表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/215

第二十五話 察することができる女

ソニックを見つけることができた私は、ラビィ姉と一緒に城へと(もど)った。


正確(せいかく)には、私から逃げるソニックをラビィ姉が()(つか)まえてくれたわけなのだけれども……まあ、結果(けっか)オーライということで。


それから、目を()ましたソニックをライト王の前へと連れて行った。


ライト王はソニックを犯人(はんにん)(あつか)いしたのことを(あやま)り、城の兵士やもちろんラビィ姉も彼に頭を下げた。


()びのしるしにとライト王は、ソニックにいつまでもこの国――ライト王国に()てくれと伝え、豪華(ごうか)な食事を用意してくれた。


それでも彼は不機嫌(ふきげん)なままだったけど。


食事は大広間でみんなで食べようとなったのだけれども、ソニックがそれを拒否(きょひ)したので、彼に(あた)えられた王宮(おうきゅう)内にある部屋に(はこ)ばれることとなった。


運ばれてきた食事は、私がいつも食べている野菜スープとパン、チーズだけではなく、なんと肉料理も出された。


このライト王国では、肉や魚は特別な日じゃないと食べないと前に聞いていたけど、出された料理を見れば、お(じい)ちゃんもといライト王のソニックに対しての気持ちがよくわかる。


何の肉か運んでくれた女の人に訊いてみたら、(ひつじ)(ぶた)(にわとり)の三種()り合わせみたい。


「うわぁ~それにしても美味(おい)しそうだね」


「ふん」


ソニックは「なんでお前がここにいるんだ?」と言いたそうな顔をしながら、出された食事を食べ始めた。


それをちゃんと確認(かくにん)した私も、早速(さっそく)目の前に出された料理に手をつける。


「いただきます! うん! これマジでうまいよ! いや~やっぱり肉だね。少し薄味(うすあじ)だけど、とってもうま~い!」


お腹が()っていた私は、まず肉料理を(いきおい)いよくがっついていたけど、ソニックはナイフとフォークで肉やパン、チーズを切り分け、丁寧(ていねい)に口へ運んでいた。


その姿は、なんかイイとこのお(ぼっ)ちゃんって感じだ。


ひょっとしたらソニックって貴族出身(きぞくしゅっしん)とかなのかな。


たしかに吸血鬼(きゅうけつき)って、高貴(こうき)というか、他のモンスターと(くら)べるとお金持ちのイメージがあるもんね。


……もしかして、お家が没落(ぼつらく)してしまい、それで食べていくために(ぬす)みを!?


「おい、なに人のことをじっと見てんだよ」


私に目を向け、不可解(ふかかい)な顔をしているソニック。


私は気がついてしまった。


(さっ)してしまった。


「……あなたって本当は苦労人(くろうにん)だったのね。私と同い年くらいなのに大変だったんだ」


「はあ? なに言ってんだお前?」


「もう大丈夫だから。ライト王のおかげでもう食べることに(こま)ることはないから」


……うんうん。


言いたくないこと、知られたくないことは誰にだってあるよね。


ましてや、元上流階級じょうりゅうかいきゅうならプライドも高くて当然。


私だって、元の世界でリンリしか友達がいないとか、家が貧乏(びんぼう)だとか、体育の成績(せいせき)だけ極端(きょくたん)に悪いとか知られたくないもの。


それならば、ここで私がとるべき態度(たいど)は――。


「全部わかってるから。言いたくないことは言わなくていいよ。こう見えても私はデリカシーの()けた行為(こうい)には気を付けてるし、けして野暮(やぼ)な女じゃないから」


「全部わかってるってお前……。なんか妄想(もうそう)っていうか、なにか一人で勘違(かんちが)いしてないか?」


……わかってる、わかってるよ。


両腕(りょううで)を組んでコクコク(うなづ)く私を見たソニックは(あき)れている様子だったけど。


私は、そんな君の「何言ってんだお前?」という(しん)(せま)った演技(えんぎ)も受け入れようではないか。


そんな私たちの(そば)で、小さな容器(ようき)入ったミルクをペロペロと美味しそうに()めるバグが()いた。


どうやらバグも、私と同じこと考えているに(ちが)いない。


うんうん、バグも私と同じだ。


繊細(せんさい)な者には人の(いた)みがわかってしまうものなのだよ。


「くぅ~自分の才能(さいのう)(こわ)いわ~」


「完全に自分の世界に入っていやがるな……。お前……友達いないだろ……」


そんな中で私たちが食事を続けていると、部屋にコンコンコンとノックの音が聞こえてきた。


「お~い、吸血鬼族の少年。ビクニはそこにいるっすか? 自分の部屋にいなかったんすよ」


声と(しゃべ)り方からするにラビィ姉だ。


ソニックがドア越しに私がいることを伝え、そしてラビィ姉へ部屋に入ってきていいと言った。


そしてラビィ姉が私を捜していた理由は――。


「やっぱりここにいたんすね、ビクニ」


「うん。だけど、一体どうしたの? ご飯ならここで食べてるからいらないよ」


「実は大賢者(けんじゃ)メルヘン様がたった今王宮に戻られたっす」


リンリと一緒に(たび)へ出たメルヘン。


彼が帰ってきたことを伝えるためだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ