表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/215

第百五十三話 禁忌を破った王子

そう言ったソニックは、とても深刻(しんこく)な顔をしていた。


なに、なんなの?


ビクニが生まれつきのハーフヴァンパイアじゃなくて人間だったことがそんなに問題(もんだい)なの?


小首(こくび)(かしげ)げているぼくの目の前では、ヴァイブレが驚愕(きょうがく)表情(ひょうじょう)をしていた。


「人間……ですと……ッ!? ソニック王子ッ!? まさか人間だとわかっていながら(ちぎ)りを(むす)んだのですかッ!?」


そして、今までの(おだ)やかな彼とは思えないほど声を(あら)げてソニックに言葉をぶつけた。


ぼくがヴァイブレの(そば)疑問(ぎもん)()じった鳴き声を出すと、彼は(われ)に返ったのか(もと)(やさ)しい顔に(もど)る。


「……失礼(しつれい)、少し取り(みだ)しました。ですが、ソニック王子……。それは吸血鬼族(きゅうけつきぞく)禁忌(きんき)(やぶ)ることですぞ」


普段(ふだん)のヴァイブレに戻ったのはいいけど、なんだかソニックを()めているのは変わらない。


やっぱりビクニが人間だったということが問題だったみたい。


そんなのどうでもいいことじゃないか。


人間だろうが()人だろうが幻獣(げんじゅう)だろうが、ぼくらは仲良(なかよ)しなんだ。


それなのに、どうしてビクニが人間だったくらいでそんな顔をするんだよ。


「ああ……わかっている……」


ソニックはそんなヴァイブレに(たい)して、とても(もう)(わけ)なさそうな顔を向けていた。


ぼくはそんな二人に向かって()(わめ)いた。


それを見たヴァイブレは、「ぼくにもちゃんと説明(せつめい)してほしい」と鳴いている思ったのか、(しず)かに話を始める。


吸血鬼族にとって人間はただの食料(しょくりょう)であり、ともすれば天敵(てんてき)


基本的(きほんてき)には、けして仲良くできない種族同士(しゅぞくどうし)なんだそうだ。


それもあって人間は吸血鬼族を(おそ)れ、警戒(けいかい)し、ときには(ほろ)ぼそうとした。


そして二つの種族には、けして消えない遺恨(いこん)(のこ)り続けているみたい。


そういえば、ライト王国にいた暴力(ぼうりょく)メイドの……ラヴィだっけ?


ビクニに聞いた話だと、彼女はソニックと初めて会ったときに、有無(うむ)を言わさず殺そうとしたらしいけど。


もしビクニが人間のままヴァイブレに会っていたら、彼もラヴィと同じことをしたのかな?


「それまで……(まった)くなかったというわけではありませんが……。王族(おうぞく)が人間と契り合ったのは初めてのことです……」


長い年月(ねんげつ)の中、興味本位(きょうみほんい)で人間と子どもを作ったり、血を()って奴隷(どれい)にした吸血鬼もいたみたいだけど。


ソニックみたいな地位(ちい)の高い吸血鬼が、人間をヴァンパイアに変えたことはなかったみたい。


ヴァイブレはさらに言葉を続けた。


それでもまだ奴隷(どれい)――いや、自分の手駒(てごま)として人間を――ビクニと契り合ったのなら理解(りかい)できる。


だけど、ソニックはビクニを吸血してもその意思(いし)(うば)わず、完全に同等(どうとう)の契りを(かわ)わしていると、自分の顔を手で(おお)いながら(うめ)いていた。


「なぜです……なぜなのですソニック王子……。たかが人間の小娘(こむすめ)(ごと)きに……」


ヴァイブレはビクニのことを見てから、ずっと婚約者(こんやくしゃ)と言って(よろこ)んでいたのに。


今はまるで別人(べつじん)にでもなってしまったみたいな言い方だ。


(ねむ)っているビクニのことを見て、(うと)ましそうな視線(しせん)を送っている。


そんな……(ひど)いよぉ。


ビクニが元は人間だったってだけで、そんなに態度(たいど)が変わるなんて……。


いくらなんでもあんまりだ。


ぼくがそんなヴァイブレに鳴き(わめ)くと、ソニックは手をそっと出して止めてきた。


ヴァイブレを()めないでやってくれ――。


ぼくには無言(むごん)のまま手を出してきたソニックが、そう言っているように感じた。


そして彼は、それからゆっくりとヴァイブにいう。


「こいつは……ビクニは(ちが)ったんだ……」


ソニックはポツリとそう言うと、ヴァイブレの目を見つめながら静かに話を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ