第六章 涙とご褒美②
病院を出て、私は全速力で走った。
走らなきゃこの気持ちを抑え切れなかった。
(うう……ロイちゃんに気づかれたんだ……)
顔が見る見るうちに紅くなる。
「はぁはぁ……」
街の中央公園のベンチで息を整える。
ロイちゃんにキスのこと聞かれたときはなんとなく誤魔化しちゃったけど……
キスをしてしまったのは事実だ。
「うわぁ……どうしよう……」
顔がどうしてもニヤけてしまう。でもそれ以上に不安がこみ上げていた。
自分の気持ちを伝えたらロイちゃんはどんな反応をしてくれるんだろう?
ロイちゃんに私はいっつも迷惑をかけている。
だからこそ拒否されるんじゃないか、と感じていた。
自分の気持ちを言い出せば、今の関係が崩れてしまう……
ただの幼馴染の関係……今で十分心地よいのだ。
これ以上の関係を望んでも、それは自分のワガママだと思った。
「はぁ……」
ため息しか出ない。この気持ちを誰かに相談したいけど……
「クーちゃんにでも……
う~ん。でもクーちゃんはロイちゃんの妹だし……
クライスちゃんは……」
ベンチに座り、あれこれ考える。
どんな魔法の参考書でもすぐに理解できるのに
自分のこの気持ちには答えが見つけられない……
「あ~。もう、やめやめっ!
クライスちゃんと、クーちゃん。呼んでこよう!」
そう言い聞かせ、私は公園を後にした。