エピローグ
あの後、手厚い? 看病のお陰か、俺はすぐに退院をした。
校舎が壊されたとの言う理由で俺たちは一足早い夏休みを迎えていた。
といっても喜んでばかりも居られない。夏休みが長い分二学期の補習が増えるらしい。
「だからこそ。今、遊ぶんだよ!」
リルムはそう言い毎日のように俺の家へと遊びに来る。
一緒にラジオを聞きながら談笑していると、スレグスのニュースが流れてきた。
今日で何回目か分からないが。
彼は死んだ。
なんでも国境に着く前に車内で魔法を暴発させて自殺したらしい。
隣国側はその責任がこちらの国にあると主張しているが、所詮敗戦国の言い分。
おそらくは裁判沙汰にもならないだろう。
この影に師匠が関与していると思ったが、そのことは胸にしまっていた。
俺が知ってもしょうがないことなのだから……
スレグスの部下の一人は今日、国内で処刑されるらしい。
隣国は引渡を命じたが、これにも応じないらしい。
国と国、それぞれの思惑で動かされる人間は所詮駒のように使い捨てられる。
以前の俺がそうであったように……しかし今の俺はもう駒ではないのだ。
学校や勉強に縛られ……自由ではないけど。
一緒に居る彼女の事を見る。
「ロイちゃん。どうしたの?」
「いや……」
この笑顔を守れた。それだけで十分だった。
そして、その翌日。
「ロイちゃん! 見て、見て! 海だよ、海!」
「そんなにはしゃぐなって……」
リルムは汽車のシートではしゃぎ回る。
「わぁ! 本当だ。綺麗――」
クーナは海に見とれているようだ。
「海なんて久しぶりだなぁ」
クライスもいつもよりどこと無く落ち着きがなかった。
「まったくみんな、はしゃぎやがって」
「だって! 四人揃っての旅なんて初めてなんだもん!」
「そうだな……」
俺はシートにもたれ掛かり窓の外に広がる海を見る。
こうしていると自分が旅をしてきた日々を思い出す。
つい半年前まではこのような日常を送るのは俺の夢でしかなかった。
平凡な日常は俺が思っていたものよりも有意義で楽しいものであった。
「ロイちゃん」
リルムが俺に顔を近づけてくる。
「なんだ?」
少し恥ずかしがりながら、俺は彼女と目線を合わせる。
「おかえり」
リルムは一言、そう言った。彼女が何を思ってそんな言葉をくれたのかは俺には分からない。
しかし――
「ただいま」
俺は自然にそう返していた。
汽車は相変わらず同じスピードで俺たちを乗せて走っていく。
この汽車と同じように俺は走り出したのだ。
日常という名のすばらしき日々へ――
はい、という訳で「まじっくじゃすてぃす」はとりあえず完結しました。
つたない文章を最後まで読んでくれた読者の方々には感謝感激であります……
一年前に書いた文章とは言えど、文字ミスが多すぎでまさに自分の黒歴史的小説になりかねない一作ですね…………
(その黒歴史の2巻目が既に半分以上出来上がっているから恐ろしい……)
それでも長編処女作として書きたいイメージはなんとか繋げられたかな――と自己満足。
今後も自己を磨きながら作品をアップしていきたいと思っているので、違う作品を見かけた方は冷やかしでもいいので足を運んでみてください。
以上、千ノ葉でした!!