少女に奇妙な感情を抱かせる
======= マト =======
(・・・・大丈夫だ・・・。)
少女は慎重に脚を運んでいた。
先ほどに、人にあらず・獣にあらずものに遭遇したのだから・・・。
速度を抑えて歩いていたのだが、彼女の疲弊は限界に達することとなるのである。
それは単純に体力的な要因ではない。
嫌悪感というものをはるかに凌駕する対象への、極度の緊張と恐怖による神経への負担なのであろうか。
(・・・・大丈夫・・・。)
マトは呪文のように、その言葉を呟いていた。
それは少女の意識が落ちる前の、最後の足掻きであった。
それでも彼女は混沌とした世界に、ズルズルと脚を取られ、まさに蟻地獄のように引きずり降ろされていくのだった。
落ちた先には、ただ暗闇があるだけ・・・、何もない・・・。
(はっ・・・・・。)
目が覚めたのだった。
どれくらい時間が経過したのだろうか。
しかし彼女にボンヤリとしている時間など無かった。
「・・・・!!!!」
マトは即座に、その場から逃げ出そうと試みた。
彼女の本能が、彼女の身体に命令を下すのである。
「ううっ・・・。」
しかし、それは叶わなかった。
右足に激痛が走ったのである。
たまらずマトは蹲った。
======== 由太郎 ========
「大丈夫か。」
由太郎は少女を気遣う。
彼女は右脚を負傷していたのだ。
その状態で気を失っていたところを、由太郎が発見して介抱したのである。
少女はキッと由太郎を睨みつけた。
その眼には、明らかに敵意がみなぎっていた。
それでも由太郎は動揺しなかった。
それは自分の方が、少女よりも生存能力が高いという自信から来るものであろうか。
由太郎は少女の表情を気にかけていないと言わんばかりに、彼女の右脚の状態を至近距離で確認した。
その由太郎の態度には、少女に対する性的な関心は感じられなかった。
どうやら彼は、少女の事を童女の様に扱っているのではないだろうか。
そんな由太郎の事務的とも言える彼女への振る舞いは、少女に奇妙な感情を抱かせるのであった。




