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第三章 雨とテストと憂鬱と②

その日の放課後から、俺とクライスは放課後、

テストに向けての勉強をすることになった。

どこでその話を聞きつけたのか、リルムとクーナも参戦。

教室でやってもいいのだが、クーナが入りにくい、

ということなので必須的に食堂のテーブルで勉強をすることになる。

「ロイちゃん。ここ、間違ってる。

これはズバババーンってこの公式を使って、ドドーンと解くの!」

あの、リルムさん。そんな擬音語ばかり使われても分からないのですが……

「クライス先輩。ここはどうやるんですか?」

「ここはねー」

クーナとクライスは順調そうだ。

クソっ、俺もクライスに教えてもらいたいぜ。

「ロイちゃん。聞いてる?」

俺の耳を引っ張り、リルムは問題集に向かわせる。

授業が終わってから食堂の閉まる時間まで三時間以上勉強をし続け、

俺は体力、精神ともに死にそうになっていた。

「ロイちゃん。一日目からそんなんで、大丈夫なの?」

リルムは俺の心配をしてくれているらしい。

彼女が心配してくれるほど疲れ切った顔をしているのだろうか……

「まあ、一週間、あのペースで勉強していけば、どうにかなるよ」

クライスはあれだけ勉強した後なのに平然として、疲れの色も見えない。

「クーナちゃんも頑張ってね」

クライスの励ましにクーナも笑顔で応える。



寮に戻ってからも俺は勉強を続けた。

さっき教えてもらったポイントを確認しながら、流れに沿って知識を頭に入れていく。

勉強が始まって三十分、

集中力が上がってきたところでノックの音により作業が中断されてしまう。

「ロイちゃーん」

扉を開けると、リルムが部屋の中に飛び込んできた。

「何か用か?」

集中力を切られ、少し不機嫌になった俺は少し冷たく言い放つが、

彼女はそんな様子に気づきもせずに笑顔で喋る。

「勉強のお手伝いしに来たんだよ~」

勉強を手伝ってくれるのはありがたい話だが、リルムの教え方には俺はついていけない。

彼女は平然のように二、三個のことを飛ばして答えを導こうとしてくるのだから。

しかし俺はその飛ばした部分さえ理解しきれていないわけで、

そこからの説明が必要になるのだ。

だからリルムが教えたやり方を俺が聞き返すという行為が繰り返された。

リルムは要点を押さえると、俺に問題集をやるように言ってきた。

部屋にペンを進める音だけが響く。いつもならば黙っていることができないリルムも、今は本を読むことに集中している。表紙からしてやたら難しい魔導書だということが予想される。


グぅぅぅぅ…………


その音で部屋の静寂は失われた。音の出所を見る。

「違うよ! お腹なんかじゃ」

リルムは顔を真っ赤にして反論してくる。いや俺は何も言ってないのだが…………

「そうか」

彼女の態度を見て、俺は聞かなかったふりをする。


グぅぅぅぅぅ…………


しばらくして、またさっきと同じ音が鳴った。

違う点と言えば今回の方が音が大きかったということだ。

さすがのリルムも顔を真っ赤にして俯いていた。

「あー。腹減ったから、飯にでもするか」

白々しく俺は言った。その言葉を聞き、リルムは嬉しそうに顔をあげる。

キッチンに向かい、冷蔵庫の具材をさっと炒め、盛り付ける。

今日は買い物をしなかったのでこの程度が限界だ。

まあご飯は炊いてあるから、腹いっぱいにはなるだろう。

俺がリビングに料理を持っていくと、リルムはすでに臨戦態勢に入って、獲物を待ち構えていた。

「いっただきまーす」

彼女は食事が許可されると同時にすごい勢いで料理に食らいついた。

余程お腹が減っていたらしい。

「美味しいー。こんな夕ご飯食べられるなら、毎日来ちゃうかも」

「それは勘弁だ」

「でも、勉強も教えられて、一石二鳥だと思うな~」

どこに二鳥があるのか分からないが、

勉強を教えてもらえるという点では俺にも利益がある。

リルムの教え方にはついていけないが、

彼女の指摘するポイントはテストでも役に立つというところだ。それを教えてもらって損はない。

「ったく……テスト終わるまでだぞ」

背に腹は代えられなのだ。だから彼女の用件を受け入れることにした。



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