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第一章 俺の悪魔光臨!①

俺は汽車に乗って、故郷に向かっていた。


汽車の中は始発駅から比べると、だいぶ静かになっている。


こんな田舎に来る人はそうそういないのだろう。

俺の乗った車両には、数名の乗客しかいない。

大荷物を持った商人風の男性。長年一緒であろう年をとった老夫婦。

子供を寝かしつける母親――様々な人が俺と同じ旅路に着いていた。


窓を開け、外を見る。

もう降りる駅が近いということもあり窓の外には懐かしい風景が広がっていた。

とは言ってもても、俺の記憶にあるのは五年前の風景なのだが――

外に広がるのは何もない牧草地。

開けた窓から春先の涼しい風が入ってくる。

その風に乗った微かな草の匂い。懐かしい……

そんな思いに、耽っていると、車内アナウンスが流れてきた。

「まもなくウッドベル、ウッドベル……」

聞き覚えがある懐かしい響きに俺の心は躍った。

帰って来たのだ、故郷に!



トランクを片手に電車を降りる。

俺の目に飛び込んで来たのは俺の記憶にはない、賑やかな街並みだった。

五年でここまでの進歩を遂げたのには、終戦が大きく関係しているのであろう。

まさか田舎のこの街でさえ、その恩恵を受けるとは思ってもみなかった。


とにかく驚いてばかりはいられない。

俺は待ち合わせ場所の中央公園へと足を進める――そうは思って、向かってみたものの……



「くそ……迷った……」

十分後、俺は道が分からなくなっていた。俗に言う迷子ってやつだ。

街並みが、かなり変わっている上に俺は重度の方向音痴だ。

考えてみれば迷うのは、ごく当然のことである。認めたくはないが……


約束の時間にはもう少しあるが、

時間内に自力で公園にたどり着けることに賭けるのはどうも分が悪いみたいだ。

ならばセカンドプランに移行するしかない。

そう思い、辺りの人の様子を伺う。こんな田舎の街だし、道を聞けば誰かしら教えてくれるだろう。


俺は聞きやすそうな人を探すために辺りをキョロキョロする。

すると、すぐにある人物が視界に入ってきた。

その人は特徴のある帽子を被った少女であった。

あの帽子は三角帽というのだろうか?

よく小説などで魔女たちが被っているというあれだ。


しかし、デザインは奇抜で、猫やら、星やらが付いていてやたらとカラフル――

そんな彼女が街中を歩いていても目立たないのは、その恰好が似合うからだろう。

彼女は俺の視線に気がついたのか、こちらを見てくる。俺は反射的に目を伏せてしまった……


それでも彼女は俺に近づいてきた。

近づいて、近づいて――

次に俺が顔を挙げたときには彼女は俺の鼻先まで顔を近づけていた。



「な、なんですか?」

あまりの異常事態に俺は動揺してしまう。

見たこともない少女の顔が、鼻先まで迫って来ているのだ。

「むむむむむ……」

彼女はマジマジと俺の顔を覗き込んでくる。そしてしばらくすると顔を離した。


俺は気付かれないように、こっそりと息を整える。

こんな少女にいきなりこんなことをされたら、だれでもドキドキしてしまうだろう。

心臓はかなり高鳴っているが、平穏を装う努力をして再び彼女の顔を見た。

 


ここでやっと気が付くのだが、彼女はかなり可愛い。

独特な帽子はともかく、顔はかなり整っていて、桃色の髪はサラサラと風に揺れている。

身長は決して高くないが、ローブに包まれた身体は、すらっとして若々しさを感じる――

って俺はおっさんか!

動揺のせいか、そんなノリツッコミを心の中でしてしまう。それ程、俺は慌てていたのだ。




「もしかして……ロイちゃん?」

彼女のセリフに俺の頭は急停止する。


今、何と言った?



ロイ……彼女の口から出た人名――

驚くことにそれは俺の名前だったのだ。


少し怪訝そうな目で、顔を覗き込む彼女の顔を見る。

「あっ!」

その瞬間、俺の脳裏ではフラッシュバックしたように記憶が溢れ出てきた。

俺は彼女のことを知っている――


「まさか、お前……リルムか?」

俺は口にした。彼女の名前を……

「うん。そうだよー」

リルムと思われる少女は笑う。間違いない、この笑顔には見覚えがある……


「久しぶりー! 元気だったー?」

俺が幼馴染であると確認すると、彼女は遠慮無しに俺の手を握って、ブンブンと上下してくる。

「ああああ! 元気、元気!」

久しぶりに握られた、柔らかい手の感触に驚き、咄嗟に手を離した。

そんな俺の気も知らずにリルムは会話を続ける。


「五年ぶりだねー。およ? ロイちゃん背伸びた?」

リルムは手を自分の頭の天辺につけ、その手の高さをそのままにして俺の身体のほうへと寄せた。

その手はちょうど俺の肩ぐらいの高さで止まる。

「まあな。さすがに五年も経てばな」

「小さい頃はチビッコロイで通ってたのにね」

彼女はそう言っていたずらっぽく笑った。

「思い出すなよ、そんなこと……」

俺は気恥ずかしくなって後ろ頭を掻いた。


確かに小さい頃は背が小さいということで、からかわれていた。

そんな時にリルムが来ると、いじめっ子に呪いを掛けたり、姑息なトラップを仕掛けたりと、逆にそれを止めるのに苦労した思い出がある。


あの頃のリルムを思い出し、俺は自分の前に立っている少女と比較する――

俺に背が高くなったと言いつつも、リルムも背が伸びている。

身体は女性らしいラインを帯びてきていて……彼女が女の子であることを印象付けている。

幼馴染のそんな成長ぶりを確認する行為がなんとなく歯痒かった。


「リルムも、かわ――変わったなぁ……」

〝可愛くなった〟と言いそうになって俺は途中で言葉を飲み込む。

さすがにそんなことを口に出すのは、恥ずかしい。

まあコイツにそんなこと言っても何も気にしないのだろうが。


「変わったってどの辺?」

「うっ……それは……」

リルムは当然の如く質問をしてくる。こう言う質問の追い打ちの厳しさは昔から変わっていない。

俺が何を言うかで悩んでいると――

「あ~っ! わかったー。あたしがあまりにも可愛くなっちゃって素直に〝可愛くなった〟、って言えないんだ!」

リルムは勝手に答えを出してしまった。

普通、自分のことを可愛いなんていえないと思うのだが……

リルムのこういう自身の持ちようにはひどく感心する。

まあ、実際可愛いから、今回の場合は何の問題もないのだが……


「いやぁ、照れちゃいますなー」

勝手に照れたり、はしゃいだりしている彼女を他所に俺は話を進めた。

「それはともかく、ちょっと待ち合わせしてるんだけど、案内してくれないか?」

「あっ、誤魔化した! ロイちゃんの口から答えを聞いてないよ!」

彼女は頬っぺたを膨らまし、俺を睨んでくる。

「誤魔化さないで、ほら。可愛いって言っちゃいなよ」

「はいはい、可愛い、可愛い」

俺は面倒臭がって、投げやりにそう言うが、

「やった!」

そう言って、彼女は本気で喜ぶ。その仕草はまるで子供。

見た目は変わっていても、こういう所は本当に変わっていない――俺はなんだか心のどこかでホッとした…… 

街は景色を変えていく――しかしリルムのように変わらないで俺を迎えてくれる人もいるのだ。

そう心の中で思い、空を見上げた。

空一面の青空が俺を祝福するかのように広がっていた――




「あのー、気分に浸ってるのはいいんだけど。待ち合わせって?」

「あっ!」

急いで時計を確認する――

何と言うことだ! 待ち合わせの時間には、残り五分しかない。

まさに大ピンチだ! 急いでリルムに説明をする。

「中央公園って、街の反対側だよ……ロイちゃん、方向音痴治ってないんだ」

「そんなこと言ってないで案内してくれ!」

呆れた声を出すリルムに催促をする。

「わかった。こっちだよ」

それに応じ、彼女は俺の手を掴み、街を疾走して行く。

「うぁっ! いきなり走り出すなっ!」

トランクを持った俺は、その速度について行くのがやっとだ。

「おい! どこ行くんだ!」

「こっちこっち!」

彼女は俺の手を取り、スピードを上げていく。

道路に入ったところで車が俺の目の前に飛び出してきた。

「うあわわあああああああ!」

間一髪のところでそれを避ける。

「馬鹿野郎! ひかれてぇのか!」


運転手のおっさんの剣幕をあげて怒る声にも動じず、

彼女は走る――

公園を突っ切り、道路を横断し――

当の俺は中央公園に着いた時には息バテバテになり、服も所々破けていた。



「ほら……時間通り着いたよ」

リルムは肩で息をしながら満足そうな笑みを漏らす。

「まったく……」

少し幼いころのことを思い出した。こうやって毎日のように彼女に振り回されていたっけ……

あれは子供の頃だけの経験だと思っていたのに、今になっても体験できるとは……

どうせならこのまま淡い思い出の中に封印しておきたかった。



とりあえず公園内を歩き、中央を目指す。

休日前の午後の時間帯とあって、公園内は子供連れの親や、学生らしき人物が何人かいる。


待ち合わせの時計塔には見覚えのある、黒髪の少女が立っていた。

少女はキョロキョロしながら、時計のパネルと辺りを交互に見ている。

明らかに誰かを待っている様子だ。


その子は俺のことを目視すると、

「おにいちゃーん」

そう叫んで、少女は小走りにこっちに駆けてきた。

「きゃっ……!」

しかし、彼女は石に躓き、バランスを崩す。俺は咄嗟に前に出て彼女の身体を受け止めた。抱き合う形になった俺たちは顔を見合せる。

「お帰り。お兄ちゃん」

「ただいま。クーナ。そそっかしい所は相変わらずだな」

俺は彼女を身体から離し、服を整えてやる。

「ありがとう」

そう言って微笑む彼女を再び見つめる。


クーナはとても大きくなっていた――まあ八歳から五歳分も年をとっているのだ。それなりに成長はするのだろう。

大きくなったといっても平均からしてみると身長はかなり低いと思うが。


小さい頃はもっと髪が短くて男の子みたいな感じだったが、髪が長い今の彼女を見ると、とてもかわいらしい女の子に見える。その雰囲気はどこか、母さんに似ていた。


「お兄ちゃん、服、ボロボロだけど、どうしたの?」

クーナは驚いたようにそう問いかける。

「あー……あいつだよ」

俺がリルムを指差したのを見て、クーナは納得したように頷いた。

「こんにちは。クーちゃん」

「こんにちは。リルムさん」

二人のレディはごく自然に挨拶を交わす。

リルムは幼い頃、俺の家にいつも遊びに来ていた。だからクーナとは必然的に知り合いだ。

まあこの様子だと、この五年間も親しい間柄だったらしい。

「クーちゃんよかったね~。お兄ちゃんに会えて」

「あ、はい」

「クーちゃんったらね。お兄ちゃんが帰ってくるんだって、大はしゃぎしてたんだよ。こんなカワイイ妹さん持って、もう。ロイちゃんって幸せ者ね!」

リルムはそう言うと俺の脇腹を小突いてくる。

「ちょっと、リルムさん!」

突然のリルムのカミングアウトにクーナは真っ赤になってリルムの身体をポコポコと叩いた。

「も~。クーちゃんの照れ屋さん」

その攻撃をかわしながら、リルムはクスクスと笑う。

「リルム、あんまり妹をいじめないでくれよ」

「いじめじゃないよ。リルム式コミュニケーションなのだ!」

「はいはい」


そんな光景を見ながら、俺はベンチに腰を降ろした。

「クーナ。今日は、ばあちゃん家で泊めてくれるって聞いたんだけど」

「うん。私も一緒に今日はそこで泊まるよ」

「あれ? 〝今日は〟、って?」

「もう、お兄ちゃん。私十三歳だよ? 魔法学校(マジックアカデミー)に通ってるって」

「ああ、そうか。あそこは全寮制だもんな」

魔法学校(マジックアカデミー)とは魔法の知識を専門に教えている学校だ。

だがこの学校は、ある程度の素質がなければ入れない。

しかし幸いなことに俺達の血族はその素質を継いでいるのであった。

「じゃあ、リルムも今日は実家に帰ろうかな?」

「何でそうなるんだ?」

「お隣さんだもの」


忘れていた……リルムの家と俺の家は隣同士だった。


だからこそ俺は彼女のターゲットとなり、日々悪行の餌食となっていた。

「じゃあ、出発しようか。ロイちゃん、迷子にならないでね」

「誰がなるかよ……」

リルムは悪戯っぽくそんなことを言って、歩き始める。

「お兄ちゃん、鞄持つよ!」

「重いぞ。無理すんな」

「大丈夫。えへへへ」

クーナは俺のトランクを持ち上げ自慢げに持ち上げてみせる。

「クーナも力持ちになったなぁ。以前はあんなに小さかったのに」

「でしょ~」


なぜかリルムが割り込んでくる。

「ロイちゃんのいない間。あたしがクーちゃんを世話してあげてたんだからね!」

「本当か?」

俺はクーナに問いかける。リルムの言うことは適当なことが多いからな。

「うん。リルムさんにはいつもお世話になってます」

「クーナの性格がひねくれなくてよかった」

「ひっど! どういう意味よー」

リルムは眉を吊り上げて俺の顔に近づいてくる。

怖くはないが、リルムの顔が顔なので目を逸らす。

「まあまあ、二人とも」

クーナの静止が効いてリルムは引き下がった。

「いつも言いなりになっていたロイちゃんが反撃をするようになった……これはいったいどういうことなの?」

彼女の妄言は放っておこう。俺だってこの五年間、鍛えられたのだ。リルム以上の厄介な性格の持ち主に……




家に着くと、さっそく晩御飯が用意される。

俺とクーナは晩御飯の支度をするためにキッチンに入っていた。

席には何故かリルムもいるのだが、そこはあえて気にしない。

「リルムさんはたまに、家にご飯食べに来るんだよ。大勢の方がご飯美味しいし」

「説明どうも。というか、俺口に出して言ったか?」

「ううん」

「そうか。それよりもリルムの暴走っぷりは治ってないみたいだな。今日も死にかけたぞ」

その話を聞いて、クーナも苦笑する。

「リルムさん、良い人なんだけどね……」

 

この様子を見るとクーナも過去に幾度となく騒動に巻き込まれた事があるみたいだ。

リルムは子供のころから無茶が絶えなかった。彼女の周りでは怪我人が多発。

彼女は何かあるごとに奇行を繰り広げていた。

ピクニックに行けば、周りのみんなを連れて森の奥に入っていき、みんなを置いて、

自分だけ無事に出てきたり、

花火をすれば、派手な方が楽しいといって魔法火薬を詰めた改造花火で、

建物を半焼させたりと、

彼女の持つ武勇伝は数知れない。


そんな彼女の被害に一番多くあったのがこの俺だ。

それでも死なない俺は不死身のロイ、とか不死鳥とか呼ばれたこともあった……気がする。


リルムの性格も成長すれば――と思っていた俺らが甘かったわけだ。

「クーちゃん、料理まだ~?」

リルムは待ちきれなくなったのか、料理を催促しに、キッチンへ来た。

「はいはい、もう少しですよ~」

クーナは軽くあしらい、料理を続ける。


すぐに晩御飯は完成。久しぶりの家の食卓に俺の心は躍る。

料理を食べ、ばあちゃんとこれまでのことや、これからのことを話した。俺は明日から魔法学校(アカデミー)に入学する手筈になっている。

 この時期の転入ということもあり、少々不安だが、何とかやっていかなければならない。



話がまとまった時点で俺はさっさと眠ることにし、自分の部屋に行った。

帰郷までの長旅で身体が疲れていたし、懸命な判断だろう。

二階に上がり、ある部屋のノブに手をかける。

部屋の中からは少し埃臭い空気が流れ、鼻孔が敏感にそれを感じとる。

部屋は俺が出ていったころのままになっていた。

まるでこの場所だけ時が止まっていた感覚に陥る。

机の上の写真立て――

そこには俺とクーナと両親が楽しそうに映っていた。

写真の中の両親は笑顔で――その笑顔が逆に俺の心を締め付けた。




「とうさん……かあさん……俺、帰って来たよ」


両親の死は幼い俺やクーナには衝撃だった。しかし、そこで立ち止まっては居られなかった。五年経ち、俺はあれから少し強くなれた。クーナも今では一人で暮らせるぐらいになっている。


だから心配しなくていいよ。


そう心の中で呟いた――


「ロイちゃん、泣いてるの?」

「いや……っておい!」

部屋の中にはいつの間にか、リルムが居た。

「お前、どっから入ってきた?」

「うん? 窓だけど?」

彼女が指差した方向には全開の窓があった。

俺の部屋は二階だが、リルムの部屋には屋根伝いで行けてしまうのだ。

この構造のせいで過去に俺はリルムに寝込みを襲われたりしたことも多々あった。

「何か用か?」

「ロイちゃんと話そうと思ってね」

リルムは遠慮なくベッドに座る。

「話すか……」

五年も会ってないのだから積もる話もある――

普通はそう言うものだろうがこの俺の五年間は思い出して、楽しいものではない。


両親が死んでから俺は師匠とともに戦地へ赴いたのだ。

死が支配する世界での思い出など、早く忘れてしまいたい……

家族にとって俺のこの五年間の話はタブーになっているが、なぜ俺が家を出たのか知らない連中にはそれが分からない。リルムも例外ではないだろう。


過去を聞かれるのはいい気がしないが聞く方に悪気はないので、俺は戦地のことをうまくはぐらかして話をするのだ。

リルムは自分の五年間のことを一方的に俺に話してきた。

ここで起こった事件や学校のこと友達のこと。

大体はどうでもいい話であったが、俺の五年間を埋めるのには丁度よかった。彼女のおかげで〝普通〟の生活がどのようであるか、少し思い出せた。



「今夜はもう遅いぞ。帰れよ」

しばらく話した後、俺は追い払うそぶりを見せ、彼女を追い出そうとする。

俺の方は眠くはないのだが、明らかにリルムは無理をして起きている。

「らいじょ~ぶだよ。ねむくない……」

と口で言っているものの、彼女の言葉は途切れ途切れだ。ついでに身体も傾いてきている。

彼女はベッドに横たわり、ついに力尽きる。

「おい、リルム。起きろ! そこは俺のベッドだぞ」

「すー……」

終わった……睡眠モードのリルムは朝まで起きない。

ベッドを占領されて、俺は途方に暮れるのであった。

「そんな恰好で寝たら風邪ひくだろうが……」


呆れながら布団を被せてやる。

というか布団を被せないと目に毒だ。

五年前は意識しなかったが、リルムはかなりの美少女なのだ。

しかも今は寝間着で薄着な上に、無防備だ。その服の隙間からは胸が見えそうである。

出るところが出て、コイツが女だってことを再認識せざるを得ない。


俺も健全な男だからな。

こういうシチュエーションになったら魔が差すことだってある……かもしれない。


「リルムのくせに……」

ぼそっと呟いて、俺は壁際に背中を付けて眠る。

戦地ではこういう寝方をよくした。

危険がなくて室内であるだけここで寝ることは、難しいことではない。


俺は目を閉じ、睡眠欲に任せ、眠りに落ちていった。


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