表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/215

第四十二話 ポイズンアントの群れ

私たちが()けつけると、グリズリーはポイズンアントの()れに(かこ)まれていた。


グリズリーの体からは血が流れていて、もうすでに数ヶ所(すうかしょ)()まれているようだった。


(どく)(おか)されてしまっているかもしれない。


早く助けてあげなきゃ。


「ビクニ! こいつらは体は(かた)いが頭を(つぶ)せば簡単(かんたん)(たお)せるぞ。頭を(ねら)え!」


コウモリの(つばさ)で飛んでいたソニックは、私にポイズンアントの弱点(じゃくてん)(さけ)びながら()っ込んでいく。


そして、空中からグリズリーの(まわ)りを(かこ)っているポイズンアントの頭に、かかと落としを()らわせた。


サイズ的に大型犬くらいあるアリが、ソニックの一撃でその場に(しず)んだ。


「すごいじゃんソニック! 夜じゃないのに!」


私が大声で()めたけど、ソニックは舌打(したう)ち返してきた。


相変(あいか)わらず素直(すなお)になれない(やつ)だ。


「いいからお前も手伝え! あと距離(きょり)をとって戦えよ。噛まれたら終わりだからな」


怒鳴(どな)りながらも的確(てきかく)なアドバイスをくれるソニック。


なんだかんだいっても(やさ)しいんだよな。


いや、私がチョロいだけか……。


「ボサッとするな! さっさと攻撃(こうげき)するか身を(まも)るかしやがれ!」


はいはい。


そんな大声出さなくても聞こえてるよ。


今さらだけれど。


これまで相手にしてきたのが幻獣(げんじゅう)バグだったり(暴走(ぼうそう)したググ)、人を宝石(ほうせき)にしちゃうような森の精霊(せいれい)だったり――。


あまりにも強敵だったためか、ポイズンアントを見ても(まった)(こわ)さを感じなかった(見た目は気持ち悪いけど)。


そうだよ。


ライト王国でバハムートが襲ってきたときほど怖いことなんてそうそうないんだ。


私だってやってやる!


暗黒騎士(あんこくきし)魔剣(まけん)両手(りょうて)(にぎ)り、体の重心(じゅうしん)意識(いしき)する。


そして、相手の頭を目掛けて()り下ろす。


……だったよね、ラヴィ(ねえ)……。


「ビクニは手だけで振り過ぎなんすよ」


「でも、剣は手に持ってるじゃん。(ほか)にどこへ力を入れるのよ?」


下半身(かはんしん)すよ、下半身。足も(こし)もしっかり使わないと、相手を倒せないっすよ」


ライト王国で――。


暴力(ぼうりょく)メイドのラヴィ·コルダストことラヴィ姉に(おし)えてもらった――。


体重(たいじゅう)をしっかりと乗せて相手を倒す剣の打ち方だ。


――お城のときはからっきしだったけど。


今のレベルアップした私ならこれくらいできる……いや、やって見せる!


「うおぉぉぉッ! お(ねが)い当たってッ!」


私は叫びながらポイズンアントの頭に剣を振り降ろす。


そして、見事(みごと)命中(めいちゅう)


その一撃により、ポイズンアントは私の目の前で(くず)れ落ちた。


「やっ……たんだ……」


私がモンスターを倒したんだ。


元世界でも()えなくて、この世界でもダメダメだった私が自分の力だけで……。


それはすごい高揚感(こうようかん)だった。


全身が(ふる)えるくらい(うれ)しかった。


たかだか一匹のアリモンスターを倒したくらいなのに、すごく心がすごくはしゃいでしまう。


「やった! やったよソニック! 私にもやれた!」


私は、自分でも我慢(がまん)できないくらい(よろこ)んでいた。


だけど、ポイズンアントは次から次へと(あらわ)れた。


明らかに私を狙っている感じだ。


「バカッ!? ジッとしてないで下がれビクニ!」


ソニックの声を聞いたときにはもう(おそ)かった。


ポイズンアントは、いつの間にか私のことを(かこ)んでいた。


何十匹というアリが、その毒を持った(きば)で私を狙っている。


油断(ゆだん)していた?


いや、(ちが)う。


私は(わす)れていたんだ。


ここはファンタジーじゃなくて現実(げんじつ)なんだ。


気を()けば簡単(かんたん)に死んじゃうような世界だったんだ。


このままじゃ私……。


「待ってろビクニ! 今行くッ!」


ソニックが翼を広げて向かって来てくれたけど。


もう間に合いそうにない。


私……ここで死んじゃうの?


(ばあ)ちゃんにも、リンリにも会えないまま。


ここで殺されるの?


そんなのイヤだよッ!


私は(ふたた)び剣を(かま)え、目の前の何匹を倒したけど。


それでも全く(ひる)まずにポイズンアントの群れは襲い掛かってくる。


「クソッ! 間に合わねえ!?」


ソニックの叫び声が聞こえる。


もうダメだと思いながらも死ぬ覚悟(かくご)なんか決まらず、怖くて両目を(つぶ)ってしまった私だったけど。


何が起きたのか、急に大きな音が鳴った。


そして目を開けると、(まわ)りを(かこ)んでいたアントたちが()き飛ばされていた。


「……ケガはなさそうですね。よかったのです」


女の子の声が聞こえる。


私が声のするほうを見てみると――。


そこにはノースリーブ姿にフードを(かぶ)った女の子が、ニッコリと微笑(ほほえ)んで立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ