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第百六十一話 海に浮かび、そして揺られながら

剣身(けんしん)にびっしりと文字が書き込まれているシンプルなロングソード――。


ソニックの体を(つらぬ)いたのは、ぼくらを追いかけて来ていた戦乙女(いくさおとめ)ワルキューレだった。


「て、てめぇ……」


(あば)れるのに集中(しゅうちゅう)()ぎて周囲(しゅうい)への警戒(けいかい)(おこた)ったな。(まった)くもって怠惰(たいだ)だ」


ワルキューレは聖騎士(せいきし)の少女と同じように、その体から灰色(はいいろ)魔力(まりょく)(はな)ちながら(ちゅう)へと()いていた。


そして、不気味(ぶきみ)な笑みを浮かべながら、ソニックの体へと()()した剣――“女神(めがみ)慈悲(じひ)”を一気(いっき)に引き()く。


体からは(いきお)いよく血が()き出して、(そば)にいるワルキューレの灰色の甲冑(かっちゅ)を赤く()め、彼女はそんなソニックを海へと()り落とす。


海に浮かんでいたぼくとビクニの前へと落ちてきたソニックは、まだ(いき)はあるようだったけど、もう戦えそうになかった。


今は夜じゃない。


吸血鬼族(きゅうけつきぞく)能力(のうりょく)――自己再生(じこさいせい)()が出ている時間では効果(こうか)がほとんど(のぞ)めないんだ。


「それにしてもよくここにいてくれた。()同士(どうし)リンリよ」


ぼくらのちょうど真上(まうえ)では、血塗(ちまみ)れになった剣を()って、その血を(はら)ったワルキューレが聖騎士の少女に声をかけていた。


(きゅう)戦闘(せんとう)になっちゃったから考えもしなかったけど。


やっぱりこの聖騎士の少女がビクニの(おさな)なじみ――晴巻(はれまき)倫理(りんり)だったんだ。


ソニックのお父さんである吸血鬼族の王さまラヴブラッド王を殺して、世界を平和(へいわ)にした勇者(ゆうしゃ)――。


だけど、ぼくがビクニやラヴィ、ライト王や王国の人たちから聞いていた子とはずいぶんと印象(いんしょう)がちがう。


聖騎士リンリは、誰とでも打ち()けちゃう(あか)るい性格(せいかく)で、いつも笑顔を()やさないサンサンとした太陽(たいよう)のような顔した子だって聞いていたのに……。


今の彼女はまるで人形(にんぎょう)のように生気(せいき)のない顔をしているよ。


一体(いったい)なにがあったんだろう。


だけど、今はそんなことよりも早くこの場から逃げないと!


予定(よてい)していた任務(にんむ)完了(かんりょう)した。その後、管理聖堂(かんりせいどう)パノプティコンから連絡(れんらく)が入り、すぐに行動(こうどう)(うつ)っただけ」


「ほう。ではライト王国の制圧(せいあつ)報告通(ほうこくどお)完了(かんりょう)ということだな」


ぼくは気を(うしな)っているビクニに何度(なんど)も大きく()いて起こそうとしているとき。


ぼくらの真上では、ワルキューレとリンリは落ち着いた様子(ようす)で話をしていた。


彼女たちはまだぼくらを完全にたちはらえたわけでもないのに、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)会話(かいわ)を続けている。


その姿(すがた)は、もう自分たちの仕事(しごと)とは終わったと言わんばかりだ。


「そういえばバハムートの姿が見えんが、(やつ)はどうしている? 自力(じりき)で飛んで来るよりも、奴の背中(せなか)()ったほうが魔力(まりょく)無駄(むだ)にせずに()んだだろうに」


「バハムートには排除(はいじょ)(そこ)ねた人間や亜人(あじん)たちの始末(しまつ)(たの)んでいる。そのため、ここにはいない」


「そうか。では、我々(われわれ)があちらへ到着(とうちゃく)する(ころ)には、もう誰も生き(のこ)ってはいないかもしれんな」


ワルキューレはリンリの話を聞くと、高笑(たかわら)いを始めた。


彼女の(ひく)い笑い声が、ぼくらが今いる広い海の(なみ)の音をかき消すように(ひび)いていた。


そんなワルキューレとは対照的(たいしょうてき)に、リンリのほうは相変(あいか)わらず無表情(むひょうじょう)のまま、ただぼんやりと宙に浮いているだけだった。


「さてと、あとは吸血鬼に(とど)めを刺し、暗黒騎士(あんこくきし)を連れて帰るだけだな」


了解(りょうかい)(つぎ)任務(にんむ)実行(じっこう)する」

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