魔王城での策略
前回のあらすじ 教育者の苦悩と葛藤 ~責任感からの逃亡~
そろそろお茶の時間ね。昨日もビスケットだったから今日はちょっと違うものを出したいな。そうだ昨日セバスがサツマイモを蒸かしてくれていたんだった。ちょっとだけストーブで温めなおして食べよう。お茶は何にしようかな?こんな時ほど緑茶があればと思うことはない。いっそ出入りの商人にお願いして苗木を探してもらおうかしら。でも栽培条件とかわからないわ。領民の方で詳しい人はいないかしら?明日の視察の時に聞いてみましょう。
お湯が沸いたので執務室へ戻る。明子さんはもう来てるかな?窓の下をのぞくと池に泡が浮いている。早めに着いたみたいね。あら、ちょっと池の水が減ってきたかしら?最近雨が降ってなかったしこのままだと水が干上がってしまいそう。またボヤ騒ぎになるわね。忘れないようにセバスにお願いしておかなくちゃ。
サツマイモが温まったところで明子さんが入ってきた。
「もー、静ちゃんたら。いたんだったら声をかけてよ。池の水が調度良く温まって、心地よくてうたた寝しちゃったわよ。」
「水が温まるのが早かったのね。やはり水量が足らないみたい。間に合わせで水魔法でちょっと水量を足しておきましょ」
「さーて今日のオヤツは何かしら?楽しみー!」
「今日はサツマイモよ。お茶はカフェインレスのタンポポコーヒーよ。これなら明子さんでも飲めるでしょ?」
「ありがとう。前世ではコーヒー大好きだったからうれしい。眠気覚ましによく飲んでいたのを思い出したわ」
「で、今日はどうだった?何か手掛かりがあったらいいんだけど」
「駄目ねー。勇者ったら結構遠くまで行ったのかしら?でも遠くに行くような動機はないと思うんだけど」
「でもこの辺りで隠れていそうな場所は思い当たらないわ。何だかんだ言って勇者は有名人だったもんね。いればすぐにバレそうなもんだけど。私が探してることは領民のみんなも知っているから何かあれば教えてくれると思うんだけど」
「静ちゃんところの領民さんみんな親切だものね。今日も私が飛んでたらブドウ差し入れてくれたんだよ。喉が渇いてたからおいしかったぁ」
「もー明子さんたら。誰にもらったの?明日お礼を返しにいくから一緒に行こうね」
「うん、ありがとうね。いい魔王様だわ」
「それでね、明子さん。来週からもうちょっと遠くまで探しにいけないかしら?」
「え?これ以上遠くまで行くとお昼もオヤツの時間にも遅れちゃうわ、低血糖で倒れちゃう!」
「お弁当作るんじゃだめかな?明子さんの好きなものをいっぱいいれるから」
「でもお弁当持ち歩くとコゲちゃうんじゃない?コゲると不味いし、ガンになっちゃうわ!」
「フェニックスなんだからガンは大丈夫なんじゃない?そうだ、鉄瓶にサツマイモを入れておけば石焼き芋みたいになるんじゃないかな?」
「そうね、それくらいだったら持って飛べるかな?蒸かしたお芋よりおいしそう!」
「じゃあ、用意ができたらよろしくね。それとね、勇者を探す手掛かりなんだけど、群れをなす魔物が手掛かりになると思うの」
「どういうこと?」
「勇者はおそらく平和を教育する相手を見つけようとしているわ。群れているほうが教育するにも効率がいいからね」
「なんで教育したがってるのが分かるの?話を聞いている分にはそんな熱血漢には思えなかったけど」
「ふふふ、なぜなら勇者が魔王城にやってきたときにサブリミナル効果で洗脳したからよ!」
「サブリミナル効果って・・・。そんなのいつの間に」
「いろいろ施したわよ。
謁見の間では椅子の模様、椅子の装飾のツタはよく見ると右側が平和、左側は教育って文字に見えるの
執務室に入るドアの持ち手には平和の文字
窓ガラスは雑巾で教育って書いてから拭き掃除してるし
私のストッキングも見て」
「ちょっと繊維が薄くなってるところがあるのね。でもこの世界の技術じゃ均等に編むのは難しいからしょうがないわよね」
「違うわよ。これは均等になっているところへシルクスクリーンの要領で魔力を浴びせたの。よく見ると右足が平和、左足が教育ってなってるでしょ?」
「本当だ!芸が細かいわね」
「胸元のアクセサリーも角度を変えると教、ちょっとズラすと育にみえるでしょ?」
「すごいオシャレなネックレスなのに・・・。なんか残念だわ」
「まだまだあるわよ。私の目線の高さで本棚を見て。一部だけ日本語で書かれた本が並んでるわよね」
「そういえば、えーと
『平らな胸と生きる 諦めるな!明けない夜はない』
『和やかな人生 あるサタンの一生』
『とある魔王の緊縛目録』
『教えます!禁断のムチさばき ダイナミック調教術のすすめ』
『育てて楽しむ ショタ入門編』
・・・なんだか微妙なタイトルばかりね。(ちょっと性癖が見え隠れしててコメントに困るわ)」
「並べると『平和と教育』でしょ?この本を集めるのは苦労したわ」
「静ちゃん、努力の方向が間違っている気がするわよ。この気力を他に向ければ何かを成し遂げていた気がするわ」
「細かいことは気にしちゃダメ!さぁ明日からは勇者を探して遠出ね、頑張ってもらうわよ!」




