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第七十六話 責任はとらない

「お前たちが()げ続けるつもりなら、このオモチャから先に始末(しまつ)しちゃうよ~」


人をからかうような言い方で私たちを挑発(ちょうはつ)してくるノーミード。


たとえそれが私たちを引き()せるための、白々(しらじら)しい芝居(しばい)だってわかっていても――。


リムのことを(ほう)っておけるはずないじゃない。


「……ソニック。ノーミードを止めないとリムが……」


「バカがお前は? 今の俺たちじゃあいつは(たお)せねえ。ここは今のうちにずらかるんだよ」


(つめ)たい……って怒鳴(どな)ってやりたかったけれど。


ソニックが言っていることは(ただ)しい。


今回は(とく)にそうだ。


もはや役立(やくた)たずでしかない私を(かか)えたまま、あの大地(だいち)(よろい)――。


巨大(きょだい)をゴーレムの中にいるノーミードを倒す方法(ほうほう)なんてない。


でも……それでも……リムを見捨(みす)てるなんて……絶対(ぜったい)(いや)だッ!


だけど……今の私の(ちから)じゃどうやっても(かな)うはずもない。


……いや……そんなことはなかった。


まだあいつを倒す方法は……あるッ!


「ソニックッ! あったよ! ノーミードを倒す方法が一つだけある!」


私がそう言って顔を上げると、ソニックは顔をしかめていた。


どうやら私がこれから言うことを理解(りかい)しているんだろう、(あき)らかに嫌そうな表情(ひょうじょう)だ。


だけど、私は(さけ)ぶように言う。


「私の()()ってッ! そうすればあんな(やつ)なんて楽勝(らくしょう)でしょう!」


「ダメだ」


ソニックは冷たい声で少しの()()けることなく即答(そくとう)


なんとなくはそう言われると思っていたけれど、実際(じっさい)に言われると少々(しょうしょう)落ち()む。


だけど、リムを助けるためにも(ひる)んでなんかいられない。


「なんでダメなの!? もうそれしかリムを助ける方法がないんだよ!?」


「ダメなものはダメだ!」


理由(りゆう)を話してよ! そんなダメだダメだ言われたって納得(なっとく)できない!」


「今話している時間はねえだろうッ!」


「うわ~ん! ソニックが私の言うことを聞いてくれないッ! リムが死んじゃう! 嫌だ! そんなの嫌だよッ!」


私がいくら(わめ)いてもソニックは(くび)(たて)()ってはくれなかった。


だけど、彼は大きくため(いき)をつくと――。


「……わかったよ。だがな、後悔(こうかい)するのはお前だぞ。俺は責任(せきにん)とらねえからな」


「じゃあ、やってくれるんだね! よし! では、ササッと()っちゃってください!」


そう言って私はソニックに喉元(のどもと)(さら)した。


「……お前。結構(けっこう)元気(げんき)じゃねえかよ。まあ、いいか」


ソニックはそう言うと、私の首に自分の(とが)った()を当てた。


前にも何回かあったけれど、(はだ)に口を付けられると、やはりドキドキ感を感じてしまう。


だって私、まだなんの経験(けいけん)もない中学生だよ。


男の口が自分の首を()れるなんて……そんな簡単(かんたん)()れるもんじゃない。


(いた)くしないでね」


「その言い方はやめろ……」


そして、ソニックが私の首に()みついた。


自分の体から(うる)やかに力が()けていく感覚(かんかく)(おそ)われる。


そう――。


ソニックに血を()われたときの感じ。


前のときと一緒(いっしょ)で痛みはなくて、何か心地(ここち)いい……。


あれ? でも本来(ほんらい)の力を取り(もど)しても、たしかサイレントゾーンとかいう魔法陣(まほうじん)影響(えいきょう)で魔法は使えなかったんじゃ……。


ぼんやりしていく意識(いしき)の中で――。


私はそんなことを考えていたけれど……。


でも、大丈夫(だいじょうぶ)だよね……。


私の血を吸ったソニックは精霊だって倒しちゃうんだから……。


そして、朦朧(もうろう)とする意識の中で私に見えたもの――。


それは、ゴーレムの体を(こぶし)(つらぬ)いた()の高い人物の(うし)姿(すがた)だった。

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