表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/215

第百八十二話 人間の限界

リムはライト王国での魔法修行(しゅぎょう)甲斐(かい)もあり、ビクニたちと出会った(ころ)よりは魔力が上がっていた。


だが、それでも王国の宮廷魔術師(きゅうていまじゅつし)にも(およ)ばない(ひど)微弱(びじゃく)なものだ。


武術(ぶじゅつ)才能(さいのう)ならば()(あま)るほどある彼女だが、魔術の才能はないに(ひと)しかった。


だが、(おさな)い頃から大魔導士(だいまどうし)(あこが)れる彼女は、それでも(あきら)めなかった。


父や里の者の目を(ぬす)んでは一人努力(どりょく)を続けていた。


その結果(けっか)――。


リムは賢者(けんじゃ)しかなしえない、魔法を同時(どうじ)(となえ)えるという高等技術(こうとうぎじゅつ)を身に付ける。


さらに攻撃魔法も回復(かいふく)補助系(ほじょけい)の魔法も使いこなす。


憧れだけではなく、両親(りょうしん)教育(きょういく)もあったのだろう。


リムは誰よりも努力家(どりょくか)だった。


だが、それでも――。


ライト王国で一から魔法を(まな)び直しても――。


一日に五回しか魔法を使えない魔力量(まりょくりょう)であることに変わりはない。


そして、その効果(こうか)威力(いりょく)も常人が唱える魔法よりも(ひく)い。


「その程度(ていど)の魔力で大魔導士を名乗(なの)るのか? (まった)く笑わせる。笑わせてくれるな、リム·チャイグリッシュ!」


ワルキューレは(ふたた)(ほのお)(いかづち)の同時攻撃を開始(かいし)した。


()けようと()け回るリムだったが、先ほどと同じく逃げきれず。


再び炎に()らえられてしまう。


「ブリザードブレス!」


リムはさっきと同じように(こおり)魔法で相殺(そうさい)


だが、それは当然ワルキューレに読まれていた行動(こうどう)だった。


ワルキューレは一瞬(いっしゅん)間合(まあ)いを()め、聖剣(せいけん)――“女神の慈悲(じひ)”でリムへと()りかかる。


その動きに対応(たいおう)できなかったリムは、剣身(けんしん)にびっしりと文字(もじ)が書き込まれている()によってその体を切り()かれる。


リムは苦悶(くもん)表情(ひょうじょう)()かべながらも、素早(すばや)後方回転(こうほうかいてん)をして距離(きょり)を取った。


しかし、ワルキューレの猛攻(もうこう)は止まらない。


下がれば炎と稲妻(いなづま)(おそ)()かり、近距離(きんきょり)ではそれらを避けた瞬間(しゅんかん)を狙われる。


何度(なんど)もリムの体を斬ったワルキューレは、致命傷(ちめいしょう)()い続けているはずの彼女へ()いかける。


「一つ聞かせろ。貴様(きさま)……本当に人間か?」


ワルキューレは、いくらダメージを(あた)えても動き続けるリムのことを不可解(ふかかい)を思っていた。


人間は全種族(しゅぞく)の中でも、その耐久力(たいきゅうりょく)最弱(さいじゃく)


ましてやこんな体の小さな少女が、どうして深手(ふかで)を受け続けて動けるのか?


面白(おもし)くないといった顔をするワルキューレ。


だがその(なぞ)は、右手で(きず)を押さえている彼女の姿(すがた)を見て()けた。


「なるほどな。その不死身(ふじみ)ぶりは、攻撃を受けながらも回復魔法(ヒール)を自分にかけ続けていたからか」


謎が解けたワルキューレはクスクスと笑うと、再びリムに(たず)ねる。


「だが、それでもどこまで持つかな? そろそろ貴様の魔力量も(そこ)をつくのだろう?」


気付かれている。


実際にリムが魔法を唱えることのできる回数は、あと一度だけだった。


しかしたった一度では炎を相殺できてもそこで魔力がつき、もう回復魔法で傷を(いや)すことはできなくなる。


「やはり図星(ずぼし)か? 所詮(しょせん)は人間。いくら強くともそこが限界(げんかい)なのだ。女神様の使いである私に勝てるはずがない」


リムの表情から(さっ)したワルキューレは、(うれ)しそうに微笑(ほほえ)んでいる。


もう戦いの終わりが見えているのだ。


だが、それでもリムは考える。


どうする?


どうすればこの状況(じょうきょう)を変えられる?


――と、彼女は(あきら)めずに頭を回転させ続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ