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第九十三話 海の怪物

無数(むすう)吸盤(きゅうだん)のついたタコのような足が、(みなと)にある(ふね)に巻きつき、それを破壊(はかい)していた。


港には(あか)りが()らされていたが、ただでさえ夜で()(くろ)に見える海がさらに黒く()まっているように見える。


クラーケンの体液(たいえき)なのか(すみ)なのかはよくわからないが、()れれば(どく)にでも(おか)されそうだ。


それにしてもデカい体だな。


船乗(ふなの)りが(しま)間違(まちが)えて上陸(じょうりく)し、そのまま海に引きずり込まれるように消えてしまう、といった|伝承(でんしょう)数多(かずおお)(のこ)っているのがよくわかる。


それは奴が、ガレオン(せん)やキャラック船などの大きな(せん)を、(おお)()くすほどの巨大(きょだい)な体をしていたからだ。


「あれがクラーケン……。図書館(としょかん)のDVDで(みた)た、ジャック·スパロウの映画(えいが)と同じ感じだ」


俺に(かか)えられているビクニが、いつもの造語(ぞうご)なのか妄想(もうそう)なのかよくわからないことを言っている。


それを聞くに、多少(たしょう)ながらもクラーケンのことは知っていたようだ。


知っているくせによく(おとり)になろうなんて言ったなこの女……。


「ソニック、もっと近づいてッ! じゃないとあいつを引きつけられないよッ!」


ビクニがそう(さけ)ぶとググも大きく()いた。


言っていることは理解(りかい)できるが、俺もこの海の怪物(かいぶつ)(なま)で見るのは(はじ)めてだ。


うかつに近寄(ちかよ)ったら、あのタコのような触手(しゅくしゅ)(つか)まっちまう。


ここはしばらく様子(ようす)を見たほうがよさそうだ。


「あっ!? クラーケンが(りく)に上がっちゃったよッ!」


抱えられながら(わめ)き続けるビクニと、俺の(あたま)の上で鳴き続けるググ。


(はさ)まれるように(さわ)がれるとかなりやかましかったが、そんなことを気にしている場合(ばあい)ではない。


クラーケンがこの海の国マリン·クルーシブルを破壊しようものなら、ルバートに(たの)んで船に()せてもらう話も()くなってしまう。


これは想像(そうぞう)していた以上(いじょう)にヤバそうだ。


「クソッ! 宮殿(きゅうでん)連中(れんちゅう)は何してんだよッ!? 早くしねえとクラーケンが(まち)に入っちまうぞッ!」


「だから言ったでしょ。私たちが時間を(かせ)ぎに来て正解(せいかい)じゃないの」


「こんなときに得意(とくい)な顔をしてんじゃねえッ! 少しは(だま)ってろッ!」


「あぁ~! ソニックが私に黙れって言った! 私のおかげなのに、私が考えた作戦(さくせん)のおかげなのにぃッ!」


さらに喚くビクニ。


ググはそんなビクニを見て歓喜(かんき)の鳴き声をあげている。


同調(どうちょう)したり、ビクニの(やつ)が声を(あら)げると(よろこ)んだりと……。


本当にググの気持ちはよくわからん。


「ともかくあいつを引きつけるぞ。お前は剣を(かま)えろ」


「う、うん。わかったッ!」


この女は切り()えが早くて助かる。


いや、ただ俺が()(まわ)されているだけか?


「お(ねが)い。私に(ちから)()して」


ビクニが呟くように言うと、(うで)に付いた魔道具(まどうぐ)(かがや)き始めた。


そして、それは漆黒(しっこく)の剣へと変化(へんか)してビクニの手へと(あらわ)れた。


暗黒騎士(あんこくきし)だけが(あつか)える(のろ)われた剣。


……なのだが、こいつが持っているとそんな禍々(まがまが)しさが()せるのは何故だろうか。


それに初めて見たときはナイフよりも少し長いくらいだったのが、今では海賊(かいぞく)使用(しよう)するサーベルくらいに大きさになっていた。


ビクニの騎士としての成長(せいちょう)に合わせているのか、それとも今まで吸収(きゅうしゅう)した悪意(あくい)影響(えいきょう)か。


この呪われた剣は、このまま途轍(とてつ)もなく大きくなるのだろうか。


「ソニックッ! (いそ)がないとクラーケンが街に行っちゃうッ!」


俺がそんなことを考えていると、ビクニに怒鳴(どな)られてしまった。


たしかに今はクラーケンを止めることに集中(しゅうちゅう)しないとな。


「よし! 行くぞビクニ、ググッ!」


そして、俺たちはクラーケンの目の前へと飛び()んでいった。

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