表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/215

第四十九話 前くらい隠せ

それから屋敷(やしき)へと(とお)された私たちは、まず今夜(ねむ)る部屋に案内(あんない)された。


「大した部屋ではないのですが。どうぞ今夜はゆっくりと(たび)(つか)れをとってくださいね」


リムは謙遜(けんそん)しているのかわからないけれど。


その部屋は私とソニック、ググ――。


二人と一匹には十分(じゅうぶん)すぎるほど(ひろ)い部屋だった。


なんでも、遠方(えんぽう)から来た客人(きゃくじん)をもてなすために作ったものなんだそうだ。


今までも地方の貴族(きぞく)王族(おうぞく)()まることがあるとか……。


そんな由緒正(ゆいしょただ)しそうなところへ、私たちなんかを寝泊(ねと)まりさせて大丈夫なんだろうかと、心配(しんぱい)になってしまう。


だって、ソニックは吸血鬼族(きゅうけつきぞく)だし――。


ググは幻獣(げんじゅう)バグだし――。


私なんかただの中学生で、しかも(いん)キャの暗黒騎士(あんこくきし)だし――。


そんな不安(ふあん)内心(ないしん)(かか)えていると、ググが部屋にあった大きなベットへと飛び()んだ。


そして、その上でピョンピョン()ねて(うれ)しそうにはしゃいでいる。


「こらっ! ダメだよググ!」


久しぶりにまともなとこで眠れるから気持ちはわかるけれど、そんなに跳ねたらベットにダメージが!?


私たちはリムのお(なさ)けで泊めてもらえるんだから、おいたはダメだよ!


私が(つか)まえようとすると、ググはその手をすり()けた。


そして、リムの(かた)に飛び()り、まるで私のことをからかうように()く。


「そんなに(よろこ)んでもらえてリムは光栄(こうえい)です」


リムはググの体を()でながら、ニッコリと微笑(ほほえ)んだ。


それを見た私は、なんだか(かしこ)まっていたことがバカらしくなって、()っていた緊張(きんちょう)(ゆる)んでいくのを感じた。


「さあさあ、そろそろお風呂(ふろ)準備(じゅんび)(ととの)った(ころ)だと思いますので、荷物(にもつ)はここへ置いてお風呂場へと(まい)りましょう」


私たちは部屋に旅の荷物を置いて、リムの後をついていった。


リムのことを信用(しんよう)していないわけじゃないけれど、一応(いちおう)お金とソリテールの指輪(ゆびわ)などの貴重品は持って移動(いどう)した((うで)に付いた魔道具(まどうぐ)(はず)れないので当然一緒)。


それから風呂場へと()くとリムは、私たちのことをこの武道家(ぶどうか)(さと)――ストロンゲスト·ロードの里(ちょう)に話に行くと言い、いなくなってしまった。


風呂場と聞いていたからもっとこじんまりしたものを想像(そうぞう)していたけど。


そこは大浴場(だいよくじょう)と言っていいくらい広い空間(くうかん)だった。


こんな大きなお風呂は、ライト王国で入った貴族(きぞく)しか入ることが(ゆる)されない豪華(ごうか)なやつ以来(いらい)だ。


「よし、じゃあ久しぶりの風呂を楽しむか」


「ちょっとソニック!? あんたも入る気ッ!?」


私の言葉を無視(むし)して、ソニックは一瞬(いっしゅん)()(ぱだか)になった。


おいおい、思春期(ししゅんき)の女の前でいきなり()ぐやつがあるか!?


「ちょっとソニック! 前をちゃんと(かく)しなさいよ!」


(あわ)てて言う私のことなどやはり気にせず、ソニックはググを頭に乗せて大きな浴槽(よくそう)へと飛び込む。


私は当然お風呂には入りたかったけれど、ここでまさかの混浴(こんよく)デビューには抵抗(ていこう)があった。


でも、よく考えたらソニックとはもう何度も一緒に寝たりしていたし――。


あとなんかウブな(やつ)だと思われるのも(しゃく)だ。


こういうことでからかうのは、むしろ私のほうのはずなのに……。


そう考えると私は、「混浴くらいなんだ!」と思い、バサッと(いきお)いよく(ふく)を脱いだ。


そして、用意(ようい)されていた大きな(ぬの)を、体に二重(にじゅう)()いて浴槽へと向かう。


「なんか……(おこ)ってない、お前……?」


ソニックは、まるでミイラのように布を巻きつけて浴槽に入った私を見て、(あき)らかにたじろいていた。


それはググも同じでソニックに同意(どうい)するかのように、()()かびながら弱々(よわよわ)しく()いている。


「別に怒ってなんかないよ! ああ~気持ちいい! 久しぶりのお風呂はやっぱり最高(さいこう)ッ!」


私はソニックたちの態度(たいど)が気に食わなくて、必要以上に声を張り上げてしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ