表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/215

第七十四話 畢竟

……なんで?


どうしてソニックとググがここに……?


私もノーミードと同じくらい(おどろ)いていた。


だって、ソニックは助けには来ないって(おこ)っていたのに……。


「あん? 誰だよお前。昼間(ひるま)吸血鬼(きゅうけつき)が出しゃばってんじゃねえッ! お前らが調子(ちょうし)()れるのは夜だろぁがッ!」


ノーミードはリムにトドメを()すのを邪魔(じゃま)されたせいで、ソニックに向かって怒鳴(どな)()らした。


だけど、ソニックは(まった)く相手にせずに、背中(せなか)に見えるコウモリの(つばさ)を広げ、(たお)れている私のところまで飛んでくる。


そして、ググは彼の頭から私の前へと()り、その顔を(こす)りつけて()いた。


幻獣(げんじゅう)の言葉はわからないけれど。


私にはググが心配(しんぱい)をしてくれているように思えて、体中が(いた)いのに(うれ)しくてつい笑ってしまう。


「泣いていたかと思えば笑ったり……ホント(いそが)しい女だな、お前は」


そんな私を見たソニックが、(あき)れた顔をしながら大きなため(いき)をついた。


「ソニック……どうしてここに……?」


私が(たず)ねると、彼はすぐに背を向けてノーミードのほうを見始めた。


「いいから(だま)って()てろよ。全く……昨日(きのう)の今日出会った(やつ)のためにそんなボロボロになりやがって……頭のおかしい奴だよ、お前は」


いつも(どお)りのソニックの乱暴(らんぼう)な言葉――。


態度(たいど)ももちろん全然(やさ)しくはないんだけれど、その言葉の中には私への心配が(たし)かに感じられた。


何よりも、文句(もんく)を言いながらも私を助けに来てくれた。


「……ソニック……来てくれて、ありがとうね」


私はソニックの背中に(つぶや)くようにお(れい)を言うと、彼は舌打(したう)ちを返してきた。


ハハハ、平常運転(へいじょううんてん)だね……。


「おいッ! アタシのことをスルーして何イチャイチャしてんだコラッ!」


無視(むし)されたノーミードは、(すさ)まじい形相(ぎょうそう)(いか)(くる)っていた。


さっき私もソニック言われたばかりだけれど。


こいつもヘラヘラしたり(おど)ってみたり(おこ)ったりと、忙しい精霊(せいれい)だなと思った。


だけど、怒り狂っていたノーミードはまた笑みを()かべる(やっぱり忙しい)。


そして両手(りょうて)(かか)げ、さっき石や岩でできた(はしら)(あやつ)ったみたいに大袈裟(おおげさ)()り始めた。


でも、それでも柱はピクリとも動かない。


「っく!? なんでッ!? なんでだよッ!?」


何度やっても動かない柱。


ノーミードは自分の両手を見ながら、まるで(ひと)(ごと)のように(わめ)()らしていた。


「まだわかんないのかよ? お前、本当に精霊か?」


それを見たソニックは、挑発的(ちょうはつてき)な態度でノーミードに声をかけた。


そして彼は、何故ノーミードが柱を操ることができないかを話し始めた。


ソニックは、昨日の夜に一人部屋から出ていったときに、(あらかじ)めこの(さと)のいくつかの場所に、ある仕掛(しか)けを(ほどこ)していたのだと言う。


「森からこの里に来るときに、一瞬(いっしゅん)だけだが(みょう)魔力(まりょく)を感じたからな。(ねん)には念を入れて魔法陣(まほうじん)仕込(しこ)んでおいたんだ」


ノーミードはソニックがいった魔法陣という言葉で、何故自分が柱を操ることができなのかを理解(りかい)したようだった。


その眉間(みけん)(しわ)()せながら、彼のことを(にら)んでいる。


だけどその後に、すぐにヘラヘラした顔をへと(もど)った。


「でもさ~お前みたいな(よわ)い魔力の吸血鬼が、高等(こうとう)魔法のサイレントゾーンを使えるなんておかしいじゃないか?」


高等魔法サイレントゾーン――。


私の知らない単語(たんご)


多分(たぶん)だけど魔法陣の名前だよね。


ノーミードみたいな精霊の(ちから)(おさ)えることができる魔法陣のことなのかな?


それか、魔法(ふう)じの魔法陣的ななにかっぽいよね。


ノーミードに訊ねられたソニックは、顔を少し(ゆが)めた。


(こた)える必要(ひつよう)なねえな。まあ、こっちも事情(じじょう)ありなんでね。それに魔法陣を引いたのは俺だが、サイレントゾーンで使った魔力は俺のものじゃない。そこにいる幻獣、ググのだ」


「それでも魔法陣を(あつか)えるなんておかしい……。一体(いったい)何もんだよお前?」


顔から笑みが消えたノーミードとは反対に、ソニックは自分の口角(こうかく)を上げる。


「ラブブラッド……その名を聞けばわかるか、精霊?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ