ただ純粋な殺意
その青年の名は、由太郎・・・。
彼は途方に暮れて、山中にてたたずんでいた。
その衣服はボロボロである。
そしてそれは激しい事が、怒ったのが原因ではなかろうか。
彼の傍には、一人の人間が横たわっていた。
・・・由太郎には分かっていた。
その人間がもう息絶えているということを・・・。
その遺体を見て、彼は恐怖したのであった。
その姿は、とても恐ろしいものだったのだ・・・。
(こ、これは・・・・・。)
それを見た由太郎は、言葉が出なかった。
何に恐怖の感情を抱いているのかというと、その遺体の状態である。
かろうじて顔は確認できた・・・。
先ほどまで、由太郎と共に行動していた男だ。
しかし、彼は五体満足ではない。
生前の彼は、五体満足だった。
しかし、今の死体と化した彼の姿は・・・。
四肢の全てを、引き裂かれていたのである・・・。
もう夜が明けようとしていた。
猶更、この遺体の残酷な姿が、はっきりと由太郎の目に入ってきた。
なぜこのような事に・・・・、いったい誰に襲われたのであろうか。
どう考えても彼には、これは刃物や器械の類で引き裂かれたものではないと見える。
まさに瞬間的な、そして不規則な力をもってなしえた行為である。
その正体は、いわゆる強大な腕力ではなかろうか。
この状況から、彼は一つの仮説を導き出した。
(人間ではない・・・・。
この男を殺したのは人間ではない・・・。)
しかしそれでも由太郎は、釈然としなかった。
だからと言って、それは何なのだろうか。
その殺人を犯した者の名は・・・。
思い浮かばないのである。
人間ではないとしたら、何なのだろうか。
獣であろうか・・。
熊・・・・?
いや、違うと思われる。
由太郎は考えた・・・。
もし熊であったら、なぜこの男の身体を食べないのか・・・。
熊ではないのか・・・。
いや、熊だけではない・・・・、狼・野犬・・・・その他の獣でもあり得ない。
攻撃対象が獲物であれば、必ず食すはずである。
ところがこの男の遺体は、全く肉食の獣の成した行為でないことは明白であった。
(違う・・・、獲物を狩る行為ではない。)
由太郎は思った・・・。
間違いなく、この男の攻撃の受けた状態からは、ただ純粋な殺意のみしか感じられない。




