表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/215

第百三十六話 喧嘩中の二人

ソニックだ!


ソニックが助けに来てくれた!


ぼくが(うれ)しさのあまりはしゃいで()きつくと、ソニックは苦笑(にがわら)いしていた。


そして彼は、そのままぼくのことを自分の(あたま)の上に乗せる。


ふぅ、やっぱりここが一番おちつくなぁ。


よく見ると、ソニックのお父さんの部下(ぶか)だったおじいちゃん――ヴァイブレもついてきていた。


「ソニック王子。外のほうは片付(かたづ)けました」


どうやらソニックとヴァイブレは、ぼくらをここまで連れてきた衛兵(えいへい)たちをすべて(たお)しちゃったみたいだ。


「悪いがググ。さっきも言ったが、かなりの魔力(まりょく)(しぼ)り取らせてもらう」


ワルキューレの姿(すがた)を見たソニックは、彼女の持つ(ちから)理解(りかい)したのか、いきなり全開(ぜんかい)でいくつもりだ。


ぼくが鳴いて返事をすると、体内にあった魔力がソニックの体へと(うつ)っていく。


吸血鬼族(きゅうけつきぞく)得意技(とくいわざ)、吸血の魔法バージョンともいうべき魔力吸収(きゅうしゅう)


これをやられると後でヘトヘトになっちゃうんだけど。


ぼくはビクニを(まも)るためならなんだってやるよ。


「ふん。どうやら貴様(きさま)(ちぎ)り合った相手が来たようだぞ」


「えッ!? ソニックがッ!?」


ワルキューレとビクニもお(たが)いの剣をぶつけ合いながら、こちらの様子(ようす)に気が付いたみたいだ。


ワルキューレはビクニを強引(ごういん)後退(こうたい)させると、ソニックとぼく、そしてヴァイブレおじいちゃんのほうを見た。


薄汚(うすぎたな)い吸血鬼族がまだ二人も(のこ)っていたのか。丁度(ちょうど)いい。ここで暗黒騎士(あんこくきし)(とも)始末(しまつ)してやる」


こちらはぼくも入れて三人と一匹。


(たい)するワルキューレは一人だけど、彼女は当たり前のように勝つ気だ。


だけど、そうはいかないぞ。


ビクニとソニック――それにぼくもいればどんな相手にだって負けないんだ。


「おい、下がってろビクニ。あとは俺がやる」


ソニックがぼくから吸収した魔力の制御(せいぎょ)完了(かんりょう)すると、ビクニに声をかけた。


でも、ビクニは何も答えない。


(だま)ったまままたワルキューレに向かって行こうとする。


まだのソニックこと……(おこ)っているんだ。


もうビクニったら、今は怒っている場合(ばあい)じゃないのに……。


みんなで力を合わせないと、目の前にいるワルキューレには勝てないよ。


「聞こえないのかビクニ!? 下がってろって言ってるだろう!」


「うるさいッ! ずっと人のことを(だま)していたくせに。今さら何しに来たのよ!」


「今はそんなこと言っている場合じゃないだろうが!」


「“そんなこと”って……もういい……。もういいから私の邪魔(じゃま)をしないで!」


ソニックはなんとかビクニに言い聞かせようとしたけど。


ビクニはソニックの言葉を聞いて、さらに苛立(いらだ)っちゃってる。


ああっ!


一体どうすれば二人を仲直(なかなお)りさせることができるんだ!?


「ソニック王子! ワルキューレが来ますぞ!」


コウモリの羽根(はね)を広げ、ぼくを頭に乗せ、ビクニを(かか)えたまま高い天井(てんじょう)へと飛んで行くソニック。


ヴァイブレが(さけ)んでくれたおかげで、ワルキューレの攻撃(こうげき)をなんとか()けることができた。


だけど、二人は――。


「何するのよ! 早く(はな)しなさい!」


「バカッ!? (あば)れるんじゃねえ!」


空中でもまだ言い(あらそ)っていた。


ぼくは必死(ひっし)に鳴いて止めようとしたけど。


二人とも全然聞いてくれない。


この状況(じょうきょう)駄々(だだ)をこねるみたいに怒っているビクニは、たしかに悪いんだけど。


今まで信じてきたソニックに裏切(うらぎ)られたと思っているから、それもしょうがないのかもしれない。


だけど……このままじゃワルキューレにやられちゃうよ。


「なんだ、仲間割(なかまわ)れか? ふふ、無様(ぶざま)だな暗黒騎士(あんこくきし)。貴様には亜人(あじん)をたらし込む(さい)があると思ったが、どうやらそんなこともないらしい」


ワルキューレは空中で揉め()続けているビクニとソニックを見て、せせら笑っている。


それから彼女は持っていた武器――。


剣身(けんしん)にびっしりと文字が書き込まれている剣――女神の慈悲(じひ)(かか)げた。


すると、剣から神々(こうごう)しく(ひか)稲妻(いなづ)(はな)たれ、空中にいたぼくらを打ち落とす。


(せい)なる雷光(らいこう)は暗黒騎士にも吸血鬼族にも有効(ゆうこう)だ」


この(かみなり)……。


ワルキューレの言う(とお)り、闇属性(やみぞくせい)のぼくらには(くる)しい技だよ。


ビクニなんか空中から落ちたショックと今のダメージで気を失っちゃってるし、ソニックも立てるのがやっとって感じだ。


かく言うぼくも、もう一歩(いっぽ)も動けない。


「さて、止めを刺すとしようか」


かといってワルキューレが、ぼくらが動けるようになるまで待ってくれるはずもなく、ゆっくりとこちらへと近づいて来るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ