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勇者?ムリムリ。魔王?まだまマシかな。それでいこう!  作者: ヒロトコ
第一章 始まりは魔王城
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フェニックスの明子さん

前回のあらすじ 年を取ると話が長くなるよね!

魔王は窓の外を見ていた。はるか遠くに赤い点が見える。その点がこちらに来ることは分かっていた、そしてたどり着いた後の展開も・・・。


赤い点に見えていたそれが少しずつ近づくにつれ、鳥の形だと分かるようになる。赤くみえるのは身にまとう炎だとも。はっきりと目で確認できるまでに近づき、いよいよこの部屋へ到着するという次の瞬間、『パーーーン』という軽い音とともに赤い点は目の前から消える。魔王には分かっていた。その赤い点は先ほどセバスに呼ばせたフェニックスの明子さんだと。そしてなぜ消えたのかを。

ゆっくりと魔王は窓を開ける。そして窓下を見る。そこにはセバスが掘った池がある。人が入り込めないように柵で囲われ、近づくものに注意を促す立て看板がたててある。『立ち入り禁止!やけど注意!※ここはフェニックス専用池です』

以前は植栽が植えられた窓下であったが、毎回のようにフェニックスが窓にぶつかり、落ち、植栽を焼くボヤ騒ぎを起こすことにセバスがキレてしまい、専用池を作ってしまった。フェニックスは今回も同様にその池に落ち、深く沈んでいる。フェニックスの炎で水が蒸発するせいか、溺れた鳥の息のせいか、池はブクブクと泡を吐き出し続けている。ヤケドしたくないので誰も助けようとはしない。フェニックスだからどうせ死なないだろうとの思いもある。


明子さんが無様に沈んでいるのを確認してから魔王はゆっくりとお茶を入れ始める。鳥にどくだみ茶の効能は強すぎるので今度はジャスミンティーだ。お茶受けにビスケットを用意し一口大に砕いておく。そこまで用意が終わると再度窓の下を見やる。


「あーーきーこーさーーーん、お茶入ったよーー」


・・・


・・・・


・・・・・


「あーーーきーーーこーーーさーーーん。お茶冷めるよーーー」


すると噴水のように水しぶきをまき散らしながら、池から魔王の部屋へ鳥が入ってきた。


「静ちゃん、窓を開けておいてよー、ひどーい!」

「だって窓を開けておくと炎をまとったまま入ってくるでしょ?ボヤ騒ぎは嫌よ」


明子さんが文句をいうまでが毎回の一セット。ルーチンワークが終わったので魔王は本題に入る。


「明子さんを呼んだのは他でもない。今日、勇者がやってきたの」

「わー、本当に勇者が来たんだね。静ちゃんはケガはなかった?」

「うん、大丈夫だよ。戦闘せずにすんだ」

「そっか、良かったー。その様子だと話もできたみたいだね」

「うん、でね、前から言ってた勇者への連絡役をお願いしたいんだ」

「いーーよーー、で勇者はどこ?」

「明子さんが出かけていなかったから、一旦帰しちゃったよ、もー」

「ごめーーん、実は勇者を召喚したって噂のあった領主の家を調べにいったんだ」

「そうなの?でどうだった?」

「ひどいことになってたよー、どうやら勇者が領主ともめて暴れたみたい」

「わー・・・、どうしよう、勇者に一旦帰れって言っちゃったけど、そこには帰れないかも」

「そうだね。それとね・・・領主のお家、実はもうなくなっちゃったんだ」

「どういうこと?」

「えっとね、領主のお家があまりにも荒れ果てていたので私も中を調べに入ったんだ。そしたらちょうどお酒のコレクションの部屋に入っちゃったみたいで・・・」

「・・・そのお酒に明子さんの炎が引火したのね・・・」

「全焼しちゃった、テヘッ☆」

「・・・悪魔の鳥やわ」

「だって知らなかったんだもん!お酒の部屋だなんて」

「もー、しょうがないわね。でもこれでまた魔族と人族の確執が深まっちゃうわよ」

「それは大丈夫、見つからないように逃げてきたから。その辺は抜かりはないわ!」

「うーーん。まぁいっか。でもこれで勇者の帰る先がわからなくなっちゃったよね」

「私ががんばって探すわ!だから、だから、ね」

「分かってるわよ。ビスケットのおかわりね」

「さすが静ちゃん!わかってるーー」

「それとさ、私のこと前世の名前で呼ぶの直してくれないかな」

「静ちゃんじゃダメ?」

「今はこっちの両親がつけてくれたセーラって名前があるからね。両親のためにもこの名前を大事にしてあげたいんだ」

「でもセーラって魔王っぽくないよね。なんでだろ?」

「少しでも魔王のもつ邪悪さを打ち消したかったんだって。私が生まれたころは魔王討伐志願者が多かったみたいだから、そのせいもあるのかもね」

「そっかー、でも静ちゃんはいいよねー。王家に生まれ変わって。超お嬢様だもん。私なんか鳥よ?鳥。おしゃべりできるだけましだけどさー」

「王家っていったって、没落後よ?両親は放置気味だし。でも状況はどうあれ、今世の名前も大事にしてあげたいの。名前は本人の望んだ通りに呼んであげるのがマナーじゃない?」


(トントン)「姫様、セラフィムでございます。少々よろしいでしょうか?」

「よいぞ、入れセバス」

「・・・この流れでもセラフィムと呼んでいただけませんか。まぁ結構です。お客様がいらしてます。魔王の間までおこしください」

「分かった。すぐに行く」


「じゃあ明子さん、ちょっと行ってくるから。ゆっくりしててね」

「いってらっしゃーい」


「・・・今の話を聞く限り、呼び方は静ちゃんのままでよさそうね」

残りのビスケットをかじりながらフェニックスは独り言をつぶやいた。



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