御門先輩と憧憬(前)
急展開に悠がフリーズしているといきなりの割り込みに泡を食った隼人が反論する。
「何言ってるんすか!?カミくんとリベンジマッチするのは俺ですよ!!」
(いやどっちともしたくないんだけど....)
内心めんどくさいなと考えている悠であったが驚きも消えてジト目で先輩2人組の方が見るが2人は全く意に介さずに続ける。
「隼人は入部の前もやったし中学の時もよくやってたんでしょ?じゃあ僕に譲ってくれるよね」
悠は驚きが徐々に消えるにつれて、言い争っている先輩2人組の方へとジト目を向けるが2人はそんなこと意に介さず続ける。
「いや前の試合は雨で決着がついてないんすよ?
実質まだ試合中と言っても過言ではないんですよ!」
(これはもうどちらかとさっさとやっちゃった方が早いんじゃないか?)
別に今日は配信をする日では無いがゴールデンウィーク明けの1期考査に向けて早めに勉強しないと、部活の大会とbodの大会で忙しいのだ。
なのでとりあえず、
「......御門先輩早くやりましょうか」
2人の間に入ってそういうと隼人の顔は面白いくらい絶望に染まり、それとは対称的に御門の顔は喜びに満ちていた。
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「それじゃあ始めようか?」
早速コートに入って試合を始めようとしいていた2人だったが、2人の試合が決まったあと姿を消した隼人が他の先輩を引き連れて向かってきた。
「何してるんですか!?ハヤさんもう一度言いますよ何をしているんですか?」
その中には千奈や翔の姿もあり急な試合に目を白黒させていた。
「何って見定め作業のお手伝い?」
隼人曰く自分や御門は、中学で十分強いというのは知っているが、他の先輩の中には1年生のいきなりの大会出場に不満を持っている人もいるのだろう。
「まあ気にせずやろうかサーブは譲るよ」
そして御門と悠のテニス対決が始まった。
(あんまり練習はしていないけどハヤさんとやった時よりは調子戻って来たかな?)
そう思いながら手の中のテニスボールをトスすると、重心とバネをしっかりと使った動きでサーブを打つ。
唸りを上げて飛んでいくボールはしっかりサービスエリアの隅へと突き刺さるが帝は余裕綽々と返球する。
(思っていたよりスピードが早いな)
ストレートに飛んできたボールをロブで返し状況をリセットしつつ考えるのは御門の実力だ。
(おそらく俺はまだ勝てないだろうけどせめて2ゲームは取りたいな)
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そんな悠の考えとは裏腹に現在4ゲーム目ゲームカウントは3ー0御門の独壇場であった。
「やっぱり神樹くんは強いね
2つも年下の子にここまでねばられたのは初めてだよ」
その言葉の通り今までのゲームもタダであげた訳では無い。
点自体は取れるのだがゲームが取れないのだ。
そして現在40ー30
もう一点も落とすことの出来ない状況に追い詰められた悠だった。
「さすがにこのまま終わるのはな......」
小さく呟きなら悠はラケットを構えると、御門がサーブを打つ。
(先輩のプレイって技術的にももちろん強いけどそれだけなら俺の方が上かもしれないな.......)
飛んできた一般的に見れば速いが強豪校のキャプテンとしては凡庸な球を返すとボールを左右の振って悠を動かし続ける。
(今までのゲームもそうだけど気づいたら詰んでるんだよな.....)
そして今も悠は着実に負けへと近ずきつつあった。
だんだんフットワークに遅れが出てきていた。
(そういうタイプなら!)
悠は一気に前へと躍り出ると飛んできたボールを勢いよくボレーした。




