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勇者?ムリムリ。魔王?まだまマシかな。それでいこう!  作者: ヒロトコ
第一章 始まりは魔王城
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閑話 セバスちゃんは語りたい

前回のあらすじ ちっ違うから!内緒話じゃないんだからね!

私の名はセラフィム。しかし姫様は私のことを頑なにセバスと呼ぶ。それは初めてお会いした時からずっと変わらない。しかたがない、ここでも私のことはセバスとして進めていこう。


今でも時々思い出す。姫様が王位を継いだのは突然だった。そしてまだそう年月は経っていない。その日、先代であるぼっちゃまと奥様がこうおっしゃったのだ。


「この子ももうすぐ成人だ。きっと立派な魔王となるに違いない。我も安心して王位を譲ることができる。立派になることは間違いない。確定事項だ。そんなことは分かりきっているのだからいつまでも我が王位に固執していては娘に迷惑がかかる。これは早く王位を譲らねば!そうだ早速譲ろう、今譲ろう!そして隠居した我ら親が城にいては執務もやりずらいに違いない。我らは気を使ってこの場を離れよう。しばらく外交の旅にでて世界の状況を探り、娘のために情報収集に励むとしよう。そうと決まったら来週から旅行もとい視察にでかけるとしよう。旅支度でいそがしくなるぞ。登山のための靴、日焼け止め、水着、帽子も新調せねばな。温泉にも立ち寄るからタオルは多めに。あと何が必要だろう?そうだ、食べすぎたときのために胃薬も必要だな。あぁこれは大変だ、娘のためにしっかり役目を果たさねば!」


何やら自分に言い聞かせ視察という名のフルムーン旅行におでかけになった。(観光地を巡って)世界各地をご視察に回るそうだ。今生の別れも覚悟して遺言も書いていかれるという。これは旅先での死を覚悟するというよりはお気に入りの場所が見つかったら永住する気持ちからだと思われる。ぼっちゃまは昔から旅行に憧れておいでだったからなぁ・・・。まぁぼっちゃまより姫様のほうがずっと良い政治を行えるのは私から見ても明らかなので多くは言いますまい。一言だけ申し上げるなら『無責任なことするな!死ね!!』ですかな。まぁもう過ぎたこと忘れましょう。


しかし先代であるぼっちゃまも思えば不幸な生い立ちだったのかも知れません。先々代の魔王であった旦那様は勇者に魔王国を壊滅させられてしまった。そしてその責任をとり、王家はごくわずかな領地だけを残して支配を解除してしまいました。頂点からの転落。この体験がぼっちゃまの性格を歪ませてしまったのかもしれません。

そのうえ力が衰えたとみた武闘派魔族たちは名を売るため次々と屋敷に押しかけ、闘いを挑んできました。大概は弱く、簡単に蹴散らすことができました。しかし最初のうちは楽しんで戦っていた旦那様もすぐに面倒くさくなりまだ幼かったぼっちゃまに押し付けました。ぼっちゃまは幼少から武力も魔力も優れていたので同様に簡単に挑戦者を蹴散らしました。しかしやはり親子は似るものですぐに面倒くさくなりましたな。『魔王討伐証明書』なる書状を作りなんと売り出しました。真に実力のあるものは断固として受け付けませんでしたが、功名心のみで闘いに来た者はすんなり買い上げて帰っていきました。結構な儲けがでるほど売れましたな。私にもおひねりがでるほどでした。ほどなくして『魔王はもう大した力はない』との噂が広まり、騒動は収まりました。ちなみに人族の商人にも噂は広がり書状発行契約の商談を結びました。『剣術の通信教育の終了賞におまけで付けたい』とのことで、『一日10分!これであなたも魔王級!』で売り出したその通信教育は当時のヤンチャな学生に大ヒットしました。これは今も権利料が入ってきております。魔王家の大事な収入源の一つですな。


おっと話がズレました。ともかくぼっちゃまの性格はひねくれたのです。ひねくれた理由は他にもあるような気はしますがまぁいいです。もうぼっちゃまの話はしててもムカつくだけなので『生まれつき』ってことにしてしまいましょう。本当に話したかったことは姫様のことなのです。


そのひねくれたおぼっちゃまの娘として生まれたせいか姫様はおかしなことを言いだすようになったのです。

『私は転生したのよ』

お可哀そうに。多くは申し上げますまい、そうアレなのです。しかしその方面ではアレですが、全般において優れた能力をお持ちでした。学力、体力、魔力もその年代に対して比較にならないほど優れていました。特に想像力。誰も思い浮かべない新しい発想を持ち、これまでなかった道具、料理を作られました。その想像力の中でも私が特に関心したのは新しい社会像です。『平和で、武装することなく他の国へ移動ができ、好きな時に好きなものが家に届く』、夢のような社会です。そんな世界は私には思い浮かびもしませんでした。アレと天才は紙一重なのだな、つくづく思い知りました。まぁ実現するとはとても思いませんが理想があるのはいいことです。『敵わない理想に向かって努力する私って素敵!』と自分に酔う、素晴らしいではありませんか!私は姫様を応援いたしますぞ!!


そんな姫様ですが、極度のあがり症のため矢面に立つのを嫌がります。あまり無理することはないと私も思いますので無理強いはいたしません。どうせ叶わない理想なのですし。姫様は対策として魔王討伐に来る猛者たちの中から新たな平和な社会を作るリーダーを選抜することにしました。見事選ばれたのが本日いらっしゃった勇者です。勇者召喚禁止条約はかなり前から発行されておりましたが、国単位では守られていても領主単位では守られることなく、これまでも何度か勇者は召喚されていました。これまでの勇者は例の通信教育で魔王討伐証明をもらい満足したようで、魔王城までやってくることはありませんでした。かわりに近場の魔人を襲って金品を奪い取ることを生業にしているようです。姫様のいうところの『桃太郎ビジネス』ですな。私には『桃』の意味するところは理解できませんでしたが、話を合わせています。


今日は平和を目指すリーダー役が決まりました。私も少なからずサポートを始めることとなります。忙しくなりますな。新しいことを始めるのは胸が躍ります。『この計画が軌道に乗ったら隠居して温泉へ旅行に行きたいのです』と姫様に言ったところ、『それは死亡フラグじゃ』と返されました。フラグとは何をさすのか私には理解できませんでしたが、姫様が変わらずにアレなのは分かりました。いつまでも変わらず愛らしい姫様のままでいていただきたいものです。


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