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第三話 ハロウィン

ハロウィン



 ハロウィンの夜。


 街は怪物たちでいっぱいだ。


 怪物というよりも、怪物に扮した若い男女と言った方が正しいだろうか?


 魔女や、悪魔、吸血鬼に、定番のカボチャの被り物の怪物。いつの間にか、日本はハロウィンまで自国のイベントにしたようだ。という俺も、ゾンビの格好をしているので、人のことはとやかく言えない。でも、楽しめれば一向に構わないだろう。イベントなんてそんなもんだ。


 そんな中、俺は怪しい一団を見つけた。と言っても、町中が怪物の仮装であふれているので、傍から見れば、そんなにおかしくはないのかもしれないが・・・。


 ただ、周囲の雰囲気になじんでいない気はした。


 一つ目小僧、河童、天狗、座敷童など・・・、どれも日本の妖怪たちばかりだ。それ以外にも知らない妖怪がゾロゾロと夜の街を歩いている。でも、よく考えれば、ここは日本なのに、ハロウィンの仮装は西洋の妖怪ばかりだ。だから、こちらの方が本当は正解なのかもしれない。


 俺は気が付くとその一団の後を追っていた。フラフラと誘われるかのように・・・・。そのまま、俺は薄暗い路地裏に入っていく。あの妖怪の一団はこの路地裏に入って行ったのだ。


「その先に行くと戻れなくなるよ」


 そんな声が俺の背後から聞こえた。俺は振り返る。そこには陰気な感じの中年男がいた。狭い路地に机を置いて、そこには『占い』という張り紙が貼ってあった。俺はこの男のすぐ横を通り過ぎたはずなのに、声をかけられるまでその存在に気づかなかった。確かに印象に残らなそうな貧相な男ではあったが。


「戻れない?」


「ああ、あれは、百鬼夜行だよ。人外の物だ」


 そうは言われても、とても楽しそうな笑い声が路地の先から聞こえてくる。こんなつまらない人間たちの住む世界よりも、ずっと楽しそうだ。ああ、祭り囃子が聴こえてくる・・・・。俺は占い師の言葉を無視して、祭囃子のする方にフラフラと歩いていった。



「やれやれ、興味本位であやかしの格好をするから、あんなものに誘われてしまうんだ」


 占い師は呆れたように言った。そして若い男が消えた路地の奥の闇を見つめた。


「しかし、現代社会も人の皮を被った化け物たちが、弱い者を喰らいつくしているから、どちらがいいとは言えないが・・・・」


 占い師はそう言うと、ため息をついた。



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