表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/215

第百四十話 拷問の目的

それからどれくらい時間が()ったのか。


何分? 何時間?


いや、もう朝になってしまったのかも。


(まど)のないこの地下(ちか)の部屋では時間の感覚(かんかく)がまるでわからない。


グッタリとしている僕の横では、その(あいだ)もずっとソニックへの拷問(ごうもん)が続いていた。


まずは手足の切断(せつだん)から始まって、次に目や顔を(つぶ)した。


「では、首と心臓(しんぞう)はどうだ? やってみろ」


ワルキューレの指示(しじ)(したが)って、衛兵(えいへい)が持っていた剣で言われた箇所(かしょ)を切り(きざ)んでいく。


だけどソニックは、けして悲鳴(ひめい)をあげなかった。


苦痛(くつう)()ちた表情(ひょうじょう)で、ただ(うめ)きながら拘束(こうそく)された体を強張(こわば)らせている。


一体いつまで続けるつもりなんだ?


もしかしてソニックが死ぬまで続けるつもりなの?


「ビクニは……どこだ……?」


一方的(いっぽうてき)に苦痛をびせられても、ソニックはビクニのことが心配(しんぱい)なのか、弱々(よわよわ)しい声でずっと(つぶや)いている。


ああ……ソニック……。


なんでそんなに強いんだよ……。


ぼくなんて、()り飛ばされただけでもう(こころ)()れちゃっているのに……。


「まだまだ他人(たにん)を気にする余裕(よゆう)があるな。早く続けろ。こいつの自我(じが)崩壊(ほうかい)するまでけして止めるな」


ワルキューレの目的(もくてき)は、ソニックの死なんて簡単(かんたん)なものじゃない。


苦痛によって彼の思考(しこう)(たた)き潰すことなんだ。


このままじゃ、ソニックがソニックじゃなくなっちゃう。


「ビクニは……どうした……?」


「そんなにあの落ちこぼれが気になるのか?」


「いいから……答えろ……」


ソニックはすごく(くる)しそうだけど、ワルキューレに向かって言葉を続けていた。


「あいつにも拷問をしているのか……? 答えろッ!?」


ワルキューレはまだ怒鳴(どな)り返す元気のあるソニックを見て、その顔をしかめていた。


そして、衛兵へ拷問を止めるように言うと、彼の(そば)へと近寄(ちかよ)って来る。


「多くの者を治療(ちりょう)してきたが、ここまで()えた者はいなかった。いいだろう……お前にはとことん付き合ってやる」


「治療……だと?」


「ああ、そうさ。治療だ。そして、この治療はこれから全世界に(おこな)われる」


ワルキューレはそう言うと、ソニックの体に自分の手をかざした。


すると、ソニックを拘束していた(ひかり)(かせ)が全身に巻き付いた。


「ぐっ!? ふっ……ふざけたことを……」


「どうだ吸血鬼(きゅうけつき)? 全身が()けるようだろう? まだまだ(じょ)の口だ」


光の枷が神々(こうごう)しいく(かが)き、ソニックの体を焼いていく。


吸血鬼(ぞく)のソニックは闇属性(やみぞくせい)


だから女神の使いを名乗(なの)るワルキューレの(はな)(せい)なる魔力(まりょく)は、彼にとって弱点(じゃくてん)といっていいものだ。


そして、枷は次第に()め上げ始める。


全身の(ほね)をゆっくりと()りながら、ソニックの白い皮膚(ひふ)()がしていく。


「その苦しみの(もと)(わす)れさせてやる」


「俺が……あいつのことを……忘れるもんか……」


「いいや、忘れるね」


ワルキューレはかざした手を引っ込めると話を始めた。


この世で起きていることは、すべて(せい)(あた)えられた者の中にしか存在(そんざい)しない。


だから、女神の使いである我々(われわれ)がすべての種族(しゅぞく)現実(げんじつ)をコントロールするのだと。


「女神さまは(なげ)いておられる。人間も亜人(あじん)も生きる道を誤ってしまったと。そのために我々が使わされたのだ」


「それで……痛めつけて従わせようってのかよ……。女神が聞いて(あき)れるずいぶんと乱暴(らんぼう)なやり方だな」


ワルキューレは、ソニックの返事を聞いて、(ふたた)び手をかざした。


光の枷がまたソニックを焦がしながら締め上げ始める。


「ぐわぁぁぁッ!」


さっきよりも締め上げるスピードが(はや)い。


今まで耐えてきたソニックだったけど。


ついに悲鳴をあげてしまっていた。


ソニック……ぼくがもっと強かったら……。


君もビクニも、ヴァイブレも(すく)えたのに……。


「物分かりが悪い吸血鬼だな、貴様(きさま)は。これは治療だと言っただろうに。……あとは(まか)せる。私は自室(じしつ)(もど)って(かがみ)から見させてもらうぞ」


そしてワルキューレは、衛兵へ夜の(あいだ)ずっと拷問という名の治療を続けるように言うと、ぼくらのいる部屋から出て行ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ