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第三十話 この木なんの木

私はソリテールに手を引かれ、村を案内(あんない)されながら(いろ)んな話を聞いた。


村の人口(じんこう)は四十人くらいで、食べものは森にある果物(くだもの)やキノコ(るい)、あと川で取れる魚がメインみたい。


今日の(ばん)(はん)に、早速(さっそく)私たちへ村自慢(じまん)()き魚を振舞(ふるま)ってくれると言ってくれた。


あとソリテールがまだ(あか)(ぼう)だったとき――。


森に()てられていたところを、この村の人たちに(ひろ)われて(そだ)ててもらったみたい。


たしかに道行く村人たちを見ると、みんな男しかいないし、それになんか体中に(ふる)(きず)(のこ)っている人ばかりで、どこか物騒(ぶっそう)な感じがする。


だけどまあ、皆さんちゃんと挨拶(あいさつ)はしてくれるし、とても愛嬌(あいきょう)があってずっと笑顔だけどね。


いつも仏頂面(ぶっちょうづら)のソニックの(やつ)に、この人たちの(つめ)(あか)(せん)じて飲ませてやりたいくらいよ。


「姉さん、ビクニ姉さん。これがさっき話したこの村を守ってくれている精霊(せいれい)の木だよ」


村の中心にやってきた私たちの目の前には、巨大(きょだい)樹木(じゅもく)が立っていた。


さっきソリテールから聞いた話によると、この巨樹(きょじゅ)宿(やど)っている精霊のおかげで結界(けっかい)()られ、モンスターや狂暴(きょうぼう)な動物たちが侵入(しんにゅう)するのを(ふせ)いでくれているみたい。


「どうビクニお姉さん? すごい大きいでしょ?」


「う、うん……たしかにね」


この見る者を威圧(いあつ)する重量感(じゅうりょうかん)


それと、その圧倒的(あっとうてき)存在感(そんざいかん)迫力(はくりょく)


私はこの巨大な樹木を見て、お婆ちゃんがよく口ずさんでいた歌を思い出していた。


こ~の木なんの木~気になる木~名前も知らない気ですから~ってやつ。


なんか昔のコマーシャルソングって言っていたけど、曲とか関係(かんけい)なく私はお婆ちゃんの歌が大好きだったな。


それにしても、一本で山のようなって言ったら言い()ぎだけど……。


そして、村にとっては(まも)(がみ)みたいな木なんだろうけど……。


どうも私はこの巨大な樹木が、なんか(こわ)いものに感じる。


「キュウ~キュウ~!」


「うん? どうしたのググ?」


私の(かた)に乗っているググが、急に()えるような()き声を出し始めた。


私はさらによく樹木を見てみると、その表面にはたくさんのキレイな宝石(ほうせき)()まっていた。


ググがなんで吠えるのかわからないけど、きっと私と同じでこの巨大な樹木が好きじゃないんだろうな。


「ねえねえ、ビクニお姉さん。もう日が()れちゃったし、一度お(うち)(もど)ろう」


「う、うん。そうだね」


「もちろん、ご飯はあたしが作るからね」


手を引いていたソリテールが、今度は私の体に抱きついてきた。


普段(ふだん)の私だったら、「いちいちくっつくな」と言いたいところだけれども。


ソリテールには、なんか(いや)な感じがしない。


人見知(ひとみし)り私がこんな短時間でこう思えるのは、なかなかあることじゃないのに。


きっとソリテールの人懐(ひとなつ)っこいところのせいかな。


それと、もし私に(いもうと)がいたらこんな感じだったのかな。


いや、きっと私に()て部屋から出ないタイプだったに(ちが)いないから、絶対(ぜったい)にソリテールみたいにはならないか……。


「ほら~早く~早くだよ、ビクニお姉さん!」


私の背中(せなか)を押しながら(うれ)しそうにしているソリテール。


この子は本当に可愛(かわい)い。


子供が苦手(にがて)な(正確(せいかく)には他人が苦手な)私でも、素直(すなお)にそう思える。


「よ、よし! 私も料理、手伝っちゃうよ!」


「ビクニお姉さんも料理できるんだね! じゃあ、一緒に作ろう!」


「いや、ごめんなさい……。ホント言うと私……実は料理したことないんだ……でも、頑張(がんば)ってソリテールの手伝いするよ」


「うん! 誰かとご飯作るのは(ひさ)しぶりだからすっごく楽しみっ!」


料理なんて今まで作りたいと思ったことは、ただの一度もなかったけれども。


小さいソリテールがやってくれるんだから、私だって頑張らなきゃ!


そのときの私は完全にソニックのことを(わす)れていて、ただソリテールの手伝いをすることしか頭になかった。

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