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イギョウ  作者: らすく
12/33

少女に奇妙な感情を抱かせる

 ======= マト =======

 (・・・・大丈夫だ・・・。)

 少女は慎重に脚を運んでいた。

 先ほどに、人にあらず・獣にあらずものに遭遇したのだから・・・。

 速度を抑えて歩いていたのだが、彼女の疲弊は限界に達することとなるのである。

 それは単純に体力的な要因ではない。

 嫌悪感というものをはるかに凌駕する対象への、極度の緊張と恐怖による神経への負担なのであろうか。

 (・・・・大丈夫・・・。)

 マトは呪文のように、その言葉を呟いていた。

 それは少女の意識が落ちる前の、最後の足掻きであった。

 それでも彼女は混沌とした世界に、ズルズルと脚を取られ、まさに蟻地獄のように引きずり降ろされていくのだった。

  落ちた先には、ただ暗闇があるだけ・・・、何もない・・・。

 (はっ・・・・・。)

 目が覚めたのだった。

 どれくらい時間が経過したのだろうか。

 しかし彼女にボンヤリとしている時間など無かった。

 「・・・・!!!!」

 マトは即座に、その場から逃げ出そうと試みた。

 彼女の本能が、彼女の身体に命令を下すのである。

 「ううっ・・・。」

 しかし、それは叶わなかった。

 右足に激痛が走ったのである。

 たまらずマトは蹲った。


 ======== 由太郎 ========

 「大丈夫か。」

 由太郎は少女を気遣う。

 彼女は右脚を負傷していたのだ。

 その状態で気を失っていたところを、由太郎が発見して介抱したのである。

 少女はキッと由太郎を睨みつけた。

 その眼には、明らかに敵意がみなぎっていた。

 それでも由太郎は動揺しなかった。

 それは自分の方が、少女よりも生存能力が高いという自信から来るものであろうか。

 由太郎は少女の表情を気にかけていないと言わんばかりに、彼女の右脚の状態を至近距離で確認した。

 その由太郎の態度には、少女に対する性的な関心は感じられなかった。

 どうやら彼は、少女の事を童女の様に扱っているのではないだろうか。

 そんな由太郎の事務的とも言える彼女への振る舞いは、少女に奇妙な感情を抱かせるのであった。

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