第七十七話 元通り
その後――。
気がつくと私はベットの上にいた。
体に違和感を感じてふと手足を見てみると、真っ白な包帯が巻かれている。
誰かに治療された痕だ。
「ソニックとググ……それにリムや里のみんなは……」
私はみんなのことを考えながら、体を起こすと全身に痛みが走った。
客観的に見なくても、今の私は間違いなく重症の患者。
だってちょっと動くだけですごく痛いし、なんか頭も体も包帯だらけだし、これじゃまるで死にかけのミイラ女みたいだ。
それに、なんだか頭までぼんやりしている。
そんな状態でボーと考えてみたら――。
今さらながらだけれど、かなり無理をしたもんだ。
あんな強いリムを相手にして、その後にゴーレムが出て来て、こうやって生きているだけでも奇跡だよ。
私は一人「ハハハ」と乾いた笑みを浮かべ、顔の筋肉を引き攣らせながら部屋の中をよく見てみると――。
「……あッ! ……よかった……無事だったんだね」
そこには、椅子に座ったまま眠っているソニックの姿があった。
そんな寝息をたてている彼の膝の上には、ググも気持ち良さそうに寝ていた。
ソニックとググを見て安心した私は、この部屋をさらによく見た。
どうやら私たちが寝泊まりした屋敷の部屋じゃなさそうだ。
あれだけの騒ぎだったから、もしかしたら屋敷も壊れちゃったのかも。
……よし!
とりあえずソニックとググが無事なのはわかった。
次はリムの顔が見たい。
たぶんなのだけれど。
もしリムも里のみんなも無事なら、私が誤解を解いてあげなきゃ。
全部あの大地の精霊ノーミードが、リムに無理矢理にやらしたことなんだよって。
だって実際そうだ。
ノーミードの呪縛を解いたのだってリム自身の力だし、無理やりじゃなかったら、たぶん私はリムに殺されていたと思う。
それって、リムがそんなことを望んでいないかった証拠になるよね。
ともかく早く説明しに行かなきゃ。
そして、ベットから立ち上がろうとすると、部屋の戸が開いた。
「ビクニ!? ……目が覚めたのですね!」
そこには、手で口を覆いながら両目を見開いているリムの姿があった。
彼女はすぐに私に向かって表情を戻した。
そこには、私の知っているリムの優しい笑顔があった。
そして、私と同じくらい酷い包帯でグルグル巻きの姿だったから、動いて大丈夫なのか心配になる。
「リムも無事だったんだね。よかった……」
「はいなのです」
だけど、リムのその暖かい笑顔を見ていると、不思議と安心してきた。
リムのこういうとこはリンリに似てる。
それから私はベッドから動かないように言われ、リムが運んできてくれた食事にいただいた。
その食事は、卵と(なんの卵から聞かないでおいた)たっぷり野菜が入ったお粥みたいなものだった。
いや、雑炊?
ともかくみんなが無事だったことを知った私は、急に空腹を感じたのもあってガツガツと食べ始める。
「美味しいッ! このお粥、すごく美味しいよ!」
お腹が減っていたからだけではなく、味もとても美味しい。
「ビクニのお口に合ってよかったのですよ」
ガッついて食べる私を見ながらリムはずっと微笑んでいた。
そして、そのままの顔でニッコリと口を開く。
「それにしてもその大ケガで、しかも寝起きで以前と変わらぬ食べっぷり。リムは感服しました。さすがはビクニなのです」
「その言い方だと、なんか私が食い意地が張っているみたいだからやめて……」
笑顔も戻ったけれど、褒めるところが的外れなのも戻っていたリムなのでした。
