はできるようであった。

 この状況で、彼らが敵に襲われたら、ひとたまりもないであろう。

 だが、彼らが敵に追われる恐れはなかった。

 エンサイの見立ては、間違いが無かったのであった。

 そして少年忍者エンサイの介抱で、サワラは忍びの里に帰還できたのだった。

 「・・・有難う、エンサイ・・・。」

 息も絶え絶えになりながら、サワラは自分の弟分に例を述べたのであった。

 「あ、姉…御・・・・。」

 少年は心配したが、彼女は大事には至っていなかった。

 サワラは意識を失いエンサイに、その身を委ねていた。

 彼女の身体を支えるエンサイの姿は、とても力強いモノなのであった。

 それは自分の姉貴分に頼られる事への、充実感から由来するものなのではなかろうか。


 この日を境に、サワラは忍びの任務を外れたのであった。

 当然その事で、エンサイは戸惑った。

 それは、無理もない事である。

 その直前まで、ずっと彼女は、忍びの筆頭として活躍していた。

 それ故にサワラの戦力を差し引く事での、忍びの里のダメージは計り知れないものである。

 しかしサワラの回復を待つこともなく、彼女はくノ一の身分を退く事となったのである。

 それは忍びの里の頭領の裁量による、決定なのであった。

 勿論、そのサワラの処遇について、疑問を持つ者は多くいるのである。

 だが決して表立って、彼女の話をする訳にはいかなかった。

 それは触れてはいけない物事なのだ。

 実は、それには理由があるのだ。

 さらに、その理由そのものも触れる事は憚れない・・・・。

 そしてそのような事は、少年には理解しがたいのあった。

 

 少年は寝床についていた。

 エンサイは引き続き任務に就いていたが、組む相手はサワラではなく別の忍びであった。

 それでも少年忍者は、巧みに環境の変化に順応していた。

 たとえ組む相手がサワラでなくなっても、その研ぎ澄まされた感性で相方を支えたのである。

 彼女を失っても、エンサイは健在なのだ。

 実績を積み続けた少年忍者は、確実に忍びの里における信頼を勝ち取っていったのある。

 しかし当の本人の表情は、誠に冴えない・・・・・。

 

 

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