表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/215

第百三十三話 要塞のような大聖堂

それから――。


ぼくとビクニは集まってきた衛兵(えいへい)たちによって、大きな建物(たてもの)へと連れて行かれたよ。


そこは他の四角(しかく)住居(じゅうきょ)とは違って、なんだか教会(きょうかい)みたいな外観(がいかん)なのに、強固(きょうこ)要塞(ようさい)みたいな建物だった。


やっぱり女神を信仰(しんこう)するだけあって、ここは大聖堂(だいせいどう)みたいなものなのかな?


それにしても神々(こうごう)しいというよりは威圧感(いあつかん)があって、結局(けっきょく)見た目は住居と同じ灰色(はいいろ)だから気味悪(きみわる)い。


「ググ。(しず)かにしてね」


ぼくは思っていたことを()いて伝えようとしたけど。


無表情(むひょうじょう)のビクニから鳴かないように言われてしまった。


そうなるとぼくは(だま)るしかない。


だけど、このままついていって大丈夫なのかな……。


この建物を見るとすごく(いや)予感(よかん)がするよ……。


そして灰色の大聖堂の中へと入って、ただ衛兵たちに言われるまま進んでいくぼくたち。


中もやっぱり灰色でこの建物は教会みたいなのに、神父(しんぷ)修道女(しゅうどうじょ)よりも看守(かんしゅ)囚人(しゅうじん)でもいそうな雰囲気(ふんいき)だった。


ホントに大丈夫なのかな……。


「ここに入れ」


衛兵たちが立ち止まって、その中の一人がぼくらに言った。


そして、目の前にある(とびら)が開かれていく。


「……ここはちゃんと教会みたいな感じね」


扉の中に入ってビクニがボソッと(つぶや)いた。


どうやら彼女もぼくと同じで、この建物を教会みたいなものと思っていたみたい。


扉の中の内装(ないそう)は、(たば)ねたみたいな(はしら)がすごく高い天井(てんじょう)(ささ)えていて、(かべ)には女神が(かが)かれたステンドグラスが付けられていた。


でも、やっぱり灰色。


せっかくの豪華(ごうか)なステンドグラスなんだから、もっとカラフルにすればいいのになんかもったいない。


「来たか、暗黒騎士(あんこくきし)ビクニ……」


奥には、甲冑姿(かっちゅうすがた)の女性がパイプオルガンの前に(すわ)ってぼくらを――いや、ビクニのことを見つめていた。


その様子(ようす)を見るに、どうやら甲冑姿の人はビクニのことを知っていそうだった。


この人がビクニの(おさな)なじみなのかな?


それにしてはビクニと(とし)(はな)れすぎているように見えるし、何よりもこの女の人……人間じゃない。


見た目じゃわからないけど、幻獣(げんじゅう)のぼくにはわかる。


この人は亜人(あじん)だ。


だけどなんだろ?


この人からは、聖騎士(せいきし)と同じような(ちから)を感じる。


戦乙女(いくさおとめ)って聖属性(せいぞくせい)なのかな?


「リンリはどこッ!?」


ぼくが首を(かし)げているとビクニが突然大声で(たず)ねた。


その言葉を聞くに、やっぱりこの人が戦乙女――ワルキューレなんだ。


「答えてッ! 私の幼なじみ、晴巻(はれまき)倫理(りんり)はどこにいるのッ!?」


(さけ)んだビクニが()を進めてワルキューレに近づこうとしたとき、突然大広間にパイプオルガンの音が(ひび)(わた)った。


なんの曲かはわからないけど、とても仰々(ぎょうぎょう)しくて壮大(そうだい)な感じの旋律(せんりつ)が、高い天井(てんじょう)や灰色の壁に反射(はんしゃ)して、まるでぼくらを攻撃(こうげき)しているみたいだ。


「くッ!? なんなのこの音!?」


人の声みたいなパイプオルガンの音が、ぼくとビクニを押さえつけてくる。


そうか、わかったよ。


なんでぼくやビクニがこの音を聴くと(くる)しくなるのか。


この音には聖属性の魔力(まりょく)()められてるんだ。


暗黒騎士であるビクニや、人間や亜人の悪い(こころ)を食べるぼくみたいな幻獣には、この音は不快(ふかい)すぎる。


「フン、この程度(ていど)の魔力でその(てい)たらく。だらしがないな、暗黒騎士」


「うるさいッ! あなたがワルキューレね! いいからリンリがどこにいるのか教えなさいッ!」


ビクニがめげずに言葉を返すと、ワルキューレはパイプオルガンの演奏(えんそう)をやめた。


そして、(かぶと)に付いた(はね)()らしながら、ぼくらのほうへと向かってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ