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第五章 絆と力④

喫茶店の中には俺たちのほかに何人もの客がいて、静かなひと時が流れていた。

リルムはテーブルに着くと、メニューを開き、即座に店員を呼び寄せた。


「俺決まってないんだけど……」

「もう、何言ってるの? 喫茶店に入ったら即決が大事なんだよ!」


というか、コイツの場合は全メニューを把握しているのだろう。

俺は店員が来る間に急いでメニューに目を通し、適当なものを頼んだ。

リルムはおごってもらえることをいいことにかなり豪華なパフェを頼みやがった。


「まったく! 少しは遠慮しろよな……」


俺はため息をつきながら、言う。


「じゃあ、今度来るときは、もう一段階レベルの低いパフェにするー」

「そうそう……っておごり前提なのかよ!」


俺はそう言うとリルムはああ言う。

まったく、いつもながら、振りまわされぱなしだな。俺。


「お客様。店内ではお静かにお願いします」

「あっ、すいません」

「あと、カップルでイチャつくのも、お止め下さい」

「えっ?」


俺はその言葉を聞いて振り返る。

そこにはウェイトレスにそぐわない格好をした人物が立っていた。

綺麗な金の長い髪。そして凍りつくような眼光。

こんな威圧的なオーラを出せる人物を俺は一人しか知らない。


「し、師匠!」

「だから、静かにしろって言っているだろうが、馬鹿者」


師匠いきなりはデコぴんを食らわせてきた。


「まあ、イチャイチャするのは、別に構わないがな」


そういって、ドカッと俺の横に座る。


「ふーん…………」


師匠はじーっとリルムの顔を見る。


ふむ。お前にはもったいない女だな」


リルムを指差し、ニヤニヤとそんな台詞をかけられた。


「あは、褒められちゃった」


当のリルムは、えへへへ、と頭をかく。

お世辞で喜べるのは彼女のいい所だろう。


「別にリルムは彼女でもなんでもないですよ」

「リルム…………ああ、なるほど」


師匠はニヤッと俺の方を見て、


「あの時の彼女か。いい感じに成長したじゃないか。手はもう出したんだろうな?」


そんなことを耳打ちされ、俺はコーヒーを吐いてしまう。


「うわっ!? ロイちゃん汚いよ」

「ごほっ、ごほっ…………し、師匠!!」

「まったく、冗談の通じないやつだ」


そういって師匠はウェイトレスさんを呼んで、台拭きを持ってきてもらった。

そして、ついでにリルムと同じレベルのパフェを頼んだ。


「これ、ロイのおごりだからな」

「えっ! ちょっと!」

「ほら、リルム君もおかわりは?」

「あっ、はい」


そういってメニューを開き、またデザートを頼む。

ううっ、神様。俺は何か悪いことをしましたか?



「で、師匠が何故、ここにいるんですか?」


俺は当初の疑問をぶつける。


「何って、ここのコーヒーは美味しいって評判だからな」


コーヒーも頼みもせずに白々しい嘘を付く人だな。


「で、目的は?」

「まったく、冗談ぐらい分かれよ」


師匠はおもむろに自分の鞄から何かを取り出す。


「これを持ってろ。有事に役に立つはずだ」


机に置かれたのは小型の通信機のようなものだった。

大きさは手のひらサイズで、戦場で使われていたものと同じだ。


「有事って…………」


俺が言う前に師匠は席を立った。


「ロイ。少ないがこづかいだ」


そういうと師匠は俺に紙幣を投げ渡す。

その額は俺たちの食事代を払っても十分にお釣りが帰ってくるぐらいの金額だ。


「あっ、ちょっと――」


そうして俺が止めるのも聞かずに、彼女は店の外へと出ていった。


「なんかすごい人だよねぇ」


さすがのリルムも圧倒されたらしい。


「なんというか、いつもあんな感じなんだよなぁ…………」


 師匠はヒントを与えてくれるが、答えを与えるようなことは決してしない人であった。

この通信機も気まぐれで置いて行ったわけではないのだろう。


「で、ロイちゃん」

「うん?」

「お小遣いもらったんだから、もう一個頼んでいいよね?」


はぁ…………やっぱりリルムの性格も師匠並みに面倒くさいな


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