第百六十六話 再会
――数日前。
ソニックが猫の獣人トロイアと共に武道家の里ストロンゲスト·ロードにたどり着いたとき――。
彼はそこで、よく知っている面々と顔を合わせた。
ライト王国の暴力メイドであるラヴィ·コルダスト。
ストロンゲスト·ロードの大魔導士を目指す武道家リム·チャイグリッシュ。
海の国マリン·クルーシブルの吟遊騎士ルバート・フォルテッシや、彼につき従うダークエルフのイルソーレと人狼のラルーナ。
さらに、まだ旅に出たばかりの頃に出会った――。
頼りなさそうな冒険者リョウタと、その相棒で、着地もまともにできないのに飛翔したがる竜騎士レヴィ·コルダストなど――。
ビクニがいたらまるで同窓会とでも言いそうな――これまでの彼らの道で出会った者たちである。
ソニックはここへ来れば誰かしらには会えると思っていたのだが、まさかこれほど知っている者がそろっているとは思ってもみなかった。
「お前も無事だったんだな」
「よかったのですよ」
レヴィとリムがソニックの顔を見て、別れてからずっと気にしていたことを伝えた。
一方トロイアのほうはラルーナに連れて行かれ、互い何か言い合いながらも嬉しそうに話している。
それからレヴィとリムは、ソニックにビクニはどうしたのかを訊ねた。
「まず……こっちのことを聞かせてくれ」
訊ねられたソニックは反対に訊き返した。
そんなソニックの態度に、レヴィとリムは少し不満そうな顔をしたが、ラヴィが彼女たちに代わって現在の状況を説明した。
突然現れた聖騎士リンリとバハムートによって、愚者の大地からこちら側にある国の多くは制圧された。
それから聖騎士は姿を消し、残されたバハムートはライト王国周辺をうろつき回っていたようだ。
だが、ラヴィたちはなんとかバハムートを倒すことに成功したと言う。
その話を聞いたソニックは驚愕した。
何故ならばバハムートは幻獣の中でも最強を誇るからだ。
今まで何人もの屈強な吸血鬼族が挑んでも勝てなかった幻獣を――。
たかが数人の人間と亜人で倒したのかと、両目を大きく開いている。
「奴は神を超える力でないと倒せないと、親父が言っていたんだがな」
ソニックの父親は吸血鬼族の王――ラヴブラット。
今は亡き父の顔を思い出しながら、ソニックはそう呟いた。
「神を超える力か……。もしかしたら、あいつにはそのぐらいの力があるのかもしれないな」
レヴィがそう言葉を返すと、突然顔を赤らめる。
そして、どうやってバハムートを倒したのかを話は始めた。
ラヴィ、ルバート、イルソーレ、ラルーナに動きを止めてもらい、リョウタと自分――レヴィをリムに蹴りあげてもらい、さらに聖なる波動のを放って、その勢いでバハムートの頭上へと跳躍。
そしてリョウタの持つ魔力をレヴィの槍へと移し、バハムートを貫いて仕留めた。
「神……ああ、神をも超える私たちの絆が……愛が……伝説の幻獣を打ち倒したのだな」
レヴィは何故か照れながら、意味不明な言葉を続けていた。
その場にいた全員が、興奮気味の彼女を見て呆れている。
「ああ、だがこれは紛れもない事実……。そんな神を超えてしまうなんて私は……私は……私はッ!」
「おい、飛ぶなよ」
リョウタは、今にも跳躍しそうなレヴィを止める。
すると、彼女は大慌てで両手を振り始めた。
まるでそんなつもりは一切ないと言いたげに。
「な、なにを言うのだリョウタ!? 私がいつ飛ぼうとした!?」
「今だよ。てゆ―か、いつもそうじゃねえか」
「お、お前という奴はいつだって私のことをッ、くぅぅぅん~!」
そして、リョウタに止められたレヴィはさらに興奮し、その身を悶えさせていた。
それを見た全員が再び呆れていたが、誰もが笑みも浮かべている。
「で、あれは放っておいて、ビクニことを聞きたいんすけど」
「そうなのです。早く教えてください!」
興奮し出したレヴィの影響で、周りが騒がしくなっている中――。
ラヴィとリムは、ソニックからビクニに起きたことを聞いて言葉を失うのであった。




