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イギョウ  作者: らすく
17/33

過去4

 「覚悟しろ、坊主・・・。」

 そういった主犯格の忍びは、自分の目の前で鎖鎌を振り回していた。

 後の三人も、各々が得意とするであろう武具を手に持っていた。

 「おっさん・・・。」

 この四人の忍びとは、家族同然の間柄だった。

 しかし、その関係を壊したのは、外ならぬ少年エンサイ自身だった。

 チラッとエンサイは、この忍び達の顔を一巡に見回した。

 そして少年は、再確認したのである。

 この四人とも全員の肉親を、自分が稽古の最中に殺害した事を・・・・。

 許されるはずがない・・・。

 少年エンサイは、許されない・・・・。

 自分を大切に育ててくれた人たちを、不幸のどん底に叩き落してしまったのだから・・・。

 「おっさん・・・。」

 少年は、自分の背中の忍び刀を握りしめた。

 エンサイは、どちらかが死なねば、この場が終わらないことを悟った。


 ===== ポタポタ =====

 それは赤い液体が地面に、したたり落ちる音である。

 その場には、少年が一人で立っていた。

 彼は傷を負っていたものの、致命傷では無かった。

 恐らくエンサイ自分自身の、自然治癒力で回復できるであろう。

 エンサイは四人の忍びを殺害した。

 手練れの忍び四人がかりでも、この少年を葬り去ることができなかったのだ。

 このことにより、頭領がエンサイに投与した薬品の効果により、飛躍的な戦闘力の向上が起こったことが示された。

 そして恐らく今回の少年エンサイによる殺害も、この忍びの里は不問にするであろう。

 何故なら、これは頭領の薬品の研究の過程には、必要不可欠な犠牲なのだから・・・。

 「・・・・。」

 特に呼吸を乱すこともなく少年は、この現場を去って行った。

 しかしエンサイは、ここにあった、もう一人の気配を見抜けなかったのである。

 「エンサイ・・・。」

 その若い女性は、少年の名を呟いていた。

 そして、その眼には涙が溢れていた。


 その人通りの少ない路地での戦闘の翌日・・・・。

 勿論、四人の忍び達は、里の住人に発見された。

 彼らは仲間の屍をみて、恐怖した・・・。

 その感情は、過去ではなく未来に向けてのモノだった。

 それは、無残にも葬りされれた四人に対してではない。

 仲間に対して、それは薄情だとは住人達自身は承知だ。

 しかしそれでも、そのようにしか思考ができないのだった。

 明日は我が身、であるという事を・・・・。

 そして皆の予想通りに、その殺害の下手人探しは行われなかった。


 数々の犠牲者を出しながらも、連日の稽古は続けられていた。

 忍びの里の頭領が、その様子を真剣な眼差しで眺めている。

 そして、その経過に彼は目を細めた。

 今日は、これまでにはない、取り組み合わせなのだ。

 いや、むしろ、これまで二人が殆ど取り組まなかったことが、不自然だったのかも知れない。

 最近までのエンサイは、あくまで子供であり、その年齢に相応な評価でしかなかった。

 少年エンサイに対しては、その相手は稽古をつけてあげる、といった感じだったのだ。

 しかし、ご存じの通り、その状況は一変した。

 頭領による薬物の投与により、超人的な戦闘力を手に入れたのだ。

 そして、その代償は非常に大きなものであった。

 稽古であるにも関わらず、そのエンサイの殺傷能力の余りに高さに、稽古相手の死傷が連日発生した。

 それでも頭領は方針を全く変えずに、少年エンサイに稽古を取らせた。

 そして、いつしかエンサイの相手にされる忍び達は、気が付いたのだ。

 自分たちは、頭領と少年にとっての、実験台に過ぎない事を・・・・。

 だから忍びの里の住人は、もはやエンサイと戦闘を交えようとは思わなかった。

 もう、この少年との稽古は、いわゆる公開処刑と、里の住人は認識していた。

 しかし、今回は勝手が違っていた。

 このことにより、頭領だけではなく、里の住人達も大きな興味を持ち、稽古の展開を見守っているのだった。

 

 「はあっ!!」

 威勢の良い声を上げるも、思い通りにいかない。

 今度の稽古相手は、今までの様には事は運べない。

 少年エンサイの攻撃は、全て少しのところでかわされ、致命傷を与えることは出来ない。

 エンサイが、手を抜いているわけではない。

 それがたとえ、少年が好意を寄せている相手であったとしても・・・。

 激しい動きをみせるエンサイの額に、粘度の高そうな汗がダラダラと滲む・・・。

 自分の思い通りにならないことで、苛立っている少年の姿は、その本人だけではなく周囲も戸惑わせた。

 まさか、である。

 里の住人たちは、誰しも信じられない、と言った表情である。

 そして皆、思った。

 ====== エンサイが敗北する =======

 しかい冷静な表情で一人だえ頭領は、その様子を眺めていたのであった。

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